×

闇バイト対策の切り札に?──警察官が応募する“雇われたふり作戦” 新たな手法「仮装身分捜査」とは おとり捜査とどう違う?

2024年12月18日 10:41
闇バイト対策の切り札に?──警察官が応募する“雇われたふり作戦” 新たな手法「仮装身分捜査」とは おとり捜査とどう違う?

闇バイトによる相次ぐ強盗事件への対策として、警察庁が「雇われたふり作戦」を展開しようとしています。それを可能にするため必要性を強調しているのが「仮装身分捜査」です。政府の緊急対策に盛り込まれた新しい手法ですが、具体的な中身や効果を考えます。

■政府の緊急対策に新たな捜査手法

藤井貴彦キャスター
「この年末も心配な闇バイト。その対策への切り札となるのでしょうか? 17日に政府が打ち出した緊急対策の中に、『仮装身分捜査』という新たな手法が盛り込まれました。警察庁長官は、『雇われたふり作戦』をするのにこれが必要だと強調しています」

■偽物の免許証などの画像を送信

小栗泉・日本テレビ解説委員長
「雇われたふり作戦は、警察官が身分を隠してスマホやSNSを使って闇バイトの募集に応じ、例えば強盗をするために実行役が集合したところを強盗予備などの容疑で一網打尽にしようという作戦です」

「検挙することで犯行を未然に防ぎ、実態解明につなげることができます。犯罪組織側も、バイトの応募者に警察官が紛れ込んでいるのではと思ったら募集しづらくなります。こうした抑止の効果が期待されています」

「ただ問題は、警察官が闇バイトに応募する時に免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書を求められるケースが多いことです」

藤井キャスター
「実際にはどうする予定なのですか?」

小栗委員長
「警察庁などが必要性を強調しているのが、仮装身分捜査です。警察官が架空、つまり偽物の免許証などを作って画像を送信することで、捜査員だとばれないようにするというものです」

藤井キャスター
「ドラマでは見たことがあるような気がしますが、警察官が偽の身分証を使って大丈夫なのでしょうか?」

小栗委員長
「もちろん本来は違法行為ですが、刑法には『正当な業務による行為は罰しない』という規定があるため、警察庁は『正当な行為』として認められると位置づけています」

■犯行の働きかけをせず、実行前に検挙

藤井キャスター
「おとり捜査や潜入捜査とは違うものなのでしょうか?」

小栗委員長
「違います。いわゆるおとり捜査は、これまで薬物捜査などで限定的に行われてきましたが、警察官などが身分を隠して相手に近づき、密売人に売らせるなど、犯行を実行するように働きかけて検挙するものと位置づけられています」

「いわゆる潜入捜査は、同じく身分を隠した上で犯罪グループに入り込み、時には犯行の一部に加担することもあるというものです」

「今回検討されている仮装身分捜査は、犯行を働きかけたり加担したりすることなく、犯行に及ぶ手前で闇バイトの実行役などを検挙するため、これらとは異なると警察庁は説明しています」

■警察庁担当者「ガイドラインは緻密に」

藤井キャスター
「身分を偽って近づくわけですが、警察官は安全に捜査できるのでしょうか?」

小栗委員長
「現場に集まった実行役の検挙なども想定しているので、一定程度の危険性はあります」

「警察庁の担当者は『だからこそ身の安全をきちんと確保できるよう、危険にならないようにやることが大事。そのために、今回の緊急対策で作られる仮装身分捜査のガイドラインは緻密に書き込む必要がある』と話しています」

■専門家「法律で歯止めかける方法を」

小栗委員長
「刑法が専門の甲南大学・園田寿名誉教授は仮装身分捜査について『(闇バイトに)一定の抑止効果が期待でき、国民の安心感にもつながる』と理解を示す一方で、『適用の範囲はあくまで限定的にし、歯止めをかける方法も法律で決めるべきだ』と指摘します」

長濱ねるさん(俳優・『news zero』火曜パートナー)
「募集をかけている犯行グループだけではなく、気軽に応募してしまっていた若者への抑止にもなるのではないかなと思いました。闇バイトに応募して抜けたくても抜けられなくなってしまっている若者を見ると、一回も足を踏み入れないことが大切かなと思います」

(12月17日『news zero』より)
最終更新日:2024年12月18日 10:54