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「対策の限界も」小学校で上履き盗んだ疑いの男逮捕 不審者やすやすと侵入 学校の防犯は?

2024年7月29日 19:56
「対策の限界も」小学校で上履き盗んだ疑いの男逮捕 不審者やすやすと侵入 学校の防犯は?

熊本市の小学校から上履きを盗んだとして、千葉県の男が逮捕されました。男は日中に学校に侵入したとみられています。今回は上履きが盗まれる被害でしたが、不審者がやすやすと学校に侵入したことに不安を抱える保護者も多いのではないでしょうか。そこで、「学校の防犯、大丈夫?」をテーマに取材しました。教育委員会に取材すると、「対策の限界」が見えてきました。

■上履きを盗まれた児童
「朝、行った時にはもうなくなっていた。いやな気持もあるけど、気持ち悪いのもある」

こう話してくれたのは、今回、上靴を盗まれた児童です。学校で起きた事件に、保護者も驚きを隠せなかったといいます。

■被害児童の保護者
「誰が好んで、古い上履きをそんなにいっぱい盗るんだろうって。なんか不思議な思いと、やっぱりちょっと気持ち悪いっていう思いはあります」

犯行はどのように行われたのでしょうか。被害にあったのとは別の小学校にお邪魔し、警察や熊本市教育委員会への取材をもとに検証します。男が学校に侵入したのは、児童が上靴をしまって下校した午後3時から4時頃とみられています。

■内藤有希子記者
「黒っぽい服装にリュックを背負っていた男。堂々と門から入り下駄箱に向かったということです」

男は上履きをリュックに詰め、そのまま立ち去ったといいます。男の侵入に気付くことはできなかったのでしょうか。

被害にあった3つの小学校は、正門に防犯カメラを設置していましたが、そこに男の姿は映っておらず、別の門から出入りしたとみられています。防犯カメラをすり抜けての犯行に、熊本市教育委員会は事態を重く受け止めています。

■熊本市教育委員会健康教育課 吉田康誠課長
「悪意を持った人間が学校の中に容易に侵入できたということは、非常に憂慮すべき状況であると考えております」

小学校への不審者侵入が社会問題となったのは、2001年。大阪市の池田小学校に男が侵入し、8人の児童を殺害、15人が重軽傷を負いました。翌年、文部科学省は学校の「不審者対応マニュアル」を作成。しかし、校門や校舎の入口については、「利用できる時間を限定し、施錠する時間や担当者を決めることが大切」だと示すにとどまっています。

熊本市の学校でもそれぞれマニュアルを作っていますが、校門の施錠時間は遅くせざるを得ない事情があるといいます。

■熊本市教育委員会健康教育課 吉田康誠課長
Q正門の施錠はいつするんでしょうか?
「正門は、例えば体育館の夜間開放などをしている学校があるので、最後の職員が出る頃ですので、 やはり夜7時ぐらいになってくると思います」

「地域に開かれた学校」として住民に体育館などを貸し出す学校もあることから、管理には難しさがあるということです。

被害を受けた児童の保護者も、学校への出入りを制限する方法に限界を感じていました。
■被害児童の保護者
「一応決まりとしては、学校の授業参観やPTAの集まりがある時には、首下げの名刺のようなものを下げてきてくださいっていうアナウンスはあったんですけど、つけている人の方が少ないようなイメージはありました。やはりセキュリティー的には本当にスカスカだったりはするので、例えばICチップを持った人じゃないと門を通過できないとか、常に門を開けておかない状態の方が良いような気はしますけどね」

不審者を学校に入れないために、どのような手立てを講ずるべきか。対策の見直しが必要なことを今回の事件が浮き彫りにしました。
■熊本市教育委員会健康教育課 吉田康誠課長
「物理的に完全に外からの侵入というのを防げたら、一番確実な方法だろうと思いますが、 そういった方法がすぐには取れないという状況の中では、人的なところに現場を頼らざるを得ないというところがございますので…」

【スタジオ】
(緒方太郎キャスター)
学校現場での対応の難しさが見えてきましたが、今後どういう対策が考えられるのでしょうか?

(畑中香保里キャスター)
熊本市教育委員会は29日、各学校宛てに通知を出しました。今回の事件を受けて、児童が下校した後に施錠を徹底することや、不審者対応訓練を行うことなどを呼びかけています。

また、熊本市教委は、昨年度から不審者対策のため独自のアプリを運用しています。不審者を発見した職員がアプリで情報を共有するものです。

(緒方キャスター)
しかし、まずは学校に不審者を入れないことが重要ですよね。

(畑中キャスター)
犯罪心理に詳しい東洋大学社会学部長の桐生正幸教授に、求められる対策について聞きました。

■東洋大学社会学部長 桐生正幸教授
「最悪の場合、何か凶器を持って子どもたちに対して危害を加えるという人も容易に学校に入るわけじゃないですか」

桐生教授は不審者侵入のリスクを指摘した上で、「地域に開かれた学校」というあり方自体を見直す必要性もあると話しました。
■東洋大学社会学部長 桐生正幸教授
「学校の教室とか体育館というのは非常に使いやすいんですよ。でも、ある意味、行政がそこに甘んじているということもあると思うんですね。守るべきは子どもたちというのを第一にして、公民館とか、いろいろあるわけです。そういったところに代替するといった考えの方がいいんじゃないかと思います」