【義足の元兵士】戦争で足を失い… ウクライナ人ランナー東京マラソン出場に込めた思い『every.特集』
今月3日に開催された東京マラソン。世界各国から集まった3万8000人の中にウクライナ人ランナーの姿が。義足で走る、元兵士のロマンさんとユーリさん。ロマンさんの目標は、自己ベストの5時間50分を切ること。
今回が初めてのフルマラソンとなるユーリさんと別れ、スピードをあげ…人の波をぬって前へ前へ。
ところが…12キロ付近で突然ストップ。走っているうちに義足がずれてしまったというのだ。切断した足に義足が食い込むことを防ぐための布を、素早く交換するとまた走り始めた。
先月、ウクライナ中部で黙々と走るロマンさん。負傷したのは、ロシア軍との戦闘だった。2014年のロシアによる一方的なクリミア併合以降、戦闘が続いていたウクライナで志願兵となったが…2019年、21歳のときに、地雷を踏み右足を切断。義足となった。
ロマンさん
「戦争だからこうなることも分かっていた。それでも誰かが祖国を守らなければいけない」
2022年に始まったロシアによる全面侵攻でも、「国を守りたい」という思いで義足をつけながら前線での戦闘に参加。全面侵攻以降、ロマンさんのように手足を失った人は、最大5万人と推計されている。
ロマンさん
「大けがをした人たちを励ましたかった。手足がなくても人生が終わるわけじゃない。どんなことでもできるんだと見せたかった」
負傷兵の治療やリハビリのための支援金を集めるチャリティー活動として、ロマンさんは去年、フルマラソンに初めて挑戦した。
一方、同じくロシア軍との戦闘で義足となったユーリさん、今回、ロマンさんとともに、東京マラソンにやってきた。
ユーリさん
「手足を失った人の痛みが私にはよく分かる。彼らのこれからの人生、モチベーションは本当に重要。障害とは私たちが受け入れることのできる挑戦」
次第にきつくなってくる後半。ロマンさんを勇気づけるのは、ウクライナ語で励ましてくれる日本人や、2人が走ることを知ってウクライナ国旗を持って応援にかけつけてくれた人たち。義足で一歩一歩。その姿はほかのランナーも勇気づける。
そして、37キロ付近で待っていたのは…ウクライナの応援団。今回の侵攻で日本に避難してきた人たちの姿も。
ウクライナから避難してきた少年(11)
「ウクライナのランナーをずっと待っていた 会えてうれしかった。いつか僕が走るときは今日のことを思い出すよ」
残り2キロ、義足の右足をかばいながら苦しそうな表情を浮かべるロマンさん。ウクライナの旗を背負い、最後の力を振り絞る。
そして…義足で走り抜いた42.195キロ。ロマンさんの第一声は…
ロマンさん
「楽勝だったよ!自己ベストだ!」
記録は4時間50分。自己ベストをなんと1時間も更新した。
ロマンさん
「自分がマラソンを走ることで負傷者を励ませたと思う」
一方のユーリさんは29キロ地点で制限時間をこえ、マラソンコースは走れなくなってしまったが、諦めずに沿道を走り続け、7時間以上かけてゴール付近までたどり着いた。
ユーリさん
「ウクライナ人は最後まで戦うということを見せたかった。多くの日本人がウクライナの国旗を持って応援してくれた。とても感動した」
終わりの見えない戦争。亡くなる人や手足を失う人はいまも増え続けている。2人が目指す未来は。
ユーリさん
「僕たちには国を立て直す必要がある。ウクライナが日本のように美しい国になってほしい」
ロマンさん
「ウクライナに帰ってからは、次のマラソンに備えてもっと頑張るよ」
※詳しくは動画をご覧ください。(2024年3月22日放送「news every.」より)