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【ナゼ】斎藤知事“圧勝劇”の裏側で…ライバル陣営のX凍結、誹謗中傷 「精神的に疲弊」刑事告訴も 前例ない“SNS”拡散選挙が浮き彫りにした現実

2024年11月24日 11:00
【ナゼ】斎藤知事“圧勝劇”の裏側で…ライバル陣営のX凍結、誹謗中傷 「精神的に疲弊」刑事告訴も 前例ない“SNS”拡散選挙が浮き彫りにした現実

 兵庫県知事選挙で再選を果たした斎藤元彦知事。111万票を獲得した圧勝の勝因として、「SNS」で有権者を味方につけたことが指摘されている。その一方で、ライバル候補の陣営やパワハラなどの疑惑を追及する百条委員会の委員のもとには、SNS上での誹謗中傷や「恐怖を感じる」ような演説があり、県議の1人が辞職する事態が起きていた。前例のない“SNS拡散”選挙の裏側で何が起きていたのか―。

■「アカウントが凍結された異常事態、検証が必要」警察に告訴状提出

「アカウントが凍結された異常事態についてはきちんと検証することが必要だと」

 22日夕方、記者会見した稲村和美氏の後援会の世話人を務める津久井進弁護士が訴えた。

 稲村氏の陣営によると、後援会公式のX(旧ツイッター)のアカウントが、知事選告示から1週間後の11月6日、突然凍結された。後援会は急きょ別のアカウントを開設したが、12日にも再びアカウントが凍結された。

 XのHPによれば、嫌がらせや迷惑行為が確認された場合、アカウントは「凍結される場合がある」とされ、一般のユーザーから通報できる仕組みになっている。

 後援会側の説明によると、Xのルールに反するような投稿や行為をしたことはなく、「ウソのルール違反を通報しようとする呼びかけや、実際に通報を行った旨の報告が確認されていることから、組織的な一斉通報が行われ、アカウントが凍結されたと推測される」という。

 稲村氏の陣営は、ウソの通報によりアカウントを凍結され選挙活動を妨害されたとして、被疑者不詳として偽計業務妨害の疑いで警察に告訴状を提出した。公職選挙法違反の疑いでも告発状を提出し、今後、警察が受理するかどうかを判断することになる。

■「外国人参政権」「1000億円県庁舎建て替え」デマ情報で誹謗中傷も…

 無所属で出馬した前尼崎市長の稲村氏は、自民党の一部県議や立憲系の会派などの支援を受け、選挙戦序盤は優勢とみられていた。

 ところが、選挙戦が進むにつれ、ネット上では「斎藤さんは悪くない」「斎藤さん、誤解してごめんなさい」などと投稿が相次ぐようになった。斎藤氏への支援の輪が『雪だるま式』に拡大する一方、稲村氏については、「外国人参政権を進めようとしている」「1000億円かけて県庁舎を建て替えようとしている」などといったデマ情報が流れていたという。

 陣営はウソの情報だと否定したが、Xを凍結された間は否定する投稿もできず、ウソの情報はネット上で拡散していった。誹謗中傷が相次ぎ、「陣営も稲村氏本人も精神的に疲弊していった」(後援会関係者)という。

 投票が終わった17日午後8時すぎ、斎藤氏の「当選確実」が報じられ、報道陣や支援者の前に姿を見せた稲村氏は、「斎藤候補と争っているというより、何と向かい合ってるのかという『違和感』があったのは事実」と漏らした。

■「脅して自死されら困る」街頭演説 誹謗中傷で「家族が狂乱常態」議員辞職も…

 誹謗中傷の矛先は、ライバル陣営だけでなく、斎藤知事をめぐる疑惑を調査していた県議会の百条委員会のメンバーにも向けられた。

 百条委員会・奥谷謙一委員長「(NHK党の)立花氏が『奥谷を探せ』みたいなことをSNSで入れて(投稿して)、行動監視をされているような思いもあって、かなりすごい恐怖を抱いた」

 投開票の翌日に会見した百条委員会の委員長の奥谷謙一県議は、「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏が自宅兼事務所の前で拡声器を使って街頭演説をしたことを明かした。立花氏は、「出てこい奥谷」「あまり脅しても自死されたら困るので、このくらいにしておく」などと演説したという。奥谷氏は同居する家族を避難させたことを明かした。

 奥谷氏は「家族が怖い思いをしたのは大変遺憾。今後厳正に対応していく」と述べたが、これに対し、立花氏は翌日、自身のyoutubeで、「事務所の前で選挙演説をした。事務所を自宅を一緒にしているからそうなった。脅迫もしていない」として、奥谷氏を名誉棄損で訴えると表明した。

 このほかにも、投開票の翌日、百条委員会の委員で竹内英明県議が、「一身上の都合」を理由に突然、議員辞職した。

 百条委委員の上野英一県議は、SNS上で竹内氏への誹謗中傷が広がり、竹内氏から「言葉の暴力が拡散して、家族が狂乱状態までになった。家族から『政治の道から退いてほしい』と話があった」と相談があったことを明かした上で、「優秀な議員を追い込むほどのネットの怖さ、これを武器として選挙をする怖さがある。この問題をしっかりしないと、この国の政治が歪んでしまう」と訴えた。

■斎藤知事「心無い中傷は控えることが大事」被害抑止の条例制定も

 SNSを味方につけて再選を果たした斎藤知事も、「今回の選挙戦ではSNSでいろいろな情報が出て、心無い誹謗中傷については県民を傷づけることになるので、控えていくことが大事」との見解を示している。

 斎藤知事は、1期目から、SNSの誹謗中傷を抑止する条例案の検討を始め、7月に立ち上げた有識者会議で条例案の検討を進めている。この検討状況を踏まえながら、今後、条例の成立を進める考えだ。

 県議会では、選挙戦で誹謗中傷を受けた議員がいることも踏まえ、国に対しSNS対策を急ぐよう要望を出そうとするとする動きもある。

 東京都知事選や米大統領選と同様、SNSを中心としたネット上での盛り上がりが選挙戦を大きく左右する形となった今回の選挙戦。立候補者や議員らに関する『デマ情報』や『誹謗中傷』が増幅した現実が浮き彫りとなり、今後の選挙の在り方に大きな課題が突きつけられている。

最終更新日:2024年11月24日 11:00