【独自解説】「間接的な買収でみっともない」トランプ氏支持者の“お金バラマキ作戦”に批判殺到!大接戦のアメリカ大統領選、支持率の“からくり”とハリス氏に立ちはだかる壁
史上稀に見る大接戦を繰り広げるアメリカ大統領選。支持率はトランプ氏がややリードしていますが、その裏にある事情とは?ハリス氏に吹く逆風とは?明治大学・海野素央(うんのもとお)教授とデーブ・スペクターさんのダブル解説です。
■支持率拮抗にアメリカ国民“危機感” 世論調査会社が「トランプ氏に有利な数字を出してくる」ワケ
2024年10月28日現在の支持率(全米・各種世論調査の平均)では、トランプ氏が48.6%・ハリス氏が48.4%と拮抗していますが、トランプ氏がやや上回っている状況です。
(デーブ・スペクターさん)
「今までは『世論調査・支持率の発表は多すぎて誤差もあるし、訳がわからない』といわれていましたが、今回は意外な影響があって、これだけの接戦だと『自分が1票入れないとマズい』という気持ちにさせています」
(明治大学・海野素央教授)
「ただ、この平均値を取った世論調査には、『トラファルガー』『ラスムセン』『インサイダーアドバンテージ』といったトランプさんの応援団の世論調査機関が入っていますから、常にトランプさんに有利な数字を出してきます。また、その3つの世論調査機関に加えて、『アトラス・インテル』という世論調査機関会社も、トランプさんに有利な数字を出してくるので、若干差し引いて見ることも大切だと思います」
Q.アメリカ大統領選は、要は「激戦州をどちらが取るか」ということですよね?
(海野教授)
「そうです。総得票数ではないので『それが民主主義か?』といった声もありますが、今回“激戦7州”で決着します。トランプさんは、共和党が強い“赤い州”に加えてジョージア州・ノースカロライナ州を最初に取ると王手で、そこにペンシルベニア州を取れば、過半数の270を超えます。ハリスさんは、民主党が強い“青い州”に加えてウィスコンシン州・ミシガン州を取ると王手で、そこでペンシルベニア州を取れば270を超えて、ハリスさんが勝ちます。だから、最も注目なのは、ペンシルベニア州です」
(デーブさん)
「ただ今回は、ハリスに合計で圧勝してほしいです。今恐れているのは、トランプが早めに勝利宣言をするのではないかということです。もしハリスが勝ったとしても『不正だった』とか疑惑を作るなど、既にそれをやっているのではないかという感じなので、激戦州以外の票も今回は大切です」
Q.アメリカでは、トランプ氏の若い頃を題材にした映画が上映されているんですよね?
(デーブさん)
「そうです。この映画はよく作ってあって評判が良く、アメリカでは11月1日から配信も始まるそうです。70年代・80年代を中心に、どうやって今のトランプが作られたのかという非常に面白い映画で、いい加減なところが全部浮き彫りになっていて、トランプ氏にはかなりダメージがあります。製作陣は、訴えられることを恐れていないそうです」
Q.アメリカのマスコミは、公平性は関係ないんですか?
(海野教授)
「はい。この映画は10月に公開され、『オクトーバーサプライズ』、つまり選挙戦に影響を与える“10月の驚くべき出来事”、それを狙ったんでしょう」
■ハリス氏は「インパクトが弱い」 トランプ氏の巧妙な“戦略”に対抗できるか
アメリカで女性初の副大統領となったカマラ・ハリス氏は米・カリフォルニア州オークランド出身で、父親はジャマイカ出身・母親はインド出身です。2011年に黒人女性初のカリフォルニア州司法長官となり、2017年には南アジア系ルーツ女性初の上院議員となりました。
Q.ハリス氏は本来“黒人票”“ヒスパニック票”を固めるはずだったのに「固まっていない」といわれていますが、なぜですか?
(海野教授)
「黒人男性には黒人女性に対する差別・蔑視があるので、ハリスさんはジェンダーの壁にぶち当たっています。トランプさんはそれ知っていて、『私は黒人男性が好きだ』と。また、ヒスパニック系の中には合法的に市民になったりアメリカで生まれたりした人もいますが、『不法移民が黒人・ヒスパニック系の職を奪っている、利益を侵害している』と敵対心を植えつけて、対立を煽っているんです。そこに黒人まで巻き込んで議論しているところが、トランプさんは非常に巧妙で、それが当たっていると思います」
Q.トランプ氏と比べて、ハリス氏はどうですか?
(海野教授)
「ハリスさんは、経済に関して具体的なことを述べていますが、“看板になるような経済政策”に欠けている面があるので、『インパクトが弱い』と見ることはできます。ただ、後半になってハリス陣営は、トランプさんがヒットラーを称賛していたという発言を出してきました。2016年にヒラリーさんもトランプさんの性格を攻撃しましたが、あの時は“メール問題”があって上手くいきませんでした。今回は、2016年から8年経って、有権者もトランプさんのことを知ったので、そこでハリスさんが逆転できるかどうかです」
■「やっていることが汚い」カネで解決?あの大富豪の“支援策”に批判殺到
そんな中、トランプ氏支持を表明している“大富豪”イーロン・マスク氏が、「お金をばらまいている」として物議を醸しています。『ロイター』によると、マスク氏はトランプ氏を支援する団体『AMERICA PAC』を設立し、約114億円(7500万ドル)を献金しました。
また、激戦州を対象に、「言論の自由と銃所持の権利」を支持する署名活動を開始。署名者一人を紹介するごとに、紹介者に対し約7000円(47ドル)を支払っているということです。
さらに、米『CNN』 によると、2024年10月19日からは「署名者から毎日一人に約1億5000万円(100万ドル)を支給する」と発表し、「票を金で買っている」と批判が殺到しています。
Q.微妙なのが、“トランプ大統領を支持してくれたら”とは、言っていないんですよね?
(海野教授)
「はい。イーロン・マスクさんが活動しているのは激戦州のペンシルベニア州で、トランプさんは『イーロンはよくやってくれている』と言っています。しかし、これは中間所得層や無党派層の票を減らす危険性があります。今回の大統領選挙は、“マージンのゲーム”といわれています。特にペンシルベニア州では、マージンのゲームは『ほんの僅かの票でも上乗せしたほうが勝つ』という“戦い”なので、このマスクさんの行動は、中間所得層の支持を減らす可能性があると思います」
アメリカの検察は、マスク氏の行動が「大統領選の結果に影響を与えることを目的とした“違法な宝くじ”に当たる」と指摘し、裁判所に賞金提供の差し止めを求める訴訟を起こしました。
検察側は「宝くじは州が運営・管理することが法律で決まっている」と指摘し、「許可を受けておらず、違法だ」と糾弾。「100万ドルを獲得するチャンスと引き換えに、国民に個人識別情報を提供させ、政治的誓約をするよう誘い込んでいる」としています。
Q.やはり問題なんですね?
(デーブさん)
「そうですね。はっきり言って、やっていることが汚いです。間接的な買収に近いので、これはみっともないと思います」
(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年10月29日放送)