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【独自取材】最近の金正恩総書記が“おかしい”!? ブレまくりの方針に北朝鮮国内が右往左往か…専門家指摘「このような調子でやっていくと国が大変なことになるのではないか」

2024年6月22日 11:00
【独自取材】最近の金正恩総書記が“おかしい”!? ブレまくりの方針に北朝鮮国内が右往左往か…専門家指摘「このような調子でやっていくと国が大変なことになるのではないか」
最近の金正恩雄書記は行動や発言が“おかしい”?

 2024年もその動向が注目を集めている北朝鮮の金正恩総書記。朝鮮半島専門家の龍谷大学・李相哲教授はここ数か月の動向から“異変”を感じているという。一時期は熱が高まった日朝首脳会談や、共産党“序列3位”が訪朝した中国との関係、露出が増えた金与正氏、韓国総選挙の影響や“もしトラ”への分析まで…。気になる最新の北朝鮮情勢をミヤネ屋Pが全部聞く―。

Q.ことし、北朝鮮をウォッチしていて金正恩総書記に気になることがあるそうですが?
(龍谷大学・李相哲教授)
「やっていることや言っていることがおかしいんです。元気になって一人で全てやっている状況ですが、このような調子でやっていくと、国がメチャクチャになるんじゃないかなと思います。金正恩総書記が生産現場に行って、『ああしろこうしろ』と言うと現場が混乱するでしょ?しかも、彼がやっているのを見ていると、あるときはミサイル発射に夢中になって、子どもみたいにやって。またあるときは潜水艦に夢中になって、あるときはスマートファームで野菜を育てて、『人民の生活に力を入れている』と報じられていますが、問題は北朝鮮の発電量は、室内で野菜を育てられる状況じゃないんですよ。今北朝鮮が大至急解決しなければいけない問題は、まず発電所を何とかすることです。しかも、発電所はタービンなどの部品を交換で済むレベルの問題ではなくて、そっくり入れ替えないと使い物にならない、もはや修正が利かなくなっている状況なんです。そのような基本的な問題を解決せずに、電気をたくさん食う野菜工場を作れとか、彼がやっているのは経済原理に全く合わないと私は思っています。それがもっと危険なのは、そういうことに誰かが文句を言う必要があるし、国家全体を立て直すにはどうすればいいかということを議論して着手するべきですが、もはやこの国はその段階をとっくに過ぎています」

「そして、金正恩総書記は、金日成主席、金正日総書記の存在を何か消そうとしているんですよ。彼が指導者になったのは、彼に特別な能力があって偉大だったからではないんですね。父親の指名で指導者になったのに、自分を指名した権威を否定すると自分を否定することになりますよね。それと、北朝鮮が70年以上追求してきたのが『祖国統一』なんです、それが唯一の目標です。しかも彼らがなぜそのことに頑張ったかというと、今北朝鮮は本当に苦しい、生活が悲惨なんですが、それでも国民が我慢して付いて来ている意味は、『今は苦しいけれど、いつか統一すれば一気に楽になる。生活も良くなる』と思って頑張っているんです。特に幹部などはそうです。ところが『統一はない。韓国は同じ民族ではない』と言い出して、切ってしまったんです。こんなことは、彼が独断で決めなければこのようにはならないんですよ。今、北朝鮮の意思決定システムがおかしくなっているんです」

Q.金正恩総書記が住宅建設の現場に来たりするのも、突然そうなったのですか?
(李教授)
「平壌に毎年1万世帯の住宅を作るという計画については、私が約10年前に書いた『金正日秘録』のなかに詳しいくだりがあるのですが、金正日総書記が死ぬ1~2年前に、金正恩総書記に『住宅建設を担当して平壌に街を作るようにしろ』と彼に権限を渡していたんですよ。その時に金正日総書記がたてたスローガンが『平壌に10万世帯の住宅を作る』というものですが、金正恩総書記に任せたら、一向に進んでないんです。彼は裏で自分の父親を『あいつは金もくれないでやれやれ言うけど、どうやってするんだ』と文句を言ったという話もあるんです。その一向に進んでいなかった計画を、いまやっとやりだして、少し成果が出ています。しかし、1つの国が1万世帯程度ですよ、ビル1万棟ではないですよ、それを自慢するようでは、この国の経済がいかに小さいかが分かります。金正恩総書記が視察して、『立派だ』とみんなが拍手をして、いい気になるというようなことをしているので、どんどん国がダメになっていくような気がします」

