“海洋プラごみ問題”国内外で対策始まる
ペットボトルなどのプラスチックごみが海を漂流し、海洋生物に影響を与えていることは、新たな環境問題として国際的にクローズアップされている。深刻な被害も確認される中、解決に向けた対策も徐々に始まっている。
先週の横浜港で、合図とともに始まったヨットレース。日本から約3000キロのパラオ共和国を目指す。このレースにあわせ、伴走船の「みらいへ」ではある取り組みが行われる。
大会前、取材班が案内されたのは「みらいへ」の船内。
山口眞穂記者「船のエンジンルームに装置をつけて、海の小さなプラスチックごみを採取します」
海洋研究開発機構(JAMSTEC)が設置したこの装置は、船のエンジンを冷やすための海水を一部、装置に取り込み、フィルターに通してプラスチックごみを採取する。
毎年800万トンが海に流れ込んでいるといわれるプラスチックごみ。紫外線や波により、5ミリ以下になったものが「マイクロプラスチック」と呼ばれている。
海洋研究開発機構・阪口秀理事「私たちは、実は数%しか把握できていなくて、残りの九十数%のプラスチック、分解されたマイクロプラスチックがどこにいってしまったのかということに関して、全く科学的な答えがない」
全体像がいまだわからないマイクロプラスチック。海洋生物に深刻な被害をもたらしている。
親とはぐれ、タイで保護された絶滅危惧種・ジュゴンの赤ちゃん。「マリアム」と名づけられ人気を集めていたが、去年8月、命を落とした。原因は、体内にたまったプラスチックごみによる感染症だった。
チュラロンコン大学・シャンスー准教授「ジュゴンが食べるプラスチックごみは、海草に紛れ込むような小さなもの。海草の一部と思って食べてしまう」
獣医学水生動物研究センターでは、マイクロプラスチックによる海洋生物への影響を調べている。
獣医学水生動物研究センター・チャワニット准教授「最近では魚などの海洋生物を検査すると、90%を超える生物の体内から(微量の)マイクロプラスチックが見つかる」
マイクロプラスチックの大量摂取は成長を遅らせたり、臓器に腫瘍ができたりする恐れがあるとわかったという。魚を食べる人間への影響はあるのだろうか。
チャワニット准教授「現時点ではマイクロプラスチックが人間に与える影響はわかっていない」「影響を確認するためには約10年かかる」
プラスチックごみの主な発生源の一つ、タイでは、対策も始まっている。
杉道生記者「プラスチックごみが海に流れ出すのを防ぐため、タイでは川にフェンスを設置する取り組みが始まっています」
フェンスは現在、海へつながる川の700か所に設置。豊かな海を次世代に残すためにも、待ったなしの対策が世界的に求められている。