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“死んだら夫と別がいい”多様化する墓選び

2017年3月14日 20:25
“死んだら夫と別がいい”多様化する墓選び

 自分が死んだらどんなお墓に入りたいか考えたことはあるだろうか。最近、女性専用の納骨堂や夫とは別の区画に墓地を求める人が増えている。どんな背景があるのだろうか。


■都心に立地、ハイテク参拝室

 東京・新宿駅にほど近いユニークな形の建物。ここはビル型の納骨堂だ。地下にあるのはハイテクな参拝室。参拝者用のカードを差し込むと、明かりがついて扉が開く。

 お目見えしたのは黒い祭壇。遺骨が納められた厨子(ずし)はすでに全自動で搬送され、祭壇にセットされている。亡くなった人の写真や戒名はデジタルフォトフレームに映し出されるようになっている。


■「亡くなってまで主人のいびきは聞きたくない」

 さらにこの納骨堂には女性専用の区画もある。女性らしい華やかで明るい印象の空間だ。去年5月に販売を始めた100基はすでに完売。当初は、主に独り身の女性が購入すると想定していたということだが、家族のいる女性が購入者の8割にのぼるという。

 担当者によると「亡くなってまで主人のいびきは聞きたくない」という人もいるということだ。妻が、夫と同じ墓に入らないという選択。これまでとは違うお墓選びをする人が、近年、増え始めている。


■宝石箱のような「骨壷」も

 こうした中、女性向きの豪華な骨壷も登場。動物や植物が鮮やかにデザインされ、宝石箱を彷彿とさせるものとなっている。価格は68万円で、購入者はすべて女性。ふたの内側には遺影を飾れるようになっている。

 株式会社カバー・布施さん「生前に自分の入る骨壺として購入する方もいるし、あとはご自身の両親や親族の方の分骨用として購入いただいております」


■「樹木葬」人気の背景とは―

 一方、千葉県八千代市の霊園では、墓石の代わりに、花や木などの樹木を利用した樹木葬というスタイルがここ数年で増加しているという。樹木葬は購入費用などが、比較的安くなっている。

 株式会社川辺・小林さん「跡継ぎの問題で、例えば娘様が1人しかいないご家庭。娘様が嫁がれてしまうと立派なお墓を建てても、守っていくことが難しいと」

 あとに残された家族の負担を増やさないよう、費用の安い樹木葬を選ぶ夫婦が増えているそうだが、夫婦で別々の区画に入ることを希望する人も多いという。


■夫と同じ墓に入りますか?

 「自分が亡くなった時、夫と同じ墓に入りますか?」街で聞いてみると―

 「私は結婚した旦那さんの家の墓に入りたい(大学生)」「自分の家族側に入りたい。自分の両親の方に入りたい(大学生)」「(Q:相手がどうしても自分の方に入ってくれって言ったら?)そこはもうダメです。私はいやです」


■同性カップルを受け入れる墓地も

 一方、同性のパートナー同士でも同じ墓に入りたい―こうした願いに応えるお墓も現れている。埼玉県にある広大な墓地。その一画くに白い大理石の柱が並んでいる。実はこれは2人で入るためのお墓。「LGBT」など性的少数者のパートナーでも利用できる。

 證大寺・井上住職「この中に遺骨を納める形になっています」「(多くの場合)2人同時に亡くなりませんから、残った方が入っている方を抱きしめられるような(柱状の形になっています)」

 僧侶らはLGBTについて学ぶ研修会を開催している。すでにLGBTの方との契約もあるということだ。

 井上住職「LGBTの方は、戸籍上一緒ではありませんので、お墓に入りづらいですよね」「お参りする場所がここになれば、私たちはうれしいなと」


■自分の最期は「自分らしく」

 お墓選びが多様化していることについて専門家は―

 聖徳大学・長江教授「自分自身の死というものをしっかり終活の中で考えて、自分の意思を表明することはできつつある」「色んな形のお墓が求められているし、そういうものが供給される時代だと」

 自分の最期は自分で決めたいというニーズは今後も高まっていきそうだ。