Q.金正恩総書記の方針があちこちにブレまくっていると感じているのですか?
(李教授)
「そうです。『人民生活改善に力を入れています』という風に見せているんですね。今までずっとミサイルをぶっ放したりしていたじゃないですか、人民には『戦争が今に起こるかもしれないので我慢しろ』と言ってやってきたのが、もう限界にきて、『戦争は起こらないじゃないか、先に食べ物の問題を解決しろ』というような雰囲気だと思うんですよ。だから、やっている“ふり”で“温室農場”だとかマンション建設など人民生活に力を入れているように見せているんです。そういう報道を見ている西側の専門家たちは金正恩総書記が民生に力を入れていると言っていますが、“はったり”ですよ、あれは。本気で解決するならそういうことではなく違うことをするべきでしょう」

Q.2024年に入って、日朝会談ができそうだと期待を持ったら、「二度と会いたくない」だとか、日本が北朝鮮に振り回されている感じですが、北朝鮮は日本に対しての方針もブレているのですか?
(李教授)
「金与正氏の談話を読むと、兄妹2人で相談しているんですよ。『我が指導者様の心のなかを私が知る由もないけれども…』とわざと書くのは、兄と相談していないからです。本当に日本の首相と会う気だったのかというよりは、今北朝鮮は閉塞状態を打開すべき段階にきているんですよ。そうした場合に、中国やロシアだけではなくアメリカとも話し合う必要があるので、その場合に日本と先に始めた方が手っ取り早いし雰囲気もいい、日本と北朝鮮との問題が解決しなければアメリカと北朝鮮の関係も進展しないということも彼らは分かっているので、日本に意向を打診してきているのです。しかし彼らからすると“拉致問題”は人権問題なので、仮に一部が解決したとしても北朝鮮の人権問題が、瞬く間に世界の話題の中心になる、人権問題は北朝鮮のアキレス腱なので絶対騒がれたくないのです。なので、最初から彼らは『“拉致問題”と“核問題”を言わないのなら会ってもいいよ』という感じです。しかし、日本からするとこの二つの問題なしに金正恩総書記と会う必要はないじゃないですか。それこそ本当に振り回されているんです。まず大前提は、日本は絶対彼らのペースに乗ってはならないんです。彼らは、日本の『早く解決したい』という足元を見ているんです。しかし、彼らからすると絶対譲れない線があります。“拉致問題”を持ち出したら、仮に一部解決しても、これが人権問題となって、瞬く間に日本の世論は“拉致問題”でもちきりになって、全世界で話題にもなってどうなるか分からないので、絶対に触りたくないんです。“核問題”も彼らの頭のなかでは『日本と話すべき問題ではない』ということなんです。なのでこれらを抜きに日本を利用したいんです。なぜ利用したいかというと、金正恩総書記はプーチン大統領だとか習近平主席とは密に連絡を取っているのですが、西側とは話ができない状況ですよね。だから、日本なら話乗ってくれるので、話をしてみせて、雰囲気を作って、今後トランプ氏が大統領になったときに会うというようなことを考えているはずです。そこで、日本は“拉致被害者”の親世代が高齢で焦っているからと日本に話を投げてみたんですが、岸田首相は『前提条件はない』と言いつつも、“拉致”と“核”の二つの問題抜きには応じられませんよね。なので日本がその通りに言ったんです。そして、金正恩総書記が妹の与正氏に「日本はどう言っている?」と聞いたところ「(2つの問題抜きに)絶対に受け入れられないと官房長官が言っているようだ」と伝えて「やめとけ」となって、翌日やめることになったんでしょう。日本は絶対に原則を曲げてはならないです。二人の遊びに付き合ってはダメですが、無視するわけにもいかないので、悩みどころです」

