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胡主席に抗議の声 中国人民主活動家の訴え

2011年1月31日 9:35

 今月、米中首脳会談がアメリカ・ワシントンで行われたが、焦点の一つだった人権問題で進展は見られなかった。ノーベル平和賞を受賞した劉暁波さんら多くの民主活動家を拘束し続けている中国。胡錦濤国家主席に抗議の声を上げた在米中国人を、ワシントン支局・平野亜由子記者が取材した。

 今や世界第2位の経済大国となった中国は、アメリカ製品の輸出倍増を目指すオバマ政権にとって重要な貿易相手国だ。18日、国賓としてアメリカに到着した胡主席は、破格の厚遇でもてなされた。

 「恥を知れ!中国!恥を知れ!胡錦濤!」-一方、ホワイトハウス周辺では胡主席のワシントン滞在中、大規模な抗議活動が行われた。劉さんをはじめ、今も多くの民主活動家を拘束している中国政府を批判し、人権状況の改善を求めた。その中には、アメリカに暮らす中国人民主活動家・楊建利さんの姿もあった。楊さんは、胡主席の訪米にあわせ、中国の人権状況改善を訴えるため、ワシントンを訪れた。胡主席のアメリカ到着数時間前に議会で行われた、中国の人権状況に関する記者会見で、楊さんは「中国はノーベル平和賞受賞者を拘束している唯一の国です」と述べ、劉さんをはじめ、今も拘束されている民主活動家の早期釈放を訴えた。

 アメリカ国内では、中国の人権状況改善を求める声が高まっている。19日、オバマ大統領と胡主席の会談が行われていた時、楊さんの姿は再び議会にあった。中国に強硬な議員が中心となり、人権状況などに関する公聴会が開かれ、楊さんは証言者として招かれたのだ。

 「中国政府は世界最大の規模です。その気になれば誰でも投獄できるし、“人を消す”こともできるのです」-中国で投獄された経験を持つ楊さんの生々しい証言に、共和党・スミス下院議員からは「(残忍な独裁体制を強いる)胡主席には、民主活動家らの拘束・拷問に責任がある」と怒りの声が上がった。

 首脳会談後の共同会見では、アメリカ人記者から「人権の抑圧などで人々の自由がこれほどまでに制限された国(=中国)と、どうしてアメリカは関係を深めるのか?」との質問が出た。これに対し、オバマ大統領は「中国は、我々とは異なる政治システムを持ち、発展のスピードも違う。私たちは人権問題について率直な意見交換ができる。たとえ、意見が異なっていたとしても」と述べた。しかし、胡主席は硬い表情で「中国はずっと人権の保護に尽くしている」と述べるにとどまり、立場の違いが浮き彫りになった。

 楊さんは「胡主席は(人権状況に関する)我々の声に耳を傾けるべきです。中国国民の声を抑圧することは、中国のためにならないことを理解してほしい」「たった一日で変化があるとは思っていません。中国政府に継続的な働きかけをすることは非常に重要です。長い間続けることによって効果があるはずです」と話す。

 経済面での連携強化を打ち出す一方で、埋まらなかった人権をめぐる隔たり。中国の人権状況改善に向け、楊さんら民主活動家の訴えは続く。