×

中朝首脳会談 金正恩氏の狙いは…?

2018年3月28日 19:43

北朝鮮の金正恩委員長が中国で習近平国家主席と初の首脳会談を行った。中国を電撃訪問した金正恩委員長の狙いは何かを解説する。

    ◇

改めて中朝首脳会談の映像を見ると、習近平国家主席と向き合って座った金委員長は少し緊張しているようにも見える。金委員長にとっては最高指導者になって初めての外国訪問だった。金委員長の横にいるのは李雪主夫人。習夫妻と握手を交わすシーンもあった。そして晩餐会では中国側の計らいで歌やピアノの演奏、バレエも披露されたそうだ。お互いにプレゼントも贈りあったそうで、何が贈られたのか気になるところだ。こうした豪華なもてなしに、金委員長らは笑顔で訪問を締めくくった。

北朝鮮の平壌から北京までは約1300キロ。直線距離にすると、青森から長崎までと同じくらいある。金委員長は特別列車で移動したが、警備は厳重で、情報も一切出ないまま訪問は終わった。

Q:金委員長の狙いはどこにあるのだろうか?

4月末に韓国と北朝鮮の首脳会談が、5月末までには史上初となるアメリカと北朝鮮の首脳会談が予定されている。この前に、中国と北朝鮮で首脳会談をしたい、もっと言えば、しとかなきゃいけないという中朝両者の思惑が一致したと言える。

どういうことかと言うと、中国と北朝鮮は北朝鮮の核開発をめぐって関係がとても冷え込んでいた。そこで、金委員長自ら北京にまで足を運んで、関係をよくする方向へかじを切った。中国と北朝鮮は仲が良いという前提でアメリカと会談すれば、「中国は北朝鮮を支持しているよ」と自分の立場を強くして会談に臨むことができる。

Q:交渉を有利に運べるということになる

その通り。さらに「保険」の意味合いもある。北朝鮮は、アメリカとの首脳会談が成功するか、まだ確信が持てない。だから会談が決裂した場合にアメリカが軍事行動に出ることを心配している。そうした場合に備えて、中国という大きな後ろ盾を保険に持っておくと安心だ、という思惑もあるわけだ。

北朝鮮情勢に詳しい拓殖大学大学院・武貞秀士特任教授はどう見ているのか聞いてみると、「金委員長は、中国、アメリカとバランスをとって交渉し、さらには韓国まで取り込む、練りに練った戦略で手玉にとろうとしている。これは、おじいさんである故・金日成主席が得意とし、当時、中国と旧ソ連の間で行った外交手法と同じだ」と指摘している。ただし、「中国はそれを見透かし、主導権を握るために金委員長を北京にまで来させた」というのが武貞さんの分析だった。

こうした駆け引きを続けながら北朝鮮は来月以降の韓国やアメリカとの首脳会談に向けて進んでいるわけだ。安倍首相は、来月訪米してトランプ大統領と会談する予定だが、日本が蚊帳の外に置かれてしまわないよう、外交も重要な局面に来ている。