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太陽と海陽 陽の光を浴びられない男の子

2022年11月18日 13:22
太陽と海陽 陽の光を浴びられない男の子
新貝海陽くん1歳。生後2か月で指定難病「色素性乾皮症」と診断されました。治療法はなく、外出時には防護服を着用。紫外線を避ける生活を続けても、身体機能が低下し20歳まで生きられないと言われるこの病気の治療法を求め続ける両親。太陽の光と闘う家族の物語です。


太陽の光を浴びることができない、1歳の海陽(うみひ)くん。

母・真夕さん(34)
「この病気、遺伝なので100%で私と主人のせいなんです。なので、『ごめんね』って感じで毎日思っていましたね。『病気にしてごめんね』って。『だから絶対に助けるね』って思います」

新貝海陽(しんがい・うみひ)くん。生まれてたった2か月で、「色素性乾皮症(しきそせいかんぴしょう)」と診断されました。紫外線を浴びると、皮膚にやけどのような症状が出て、高い確率で皮膚がんになるといわれています。

海陽くんは5人家族で3兄妹の末っ子。日没からが、自然体でいられる家族の時間です。

父・篤司さん(39)
「いま完全な俺ら普通(の家族)だなって。普通に憧れますよね。たまんないくらいかわいいですし、僕のことを好きでいてくれてるのわかるので、うれしいですし。うれしいからこそ悔しいですし、この子の未来はどうやったら作れるのかなって」

病気の特徴はもう1つ。太陽の光を浴びない生活を続けても、6歳ごろから身体機能の低下が始まるのです。脳の萎縮が進行し、症状の重い海陽くんは20歳ごろまでしか生きることができないと告げられました。患者の数は、国内で600人ほど。治療法は見つかっていません。外に出る時は、日光を遮断する防護服が欠かせません。

母・真夕さん
「スーパーとかであのマスクをしていると、『なんでこんな風に苦しくさせてるの?』とか、『そんなコロナを気にしなくていいよ』っていう風な。やっぱそういう時は悲しくなります」

短い時間でも紫外線が当たらないように全身を布で覆います。

姉・陽花ちゃん(6)
「うみ! ダメダメ! 太陽に当たっちゃダメ」

少しでも手がかりが欲しいと、研究者に会うため全国の大学や病院へ。応じてくれる専門家がいれば、すぐ会いに行きます。

父・篤司さん
「1つの薬を作るのに、どのくらいのお金があったら…」

東京大学・岡田尚巳教授
「一般的に1つの薬をつくるのに、開発費用は500億とか1000億とかかかりますよね」

母・真夕さん
「話したいことがいっぱいあるんだけど、いろいろありすぎてね。動かなきゃいけない時間っていうのは、今だけなんだなって思った。後から動いても全く意味がなくって」

父・篤司さん
「1年前の情熱は何だったのか…。何だったんだろうね…。治すではないけど、今を充実する時間をいっぱい持ちたいなって思っちゃってる俺もいる」

母・真夕さん
「海陽、死ぬけどいいの?」

父・篤司さん
「分かってるよ、そんなの…。だからそれをさ、真夕に言われて、『死ぬけどいい?』とか言うけど、俺も逆に問いたい。『そんな行動でいい?』って思うの」

母・真夕さん
「ぐずぐず言ってたって、海陽(の病気)は進行していくし、20歳には死んじゃうのね」

父・篤司さん
「死なないけど」

母・真夕さん
「これがいいよってのは、私にはそんな頭がないから出てこないけど、まずは、この1年を通して、いま住んでいる浜松市すべての人が海陽をわかってほしいと思っているのね」

父・篤司さん
「そうだね」

両親が出した答えは、多くの人に知ってもらって、治療につながる道を探すこと。1歳6か月、少しずつできることが増えてきました。

母・真夕さん
「成長しないでって言ったら悲しくなっちゃうんですけど、成長していく様子は見たいけれども、今が愛おしくてしょうがない」

薬も治療法もまだ見つかっていません。時間は限られています。

『海を照らす太陽のように輝く人になってほしい』

ここは生まれた日の朝、お父さんが海に浮かぶ太陽を見た場所。

父・篤司さん
「海陽にとって幸せなことなら、どんどん世の中に出してあげたいなって。奇跡を待つのは嫌なので、動いたパパとママでいたいですね」

名前に託した想い…。いつか、きっと。


2022年10月2日放送 NNNドキュメント’22『太陽と海陽 陽の光を浴びられない男の子』をダイジェスト版にしました。