Q.日朝首脳会議が取り沙汰された同時期に、サッカーW杯予選でも「平壌で試合する」「やっぱりやめる」とかありましたが、あれは何だったのですか?
(李教授)
「金正恩総書記は普通じゃないんだってば(笑)しかし、それも合理的な推理をすれば、いざ国際試合を開催しようとしたら、北朝鮮は悲惨な状態なので、これはない、これも必要、お金も必要で、下の人間は金にならない話をやりたくないんです。そこでなにか口実を作ってやめたいんで、見つけたのが『日本で何か伝染病が流行っている』ということです。それを上に『日本でこのような伝染病が流行っている。我が革命の首都平壌を死守しなければなりません。偉大な首領様の安全にかかわります』とやめるべきだと提案して、やめたんじゃないでしょうか」

Q.4月に中国共産党の“ナンバー3”趙楽際氏と会談した意味は?
(李教授)
「今年は中朝親善の年、友好の年ですので、お互い行き来するのは特別なことではないのですが、中国の“ナンバー3”が北朝鮮に行ったということは、今ロシアと北朝鮮がいろんな交流をしているので、そこに探りを入れるのもありますし、昔からやっている中朝の情報交換を密にしましょうというような意味で、中国は代表団を派遣したと思います。これで、中朝関係が劇的によくなったということではなく、ロシアと北朝鮮の関係が過熱している状況の中で、中国が蚊帳の外にいるわけにはいかないので、少し誠意を見せたという状況です。北朝鮮外交というのは、いつもロシアと中国の間で二股外交をやっているわけですが、それを分かりつつも中国も付き合わざるを得ない状況ではあります」

Q.ことしに入って、金与正氏の報道が多いと感じますが、そのワケは?
(李教授)
「金正恩総書記は与正氏しか頼れる人がいないのではないでしょうか。もう一つは、北朝鮮の官僚やメディアが過激な言葉をたくさん発言しますが、みんなまたかと見向きもしないのに、金与正氏の口を借りると、面白半分でみんな注目しますよね。そういう意味もあって与正氏が出しゃばっている状況だと思います。しかし、与正氏の地位に変化があるようには思えません。今なお彼女は、正式には『労働党中央委員会副部長』です。ただ、昔から彼女の地位が高くなったとか低くなったとかいうのとは関係なく、金正恩総書記の意向を一番よく知っていて、金正恩総書記に一番近く、金正恩総書記が一番頼りにしている人ということには変わりがないので、自然と金与正氏の出番が多くなっている気がします」

Q.韓国の総選挙で野党が事実上勝ちましたが、北朝鮮にどのような影響がありますか?
(李教授)
「北朝鮮の希望通りになっていると思います。ただ北朝鮮は今一つ満足できていません。できれば尹錫悦大統領を弾劾で引きずり降ろしたいので、これからも工作は続くと思います。与党から8名を買収すれば弾劾できますので、そのような危険性はあります。北朝鮮は伊大統領を引きずり降ろして、対北朝鮮政策を転換させたいという思惑があると思います。北朝鮮の『労働新聞』にはっきり書いています」

Q.トランプ氏がアメリカ大統領に返り咲いたら、北朝鮮はどうなると思いますか?
(李教授)
「交渉には持ち込むでしょう。ただ、結果的には北朝鮮はトランプ氏にやられると思います。北朝鮮は、うまくトランプ氏を騙して今の北朝鮮の“核”などを認めてもらって、制裁解除を求めると思います。トランプ氏の周辺にはそういう考えを持っている人達もいるようですが、どう考えても国際社会、特に日本がそれを許してはなりません。核を認めることは絶対ダメで、北朝鮮の核はCVIDつまり、『完全で検証可能かつ後戻りできない非核化』をずっと求めていくべきだと思います。ただ、トランプ氏は政治家でありながらビジネスマンでもあって、その時々の状況が、自分にとってどの方向に行く方が有利かで判断するかと思いますが、北朝鮮を容認してトランプ氏にプラスになることはまずないと思うので、トランプ氏が大統領になっても、北朝鮮問題はそんなに心配しなくていいと思います」

(【ミヤネ屋Pが全部聞く】2024年4月24日公開)