【独自解説】百条委が『調査報告書』公表で7つの疑惑に結論 『文書内容はおおむね事実』 今後の議会の動きで斎藤知事は再び“不信任”の可能性も?「知事がどう対応するのか、注視していきたい」

兵庫県の斎藤元彦知事の“パワハラ”などの疑惑を告発した文書について調べる百条委員会は、計18回の委員会を開き、一連の疑惑に対する調査報告書を公表しました。何が明らかになったのか―。そして今後の動きはどうなるのか?『読売テレビ』上野巧郎記者の解説です。
■7つの疑惑文書について『調査報告書』公表 『文書内容はおおむね事実でパワハラ行為といっても過言ではない』
51年ぶりに兵庫県で開かれた百条委員会の報告書について見ていきたいと思います。
まずは7つの疑惑についてです。
1つ目の疑惑である“理事長の急死”に関しては、『心理的ストレスを与えたが命を縮めたとは言い難い』という内容になりました。
2つ目の疑惑である“知事選での事前活動”。これは2021年の知事選に関して『違法行為は認められず』という報告内容にまとまりました。
そして3つ目の疑惑である“パーティー券購入に圧力をかけたのでは”という疑惑に関しては『確認できずも”疑念を抱かれる行動は否めない』という内容になりました。
4つ目の疑惑である“選挙での投票依頼”に関しては、これは『違法行為は認められず』というものになりました。
そして5つ目の疑惑である、“優勝パレード資金のキックバック疑惑”に関しては『確認できず、背任容疑を県警が受理・対応を待つ』ということになりました。こちらの件について報告書には、『県関係者が起訴され、有罪となる事態となった場合は、知事自らの管理責任を重く受け止め、対処すること』と記載されています。
さらに一番注目を集めた疑惑が2つありまして、1つは、6つ目の疑惑である“贈答品の『おねだり』”に関してですが、これについて報告書では、『一部で事実誤認もあるが個人で消費していたと捉えられても仕方がない。“おねだり”との憶測を否定できない』というものになりました。
そして7つ目の疑惑である“県職員へのパワハラ”については、『文書内容はおおむね事実。パワハラ行為と言っても過言ではない不適切なもの』とし、斎藤知事が2024年3月の会見で言っていた「(文書内容は)“うそ八百”」…ではなかったということが、報告書としてまとまりました。
そして今回のポイントは、当初から上がっていた県側の対応が正しかったのかどうかです。斎藤知事は「公益通報の対象ではない」という発言を繰り返していますが、この根拠として、2024年9月の百条委員会で片山元副知事が証人尋問で、『元県民局長のメールに“クーデター”や“革命”の文字があり、知事を排除しようとする不正なもの、早く(告発者を)見つけないといけないと思った』という発言がありました。
しかし、実は調査の前に犯人探しをしていたのではないかと報告書の中に書かれています。2024年3月20日に斎藤知事が告発文書を入手し、その翌日に片山元副知事らと協議をして、斎藤知事が告発文書作成者の調査をするように指示を出しました。公益通報者保護の議論についてはされていなかったんですが、その後にメールの調査・パソコンの提出というものがあり、片山元副知事の発言が、時系列としておかしいのではという指摘になっています。
こういった対応について、参考人で百条委員会に招致された専門家によると、結城大輔弁護士は「公益通報に当たる可能性。告発者に不利益な扱いをしたのでは」と指摘しました。さらに上智大学の奥山俊宏教授は「独裁者が反対者を粛清するかのような陰惨な構図」という指摘があった一方で、徳永信一弁護士は「県の対応は適法」という意見がそれぞれ述べられ、今回の報告書がまとまりました。
百条委員会の判断としては、“告発文書”は『外部公益通報に当たる可能性が高い』ということと、さらに“県の初動”に関しては、『公益通報者方法に基づく指針を怠った対応、現在も違法状態が継続している可能性』と指摘しています。
■『公益通報者保護法の改正案』決定で刑事罰導入 “パワハラ疑惑”も『おおむね事実』で今後の議会の動きで斎藤知事は再び“不信任”の可能性も―?
このような兵庫県の動きを受けて、2025年3月4日、『公益通報者保護法の改正案』が閣議決定され、これまでなかった罰則に関しても導入される改正案が決定されました。
この報告書の取りまとめの経緯ですが、“パワハラ疑惑”に関しては、案として『おおむね事実』と示された一方で、維新会派の議員から「司法の認定によるべき」という意見も出ました。
そして“通報者探し”に関しても、当初の案で「公益通報者保護法に違反する」と評価が大勢を占める中で、維新の議員からは「違法とは断定できない」という慎重な意見も出ていましたが、主にそういう意見を出していた岸口県議と増山県議に関しては、情報漏洩などを指摘され、委員を辞職しました。その後、維新会派の文言は削除される形となり、意見がまとまりやすくなったのではないでしょうか。
あくまで今回出たのは“百条委員会の報告書”です。これは『地方自治法100条』に基づいて、兵庫県議会が疑惑を調査するために設置したもので、3月4日に報告書が出ています。そして第三者委員会も別で動いていて、元裁判官や弁護士など6人で構成していて、2025年3月中には調査を終えるということで、独立性・客観性の担保が期待されているわけですが、改めて3月4日に出た百条委員会は、あくまで県議会の“内部調査”だという側面を、理解しておかなければいけません。
パワハラの認定に関して、知事の発言で気になるものが過去にありまして、「百条委員会や第三者委員会の報告書の内容は真摯に受け止める」という言葉があった一方で、「ハラスメント事案の認定は一般的には司法の場でされるもの」と発言しています。
こういった発言の背景には、“ハラスメントされた側が告発をして、刑事罰や民事での訴訟に至って初めて自分の立場が決まる”というような発言にとれるんです。
そして今後の議会の動きとしても、再び“不信任案”ということも、可能性としてはもちろんあります。こういう可能性に関して、百条委・奥谷委員長からは「報告書の内容をしっかり受け止めてもらい、(斎藤)知事がどう対応するのか、注視していきたい」と発言しています。
(「かんさい情報ネットten.」2025年3月4日放送)