機動力と攻撃性を生かす!注目は2つの「ハイ」 J2甲府の今季戦術やキーマンをクラブOBが解説 山梨
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■課題を克服 堅守構築の兆し
9季ぶりのJ1復帰を狙う甲府ですが、昨季はJ2で14位と低迷しました。
堀井氏
「ある程度攻撃は期待できたが、やはり守備の不安定さが響いた」
昨季はリーグワースト5位タイの57失点。1月の新体制発表会見では佐久間悟社長から1試合平均0.9点、シーズン通して34点に抑えるという高い目標が掲げられました。
キャンプでは1月、Jクラブと3回のトレーニングマッチを実施し、J3相手には2試合無失点。J1横浜F・マリノスには3失点を喫しましたが、主力級が並んだ1本目は無失点。守備は確実に上向いています。
堀井氏
「とにかく今季は走れる選手が多い。チーム全体で連動して守備をする姿勢が見られた。コミュニケーションが活発。特にコミュニケーション能力が非常に高いDF小出悠太主将が戻ってきたし、MF林田滉也選手などもよく声を出している。雰囲気は本当にいい」
2次キャンプの取材では、大塚真司監督はチーム作りの意図について、こう話しています。
大塚監督
「(チームのスタンスは)相手とボールを走らせること。まずは攻撃で相手コートに入っていく。そこから相手を逃がさない。そこからの守備がある。守備的にサッカーをやるのではなく、攻撃的にボールとスペースを支配しながらプレーしていくことが大前提」
「相手とボールを走らせる」というのは、大塚監督が昨季から掲げていたポイント。「攻撃的にボールとスペースを支配するサッカー」をするためには、大切なキーワードがあります。
堀井氏
「キーワードは2つの『ハイ』。『ハイプレス』『ハイライン』」
■生命線の連動性 ウイングバックを高い位置に
横浜F・マリノス戦では前線からしっかりと連動した、ハイプレスをかけるシーンが多く見られました。
堀井氏
「まず下がるのではなく、1トップ2シャドーを中心にボールにしっかりプレッシャーをかける戦術。前線の選手たちがしっかり制限をかけることによってウイングバックを3バックの脇まで下げずに高い位置に押し出すことができる」
従来は甲府のウイングバックが一番後ろの列まで下り、最終ラインで5枚を形成して構える「5バック」も多く見られました。今季はそれとは対照的な守り方に積極的にトライしています。
堀井氏
「そのためにはしっかりと方向づけて、前の選手が制限をかけることが大切。ボールサイドにしっかりプレッシャーをかけて圧縮することで、後ろの選手が縦パスに対して狙いを持てる。近い所にパスを出させて、ボランチが相手のボランチにプレッシャーをかけたり、ボランチを抜けてくるボールをセンターバックが前向きで守備をしたり、より高い位置でボールを奪えてショートカウンターが狙える。1トップ2シャドーの特徴を攻撃の部分で生かすことができる。自陣ではなくて相手コートで過ごす時間を増やすことによって、より攻撃的に、主体的なサッカーをすることができる」
そして「ハイライン」も重要なキーワードです。
堀井氏
「ハイプレスとつながってくるが、前からプレッシャーをかけるためには、やはり縦の、3ラインの距離感が非常に大事。縦パスに対し、例えばボランチが(相手の)ボランチにプレッシャーに行くためには、いいスタートポジションからボールを奪いに行く必要がある」
ボランチは、遠い距離からプレッシャーに行くのではなく、初めからある程度高いポジションを取り、近い距離から一気にボールを奪いに行きます。
堀井氏
「全体のラインを高くするためには、ボールに対してのプレッシャーが必要。これは本当にエネルギーと連動性が求められる守備。これをまずキャンプの段階でも試していた」
ただ、ハイラインにするほど自陣の最終ラインの裏が空き、危険なスペースも生まれます。
堀井氏
「相手にとって非常に有効なスペースになるが、ボールにしっかりプレッシャーをかけ続けたい。相手との裏抜けの駆け引きも出てくるが、より前向きに、ロングボールを蹴らせずに近い所で出させてボランチが奪ったり、センターバックが前向きで奪ったりすることが可能となる」
相手に自由を与えず、自分たちはコンパクトに―。選手個々の判断も難しくなる中、統率力が期待される選手がいます。
堀井氏
「最終ラインでコミュニケーションをとれる小出主将やボランチの林田選手は戦術理解度が高い。彼らを中心にポジションを微調整させることでボールサイドに圧縮し、より高い位置でボールを奪える」
■期待の新戦力が攻撃的ポジションに
攻撃面ではトレーニングマッチ3試合で4得点。また、昨季の4割以上の得点を稼いだアダイウトン選手やピーター・ウタカ選手がチームを離れました。「強力な個」が抜ける中、得点をどう奪うかが今季の大きな課題となります。
堀井氏
「まずはチームとしての連動性。前線の選手は個性がある。チームの中で自分を生かせる。チームの枠組みがしっかりしていれば生きる選手たちがそろう。機動力がある彼らを生かす意味でもいい守備からいい攻撃というサイクルを作る」
大卒新人のMF熊倉弘達選手はトレーニングマッチでも2ゴールを奪い、優れた得点感覚を見せます。
堀井氏
「既に風格がある。非常に落ち着いている。特にボックス近辺の質。フィニッシュ、ラストパスの質が本当に高い。目に見える結果を出す可能性が高いと思う。(11ゴール11アシストという)志も高い」
同じくシャドーでの起用が期待されるMF田中雄大選手も好調。J1岡山から加入した新戦力は、豊富な運動量で前線をかき回します。
堀井氏
「昨季の岡山は非常に強度の高いサッカーをしていた。そこでの経験があり、攻守に献身性が高い。運動量も豊富。前線に機動力があるので、チームの攻守の枠組みが整理されると、選手の機動力、攻撃性という個性が生かされる。90分通していいサイクルが生まれる。躍動感もあるし、(試合を)見ている人は楽しい」
堀井氏が今季最も期待する選手として挙げたのは、「背番号10」です。
堀井氏
「MF鳥海芳樹選手。とにかくテクニックがあり、攻守に献身性の高い選手。昨季もしっかり実績も残しているし、チームにとって代えのきかない存在。ボックス近辺で、結果に残る活躍も期待される。若手を引っ張っていくリーダーシップも期待したい」
鳥海選手にとっては、熊倉選手や田中選手という、同じシャドーのポジションにライバルが増えました。
堀井氏
「シャドーには力のある選手が揃っている。鳥海選手もポジションが安泰という訳ではない。選手同士でしのぎを削り、切磋琢磨して熾烈なポジション争いが起きれば、チームの底上げになる。各ポジションで競争力を高め、年間を通してチーム力を高めてJ1昇格を勝ち取ってほしい。長いシーズンがここから始まるが、まずはホームの開幕戦で勝利したい。今はキャンプが終わって非常に疲労もあり、大変な時期。(選手は)休むときはしっかり休み、開幕に向けてコンディションを整えてほしい」
開幕戦は15日にホームの「JIT リサイクルインク スタジアム」で行われ、昨季11位のレノファ山口FCを迎え撃ちます。クラブ創設60周年のメモリアルイヤーを飾る、甲府の開幕ダッシュに期待しましょう。
(「YBSスポーツ&ニュース 山梨スピリッツ」2025年2月9日放送)