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【ナゼ】“教育無償化”自公との3党合意で政策実現も…露わになった維新の深刻な『分断』『人材不足』 “前”執行部頼りで高まる“現”執行部への批判「人脈が乏しすぎる」

2025年3月8日 12:00
【ナゼ】“教育無償化”自公との3党合意で政策実現も…露わになった維新の深刻な『分断』『人材不足』 “前”執行部頼りで高まる“現”執行部への批判「人脈が乏しすぎる」
自公維の3党合意(2月25日)

 2025年度予算案が4日、衆議院を通過した。「少数与党」の石破政権は“教育無償化”実現と“社会保険料の引き下げ”を求める維新との「ディール(取引)」に成功し、予算案で維新の賛成を取りつけた形だが、維新にとっては悲願ともいえる国政での政策実現で今夏の参院選へ弾みがつくかと思いきや、一連のプロセスで明らかになったのは党内の深刻な分裂と人材不足の現状だった―。

 報道各社の世論調査の政党支持でも低迷が続き、党勢再拡大へのチャンスを掴みあぐねる維新。憲政史初となる“東京以外”に拠点を置く本格的な国政政党は、この先どこへ向かうのか。
(読売テレビ報道局:平田博一、阿部頼我、髙橋克哉)

■自公維3党合意のキーマンは『無冠の交渉人』


 「ご面倒をおかけしました。いろいろお世話になりました」(石破首相)
 「これからがスタートです」(維新・前原共同代表)

 予算案の衆院通過後、石破茂首相があいさつ回りで国会内の維新控室を訪れると、維新の前原誠司共同代表と笑顔で握手を交わした。与野党の党首クラスが笑顔で写真撮影に収まるケースは珍しく、2人の親密な関係性をうかがわせる場面だった。

 “教育無償化”と“社会保険料引き下げ”の自公維合意をめぐっては、与野党に太いパイプを持つ維新の遠藤敬前国対委員長の動きで潮目が変わったのは間違いない。

 3党の政調会長協議で進展が見られない状況を見た前原氏が1月下旬、現在の維新の体制では「非執行部派」の遠藤氏に協力を依頼。馬場伸幸前代表に仁義を切ることを条件に遠藤氏が動き出すと、国対委員長同士として親交のあった自民党の森山裕幹事長との交渉ラインが復活した。

 3党の「本気度」を確かめた文部科学、厚生労働両省も本腰を入れてサポートに乗り出し、先行して協議が行われていた自公と国民民主党の「103万円の壁」協議が停滞するのを横目に、一気に動き出した。

 官邸内では遠藤氏を「無冠の交渉人」と称えている。

■「103万円の壁」で袋小路の中…機能した石破=前原の『鉄道ライン』

 こうした裏ルートの動きが明らかになる一方、表である「石破・前原ライン」の存在も、自公維合意の推進力となったとみる向きが強い。

 両氏はともに「鉄道」が趣味で、不遇の時代も鉄道つながりでテレビ番組出演を重ねるなど、親交のあった間柄だ。前原氏は予算案の衆院通過に先立ち、4日に行われた民間の会合で、石破首相と話す機会があると前置きした上で、「首相は憲法改正に強い思い入れがある。参院選後は憲法で動いてくるかもしれない」と独自の政局感を語りながら首相との「近さ」をにおわせた。

 複数の関係者によると、首相と前原氏は年明け以降、連日電話で情報交換を続けていたという。当初は「党内をまとめる自信がない」などと漏らしていた前原氏も、2月ごろから「馬場さんと遠藤さんがいるから大丈夫だ」と自信を深めていたという。

 「103万の壁」を巡る協議が袋小路に迷い込んだことも相まって、予算成立に向けた“パートナー探し”において、首相にとっては維新と前原氏が「渡りに船」の存在に映ったようだ。

■「これまでにない成果」も…前執行部の「飲み食い」人脈による“スピード決着”に高まる批判

 大阪府と大阪市で、10年以上にわたり与党を担い政策を実現してきた維新にとって、国政での「実績ゼロ」からの脱却は悲願だ。

 ただ、3党合意への評価は二分する。「これまでにない成果だ」(現執行部に近い国会議員)との声があがる一方、「参院選を見据えて安易に自公にすり寄るべきではなかった」(非執行部派議員)と厳しい見方もあり、全体として高揚感はない。

 去年の衆院選での「敗北」の責任を取って馬場前代表が退任し、吉村洋文大阪府知事が代表に就いた際の「しこり」で生じた維新内の「執行部派」「非執行部派」という対立構造が、そのまま今回の合意に対する賛否につながった。

 本来ならば、「非執行部派」の馬場、遠藤両氏の加勢で得られた合意をテコに党内融和につながる可能性もあるが、「結局、馬場氏や遠藤氏の協力なくして国政で成果を出すことができないことが明らかになった」「現執行部は他党との人脈が乏しすぎる」(いずれも“中立”議員)などと、むしろ現執行部への批判が高まる皮肉な結果となっている。

 特に、吉村氏は代表就任時に「飲み食い政治」「密室で決まる国対政治」との決別を宣言。暗に、馬場氏や遠藤氏の政治手法を批判しながら、今回はその遠藤氏らの平時の「飲み食い」で培った人脈を生かし、十分な党内議論もないままにスピード決着したことについて整合性を問う声が高まっている。

■参院選「与党の過半数割れ」目指すも…定まらぬ『立ち位置』

 3月1日に東京で行われた維新の党大会では、“教育無償化”や“社会保険料引き下げ”のほか、夏の参院選で「与党の過半数割れ」を目指す方針を採択した。あくまで野党の立ち位置で参院選に臨む方針を再確認した形で、石破政権への連立入りの可能性が「ゼロ」だということは、首相サイドも織り込み済みだ。

 ただ、話し合いの国対政治で与党側と落としどころを見つけ、早期に「半歩前進」の果実を取るのか。従来型の野党のように、あくまで100%の政策実現を目指して一切の妥協を許さないのか。党としての基本方針は定まっていない。

 そもそも維新がこうした根本的な「あり方」の議論を本格的に行ったことはない。3党合意で顕在化した党内の対立は、国政政党としてのブランディングが未完成であるがゆえに生じた不幸とも言える。

 自公維3党の政調会長は5日、国会内で会談し、小学校給食の無償化や私立高校生向けの支援金について、5月中旬をめどに考えをまとめる方針を確認した。前原氏ら維新執行部は具体的な制度設計について、政府が夏に策定する「骨太の方針」にどこまで盛り込めるかが参院選を見据えた次の焦点と考えている。

 ただ、こうした対応は、有権者から見れば限りなく与党に近いスタンスに映り、分かりにくいも事実だ。時として、与党でも野党でもない「ゆ党」と揶揄され、「自民党をピリッとさせる」(松井一郎元代表)といったあいまい戦略から脱却し、参院選前にどこまで自らの立ち位置を定め、示すことができるか。

 憲政史上まれにみる“東京以外”に拠点を置く国政政党の「次の10年」を左右する重要な局面を迎えている。

最終更新日:2025年3月8日 12:00
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