なぜ? 韓国で突然の“戒厳令” 一転、6時間で解除…軍は撤退
韓国の尹錫悦大統領は3日夜、「国政がマヒ状態にある」として、44年ぶりとなる「非常戒厳」を宣言しました。これに対し、韓国の国会が戒厳の解除を求め、一転して、4日朝になり解除が正式に決まりました。これまでの経緯を振り返ります。
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西山聡記者・NNNソウル
「すでに時刻は0時半を過ぎているのですが、国会の前には、国民に対して『前に集まるように』と呼びかける声が上がっています。実際かなりの数の人が集まっています」
4日未明、韓国・ソウルの国会議事堂前に集まった多くの国民が叫んでいたのは…
「戒厳令、撤廃しろ!」
この大混乱のきっかけは、3日夜に行われた尹錫悦大統領の宣言でした。
尹錫悦大統領(緊急談話、午後10時半ごろ)
「親愛なる国民の皆様。大統領として血を吐く気持ちで、国民の皆さんに訴えます。自由憲政秩序を守るために非常戒厳を宣布します」
突然の“戒厳令”。
国の非常事態だとして、憲法や法律の効力を一部停止し、行政と司法を軍隊の支配下にうつす命令を下したのです。今回宣言した「非常戒厳」は、軍の統制がより広範囲になるもの。44年ぶりに宣言されました。
しかし、なぜ…?
尹錫悦大統領
「(野党は)憲法と法で成り立つ正当な国家機関を撹乱(かくらん)させていて、これは内乱を企てる明白な反国家行為です」
尹大統領は、野党が政府高官らへの弾劾訴追を進めていることなどを挙げ、国政を麻痺(まひ)させているためとしています。
これにより警察が国会の入り口を封鎖。国会周辺には、宣言を受け発足した軍の「戒厳司令部」部隊が展開するも、国会への進入を阻止しようとする国民と、もみ合いになりました。
中には、軍の銃につかみかかる女性の姿も。
女性
「離して!」
上空からは軍のヘリコプターが、国会の敷地内へ着地。続々と軍が向かい、窓などから進入を試みます。
しかし、中では議員や職員でしょうか。人の壁を作り、机や椅子などでバリケードを作り、両手に消火器を持つ男性の姿も。なんとか食い止めようとしますが、軍が突入。その瞬間、消火器が噴射されたのか、辺りは真っ白になりました。
戒厳司令部は、国会や政党などの一切の政治活動を禁止し、メディアも戒厳司令部の統制を受けると発表しました。
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直後に最大野党の党首はYouTubeでこう訴えました。
最大野党「共に民主党」代表
「尹大統領による違法で違憲で反国民的な戒厳令宣布だ」
国民も…
国民
「尹大統領が独断でこんなことをするのはおかしい」
「当然止めなきゃいけないし、二度とあってはならない。とても悲しくて嘆かわしい」
韓国に大混乱を招いた、突然の“戒厳令”。
宣言から約2時間半後の午前1時過ぎ…
「出席議員190人全員賛成で、非常戒厳解除要求案が可決されました」
韓国の憲法では、「国会に在籍する過半数の賛成で戒厳の解除を要求した場合、大統領はこれを解除しなければならない」と定められています。今回の解除要求案には、野党だけでなく、与党からも18人が賛成したといいます。
議長が「戒厳の無効」を発表したことを受け、国会から軍が撤退。建物の中は消火器の粉にまみれ、ドアには穴が。消火用ホースもこぼれ落ちていましたが、騒動はひとまず終わりを迎えました。
そして、4日午前4時半ごろ。尹大統領は会見で…
尹錫悦大統領
「国会の要求を受け入れ、戒厳を解除します」
44年ぶりに出された韓国の戒厳令は、わずか6時間で解除されました。
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夜が明けたソウル市内の繁華街は、普段と変わらぬ様子を見せていました。市民の中には、騒動を知らないという人も。
市民(韓国・ソウル、4日午前)
「朝起きると世の中が1回変わって、また戻っていた。国民として恥ずかしいです」
市民
「あまりにも突然でよく分かりません」
正午から国会前では、尹大統領の辞任を求める集会が開かれました。
野党側
「尹錫悦は正気ではない。判断力と状況認識も正常ではない」
野党側は、尹大統領を、国家の秩序を乱したとして、内乱罪で告発するとしています。
与党からも…
与党「国民の力」代表
「この状況について、与党としても国民に申し訳なく思う。大統領はこの惨たんたる状況について直接説明しなければならない」
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こうした中、野党は4日午後、尹大統領の弾劾訴追案を国会に提出。早ければ、6日(金)にも採決することを目指すということです。