作家・五木寛之氏（７８）の名作が、電子書籍個人全集「五木寛之ノベリスク」として配信されることが１４日、発表された。

　７月からｉＰａｄやｉＰｈｏｎｅなどで販売を開始する予定で、第１期の配信は短編・長編あわせて３２タイトル。吉川英治文学賞を受賞した「青春の門」、デビュー作「さらばモスクワ愚連隊」などの豪華ラインナップとなる。

　東京・音羽の講談社で会見が行われ、五木氏も出席。「電子書籍に関心を持ったのは早いのですが、私の癖で新しいものに関心を持つと、手にとって動かすまでに１０年、１５年がかかる」と語りつつ、電子書籍の利点を「老眼なので画面を拡大できるのは便利」「“図書館”を持ち歩いて、外で仕事ができる」と語った。「地上から愛着のある作品が消えていくのがつらい」と絶版にも心を痛めており、「消えてしまっている作品に光をあてて提供できるのでは」と新メディアの可能性に期待した。

　「『本』という形を失うということに寂しさは感じませんか？」と質問されると、「当然、旧世代の人間なのでありますけど、それは慣れです。新しいものができてくると、人はその中から新しい喜びを見つけ出してくる。電子書籍用の活字のデザインなどからスタートし、そういうふうにやっていくと魅力的な電子書籍のスペースができるに違いありません」と力強く語った。