女性初の銀行トップが語るリーダー論 4
「野村信託銀行」社長・鳥海智絵氏に聞く「飛躍のアルゴリズム」。3つ目のキーワードは「『ビッグピクチャーをとらえる』専門知識は毎朝のコーヒーショップで“ギュッ”とチャージ」。いろんな部署を転々とした経験から見いだした学習法を鳥海氏が語る。
■大きく物事をとらえる
――こちらはどういうことでしょうか。
「ビッグピクチャーをとらえる」というのは、留学中によく先生がおっしゃっていたことなんです。もともとは金融関係の授業をとろうと思っていたんですが、そのうち「いろいろなんでも面白そうなものをやってみよう」といろんな授業をとりました。その中で、先生がよくおっしゃっていたのは「枝葉末節にとらわれずに、全体を見なさい」ということです。
その頃は、その重要性があまりよくわからなかったんですけど、今の立場になってみると“大きく物事をとらえる”ということが必要で、「ここはこうしたらどうしよう」ということも、もちろん思うんですけれども、そういった細かいことがどうこうというよりは、「これ、何でやってるんだっけ」とか「これでこの先どういうことがあるのか」というふうに考えようと、いま思っています。
――若いときに経営者の視点も見つけられたということですね。
そのときは全く気がついてなかったですけどね。
――節目で俯瞰(ふかん)から物事を見ていたということですね。
そうですね。そういう訓練をさせられたということです。
■知識を蓄える鳥海式学習法
――金融といえば、とにかく高度な専門知識というのも必要だと思うんですが、どのような手法で身につけていったんですか。
私は結構いろんな部署を転々としたものですから、そのたびに経験がないことをやらなければいけませんでした。そこで思いついたのは“勉強をしてとりあえず基礎的な知識を身につける”ということしかないかなと思ったので、書物の勉強をしました。
ただ、私は怠け者なので、あまり机に向かうことが得意じゃないものですから、朝、コーヒーショップで小一時間、勉強するというのを、異動するたびに繰り返していました。
――異動があると、また1から知識を蓄えなければと思いますよね。
正直つらいです(笑)。楽しいとは言いませんが、なんとか新しいことにトライする面白さを味わってきたかなと思います。
■3年たっても…
――本当に前向きな気持ちと、とにかく努力でここまで駆け上がってこられたという印象を受けます。社長に就任されてから早くも3年ですが、どんな3年でしたか。
本当にあっという間に「もう3年なんだ」という感じなんですけれども、ただ、いまだに「社長」と呼ばれることはあまり慣れません。もともと野村証券はあまり肩書で人を呼ぶことがないんですね。だいたい「さん」付けで呼ぶ会社だったので、野村信託銀行の人にも「社長」ではなく「さん」付けにしようとよく言っています。
――そうやって社員との距離を縮めるという意味もあるんでしょうか。
そうですね。自分も居心地が悪いので(笑)