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【衝撃と混乱】尹大統領の“フェイク動画”SNSで拡散…そのワケとは? TV局が野党を後押し? “タマネギ男”が総選挙出馬へ新党結成 しかし、早くも野党同士が喧嘩状態に 李教授が独自解説

2024年3月15日 20:00
【衝撃と混乱】尹大統領の“フェイク動画”SNSで拡散…そのワケとは? TV局が野党を後押し? “タマネギ男”が総選挙出馬へ新党結成 しかし、早くも野党同士が喧嘩状態に 李教授が独自解説
韓国総選挙 与野党のねじれ議会は解消されるのか?

 4月10日に控える韓国の総選挙。現在、韓国議会は与党「国民の力」114議席に対し最大野党「共に民主党」115議席と、野党が過半数を占める「ねじれ」状態となっていて、政権の運営には不利な状態となっています。次の総選挙で、与党が議席を拡大できなければさらなる求心力の低下をまねき、“機能不全に陥る”という見方もあり、尹錫悦大統領にとって負けらない選挙ですが、その行く手を阻む存在が…。韓国情勢に詳しい龍谷大学の李相哲教授が解説します。

フェイク動画や「共に民主党」寄りのTV局など与党に逆風か?

 2023年12月、SNSで尹大統領の“ある動画”が出回りました。それは尹大統領が「無能で腐敗した尹政権は、不正と腐敗を繰り返した。常識から外れた理念にしがみつき、韓国を滅ぼし国民を苦しめた」といった内容を話すものです。実は、これはフェイク動画です。これに、与党「国民の力」はソウル警察に告発状を提出。「放送通信審議委員会」は、選挙をにらんだ”ディープフェイク“として動画を削除しました。法整備をして1か月足らずで”ディープフェイク“を利用した投稿129件が摘発されています。

Q.韓国の国民は信じているのですか?
(龍谷大学 李相哲教授)
「野党・李在明氏の支持者なら『とうとうこういうことを言うようになったか』となるかも知れませんが、すぐ遮断されたこともありますし、ほとんどの人は信じないです」

 3月27日、韓国のテレビ局「MBC」の天気予報コーナーでキャスターが大きな「1」の前で「私の横には背丈よりも大きな『1』があります。きょうのソウルのPM2.5の濃度は1まで下がりました」と伝えていました。ところが、この日のソウル市内のPM2.5は一度も「1」になっていませんでした。韓国の選挙では番号で政党を表すのですが、「青色の1」は野党「共に民主党」を示すということで、与党「国民の力」は、「極端に『共に民主党』に偏った放送をしてきたMBCだが、これは一線を越えたと思う」と猛批判しています。

(李教授)
「今回の総選挙に出ている政党は50近くあるんで、1~50番までの番号があって、議員の多い順に1番から番号を振って行くんです。議員数が一番多い共に民主党が番号も1番なので、完全に共に民主党に入れろという意味でもあります」

Q.放送局が特定の政党を支持して良いのですか?
(李教授)
「本当は韓国でもこういうことはやってはならないのです。MBCという放送局は株式会社ですが、資本の70%が国の財団から出ている公営放送なので、なおさらこういうことをしてはいけないのですが、主な幹部が全員文在寅政権時代のままなんです。保守系に友好的なキャスターや記者は全部干して、今は野党一色です」

“タマネギ男”自分の名前と同じ発音の新党立ち上げで野党共闘か?

 2023年11月、曺国元法相は「野党の勝利、政権交代は私にとっても最も大きな名誉回復だ」と出馬を示唆していましたが、2月に新党「祖国革新党」を結成しました「祖国」と「曺国」はともに韓国語で「チョグク」と発音します。

Q.まさに「自分の党」だ。という感じですか?
(李教授)
「世界の政党で、自分の名前で党を作るというのはまずなかったのではないかと思います。最初『曺国革新等』で申請したところ、却下されたので『祖国革新党』にしたようです」

 曺国元法相は、尹大統領が検事総長時代の捜査で、業務妨害、請託禁止法違反、職権乱用、権利行使妨害などで告訴されていて、まさに宿敵です。二審判決で懲役2年、追徴金600万ウォン(約67万円)の判決を受け、判決に不服として現在上告しています。野党代表の李在明氏も複数の罪で書類送検されていて、違う案件で検察は捜査を行った上で起訴する予定です。 「共に民主党」の李代表は「尹政権の暴政を共に終わらせよう」、曺国元法相は「尹政権と検察独裁の早期終焉のために戦う」としています。これに対して、与党「国民の力」は、「国会は犯罪者の逃げ場か!」と批判しています。


Q.曺国元法相も李在明氏も「尹検察総長(当時)憎し」で繋がっているのですか?
(李教授)
「曺国新党に集まった人たちは、ほぼ全員尹大統領とは、起訴されたり、懲戒処分を受けたりと何らかの因縁がある人が集まっていて、『祖国革新党』は犯罪者の逃避所みたいになっています。李代表も3つの裁判をしていて、10ぐらいの容疑で捜査を受けています。彼は党代表でなければとっくに拘束されていてもおかしくない状態です」

Q.今までの韓国政治は、検察に目を付けられたら政治生命も終わるという感じでしたが、最近は仮に有罪でも「まだ政治の舞台に出るぞ」というたくましさを感じますが、何故ですか?
(李教授)
「憲法では『推定無罪』の原則がありますので、最高裁で判決が出るまでは『私は無罪だ』と言えるんです。また、『共に民主党』の規約に『起訴されたら出馬できない』という規約があったんですが、李氏が代表になった途端、その項目を変えてしまいました」

(李教授)
「韓国の世論調査によると、比例での投票先として『祖国革新等』が15%を得ています。この数字だと10人以上の議員が『祖国革新等』から生まれることになります」

早くも野党同士で喧嘩 李在明代表が大事なのは総選挙より党首選?

 しかし、ここに来て野党側に変化がありました。「共に民主党」の李代表が「身内ばかり公認して文元大統領派議員を公認しない」その反発で「文元大統領の元側近・李洛淵元代表が離党」「文元大統領派の議員が続々離党」さらに、「曺国元法相との共闘に早くも亀裂」ということです。

Q.何が起こっているのですか?
(李教授)
「支持率をみると『祖国革新党』が『共に民主党』の票を奪ってしまう可能性があるんです。『国民の力』の票を持っていくことは考えられませんので、すでに喧嘩が始まっています。また李代表が、身内ばかり公認しているということが露骨になっていて、今している裁判で世話になっている弁護士5人を公認して、出れば確実に当選する文元大統領派の議員を公認しないなど、『共に民主党』に不利な状況です。『国民の力』以外は全部野党になって、離合集散している状態で、『祖国革新党』の曺国元法相が『尹大統領が憎い人集まれ』と言って人を集めている状態です」

 李教授によると「共に民主党」の李在明代表の唯一の目的は、最大野党の党首であり続けること」つまり、総選挙より8月の党首選のほうが大事だということです。「現在、李代表が逮捕されないのは最大野党の党首だから」だということです。

Q. 曺国元法相の新党が票を集めたりすると、李代表が責任を問われて代表を降ろされて逮捕される可能性があるので喧嘩しているということですか?
(李教授)
「その可能性が高いです。そして、文政権時代の大物の公認をはずしたのも、8月の党首選で李在明党首が負ける可能性があるからだと言われています。李代表の構想は8月に党首に選ばれて、その後に始まる大統領選挙で候補になれば、自分は逮捕されず安全だと考えているようです」


(「情報ライブミヤネ屋」2024年3月14日放送)