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“最速”の鳥 地球1周分の距離を渡る

2021年5月22日 22:11
“最速”の鳥 地球1周分の距離を渡る

夏に北海道などに飛来する渡り鳥「ハリオアマツバメ」。日本の研究チームが、これまで謎とされてきた渡りルートの追跡に成功しました。

■北海道とオーストラリアを行き来する鳥

「ハリオアマツバメ」は、細長い鎌形の翼を持つ体長20センチほどの鳥。名前に「ツバメ」とつきますが、実はツバメの仲間ではなく、ハチドリなどに近い種類です。夏に北日本で繁殖し、寒くなる頃には南半球へ渡って、冬を越すとされてきましたが、その移動の詳細は分かっていませんでした。酪農学園大学などで作る研究グループは今回、ハリオアマツバメが北海道とオーストラリア東部を往復していることをつき止め、その飛行ルートの追跡にも成功したと発表しました。

■小さなリュックサックで解明「8の字」ルート

ハリオアマツバメのような小さな渡り鳥の飛行を追跡することは、容易ではありません。今回それを可能にしたのは、重さが1グラムにも満たない小型の移動記録装置。鳥の体に取り付け、1年後に回収することで移動の記録をとることができるというものです。

研究チームでは、2015年からこうした装置を使って記録をとろうとしていましたが、飛行の途中で鳥の体から装置が外れてしまい、回収できないなど失敗が続きました。

今回は伸縮性のあるゴム紐を使って、装置をリュックサックのように背負わせたところ、初めて回収に成功したということです。装置には、明るさを感知するセンサーがついていて、その記録から日の出や日の入りの時間を算出。さらにそこから緯度や経度を割り出し、鳥のいた地点を推定していったということです。

その結果、北海道を出発したハリオアマツバメは、東アジアからオセアニアにかけて大きく8の字を描くように特殊なルートで飛んでいることが分かりました。総移動距離は1年間で約4万キロメートル。ちょうど地球を1周するほどの距離です。

■知られざる生態空中で暮らす種の保全へ一歩

飛ぶスピードが速く、水平飛行では、鳥類の中で最速レベルだというハリオアマツバメ。飛んでいる時間が非常に長いことでも知られています。空中で昆虫を捕まえて食べるなど、食事も含めて生活のほとんどを飛びながら行うため、その詳しい生態は謎とされてきました。そこに加わった、「8の字」飛行という新たな謎。

酪農学園大学の森さやか准教授は、「貿易風を追い風として利用するので、そのようなルートになるのでは」と推測。「今後、観察例を蓄積して気象条件と経路の解析を進めていく」としています。

謎が多く、個体数の把握すら難しいハリオアマツバメですが、近年は数が激減しているとみられています。研究グループでは、その生態の解明を通じて数の減少の要因を探り、種の保全につなげたいとしています。

写真:和賀大地さん撮影