打撃も…どうなる“関税”日米の交渉大詰め
日本からアメリカに輸出される自動車の関税が引き上げられるのか。交渉は大詰めを迎えている。日本の自動車産業に大打撃となる関税引き上げ。日本側は阻止できるのだろうか。
◆国内では“価格引き下げ”も?
首都圏に130店舗を展開する焼き肉チェーン店『牛繁』は、素材にこだわった牛肉がウリだという。店で扱う肉の半分以上はアメリカ産。
実は今後、日本とアメリカの貿易交渉の展開次第では価格が安くなるかもしれない。日本に輸入する際に課せられる関税が下がる可能性があるからだ。
牛繁ドリームシステム 飯野公敏商品部長「関税が下がるのであれば、ぜひその下がった分をお客様に還元したいと思っております」
◆“関税引き上げ検討”の背景は?
その日米両国の通商協議が日本時間の25日夜、アメリカ・ニューヨークで行われた。
茂木経済再生担当相「Good morning, Bob!」
アメリカ・ライトハイザー通商代表「How are you!オハヨウゴザイマス」
交渉の最大の焦点は、自動車。日本でつくる自動車の2割にあたる約174万台はアメリカに輸出されているが、トランプ政権は、関税を最大25%にまで引き上げることを検討しているのだ。
背景にあるのは、アメリカが抱える巨額の貿易赤字。トランプ大統領は11月の中間選挙を控え、具体的な成果を示そうとやっきになっている。
◆日本の経済界に“打撃”
こうした動きに日本の経済界は──
経団連 中西宏明会長「正直いってけしからん話。全然趣旨がよくわからなくて。明らかに、それによる日本経済への影響は非常に大きな項目の一つ」
仮に25%まで関税が引き上げられた場合、アメリカ国内での販売価格が上がることで売り上げが落ち込み、大手自動車メーカー6社だけで約1.9兆円もの打撃を受けるとの試算もある。(三菱UFJモルガン・スタンレー証券 試算)
自動車関連の企業も交渉の行方を見守っている。
輸出向け自動車部品などを作るメーカーの経営者は──
日研工業 出原直朗社長「私たちの製品は、やはり北米に輸出されるものも多いので、(関税が)25%ということになると(経営の)方向性を考えなくてはいけない」
そして、いつもチェックしているものがあるという。
日研工業 出原直朗社長「(Q:これは誰の?)トランプさんのTwitterです」
注目してウォッチしているのは、トランプ大統領のTwitterだった。
日研工業 出原直朗社長「非常にこの人(トランプ大統領)の Twitterが政治を左右するものになっているので、気になっています」
◆実際の交渉の行方は?
こうした中、日本政府内からは──
──日本が何もしないでアメリカに自動車の輸入制限をしないでくれというのは無理だ。(日本政府交渉筋)
果たして交渉の行方は。
日米閣僚級協議の終了後、茂木経済再生相は、成果が得られたことを明かした。
茂木経済再生担当相「両国の貿易を促進する方策、それについて、基本的な認識は一致した」
日本側は、アメリカが自動車への関税上乗せを発動しないことと引き替えに、アメリカ産牛肉など農産品の将来的な市場開放を念頭に、新たに2国間の貿易交渉を始めることを提案したものとみられる。日本側が最も恐れていた状況はひとまず回避する形。
日米両政府は、今後、詰めの調整を行った上で、27日の首脳会談で正式合意することを目指している。
◆◆◆政治部の高柳裕美記者が解説◆◆◆
◇大詰めの日米貿易協議
ここに至るまではなかなか厳しい交渉となった。アメリカの貿易赤字を示したデータを見ると、モノの取引に限った貿易赤字は7962億ドル。トップは中国で全体の47%にあたる。2位はメキシコ、3位の日本は8.6%だ。
◇日本は中国に比べると、だいぶ少ない
はい。ただ、すでに1位の中国と2位のメキシコはトランプ政権から激しい圧力を受けている。とくに中国は、アメリカから3回にわたって制裁関税を課せられている。
◇トランプ大統領が次に目を付けるのは日本?
はい。もしも制裁関税を課せられたら、一番深刻な打撃を受けるのは自動車関連。
自動車大手6社全体の年間の営業利益は、あわせて約4.3兆円。アメリカが日本からの自動車輸入品に25%の関税をかけた場合、約1.9兆円の負担が増えるという試算がある。これは営業利益の約44%に匹敵する額だ。
◇いよいよ日米首脳会談、見通しは…
首脳会談では、自動車への関税引き上げを発動しない代わりに、日米間の貿易を促進するための協定を結ぶことを目指して交渉を開始することで合意する見通し。
ただ、今後の交渉次第では、25%への関税引き上げを見送る代わりに、アメリカ側が「アメリカ産の農産物をより多く受け入れろ」という厳しい要求を突きつけてくる可能性もある。
しかし、安倍政権としては来年の夏に参議院選挙を控えている。自民党の総裁選で安倍首相を支持する全国の党員・党友票が思った以上に伸びなかった中で、さらに農家から反発を受けるのは避けたい考え。
これまでトランプ大統領との蜜月関係をアピールしてきた安倍首相。今後、日本の国益を守れるかどうか、外交手腕が問われることになる。