NYダンサー コロナ苦悩も1年ぶり再出発
去年、新型コロナウイルスの感染拡大の「震源地」の一つとなったニューヨーク。多くの劇場が閉鎖を余儀なくされる中、ダンサーたちが「新しい形」でのパフォーマンスに動き出しました。
感染拡大から一年がたつニューヨーク。
記者「こちらの劇場では、一年間、公演を行うことができていません。前の広場では、感染拡大から1年を追悼するためろうそくに火が灯されています」
劇場は今も閉鎖が続き、ニューヨーク州では、この一年で芸術やエンターテインメント分野で、66%の雇用が失われました。ニューヨークで暮らすトップダンサーのダニエラ・フニチェロさん(27)も苦しむ一人。
去年3月時点で、35以上の公演が予定されていた売れっ子でしたが…
ダニエラさん「これはスイスの公演で着るはずだった衣装です」
海外公演を含めて全てキャンセルとなりました。この一年、失業給付金を受けながら暮らしてきたダニエラさん。さらに、今年1月には…
ダニエラさん「妹と妹の夫と娘がみんな感染していました」
一番身近な存在である妹一家も新型ウイルスに感染。不安を抱える日々を過ごしてきました。
ダニエラさん「安全のためにダンスをやめることは必要だと分かっていましたが、仕事ができなくなるのは、つらく悲しいことでした」
この日、ダニエラさんは慣れ親しんだ劇場へ。足を踏み入れるのは一年以上ぶりです。
ダニエラさん「感情的になってしまうわ。この劇場にはたくさんの幸せな思い出があります」
舞台の裏に行くと…
ダニエラさん「この場所はいつもなら、ダンサーや歌手、俳優がたくさんいて、急いで着替えて舞台に走って行くけど、今は本当に静かで空っぽね」
かつての活気はそこにはありません。
ダニエラさん「観客席が埋まり、自分が愛するダンスという仕事に戻れる日が待ち遠しいです。ゆっくりですが、その日は来るはずです」
2月、そんなダニエラさんに転機が訪れました。
ニューヨーク市・デブラシオ市長「文化が最も素晴らしい“舞台”に戻ってきます。ニューヨークの“路上”にです」
ニューヨーク市は、路上でのパフォーマンスを支援することを発表。ダニエラさんも、会見の場で踊りを披露しました。
次は、念願の観客を迎えての舞台。そのために向かったのは郊外の施設です。
検温に、二重マスク。講師とはオンラインでつなぎ…徹底した対策をとった上での集団練習。今までとは違ったスタイルで再出発したのです。そして、今月12日。
ダニエラさん「これが今夜の衣装です」
一年ぶりに観客の前で踊る日を迎えました。開始前、仲間と円陣を組んで、本番に臨みます。会場となったのは、中心地の五番街に面した公園。道行く人が足を止め、見入ります。
観客「ニューヨーカーはみんなずっとこの生パフォーマンスを待ち焦がれていました」
ダニエラさん「久しぶりに拍手や歓声を聞くことができました。ニューヨークは強いんです。丸1年になりますがこれからも戦い続け、強くあります」