イスラエルとヒズボラ「停戦合意」……裏にトランプ氏の存在、バイデン大統領との“共同作業”か 「ハマスの孤立」でガザの今後は
レバノンのイスラム教シーア派組織「ヒズボラ」とイスラエルが、停戦で合意しました。バイデン大統領の任期が残り少なくなってきた中、背景に何があったのでしょうか。ヒズボラと共闘してきたハマスが実効支配するガザ地区の今後を考えます。
「イスラエルをめぐっては南側でガザ地区のハマス、北側でレバノンのヒズボラ、両方と戦闘を続けてきましたが、今回ヒズボラ側との停戦で合意。仲介したバイデン大統領としては残りの任期が2か月を切る中、大きな動きがあったと言っていい状況ですね」
小栗泉・日本テレビ解説委員長
「確かに、バイデン大統領にとってはトランプ次期大統領への移行期で自らの影響力も失われている中、この中東の停戦は最後の功績として何とかやり遂げたいという思いは強かったようです」
小栗委員長
「一方でアメリカ政治に詳しい明海大学の小谷哲男教授によると、この停戦合意の裏にはある人物の存在があったと指摘しています。それはトランプ氏です」
「小谷教授によると、予測不能なトランプ政権とは事を構えたくない、できることならトランプ氏が大統領に就任する前に停戦合意にこぎ着けたいという“トランプ圧力”がヒズボラ側に生まれていたといいます」
「そうした機運を利用して、イスラエル側がヒズボラと停戦合意していいかとトランプ氏に確認。それも来年1月20日のトランプ政権誕生の前に合意しても構わないかと聞いて、トランプ氏の答えはOKだったということです」
藤井キャスター
「ただこういう状況を知らない人にとってはバイデン大統領の成果に見えてしまうのではないでしょうか?」
小栗委員長
「トランプ氏は自分の影響力でこうした環境が整ったということが知られれば自分の手柄にもなるし、まだガザの問題も残っているから良いとしたのだろう、と小谷教授はみています」
「そしてイスラエルのネタニヤフ首相がトランプ氏にお伺いを立てているという動きはバイデン大統領もおそらく知っていて、トランプ氏とバイデン大統領の双方の利益が一致した共同作業の結果、停戦合意に至ったということです」
藤井キャスター
「イスラエル側が停戦したかった理由はどこにあるのでしょうか?」
小栗委員長
「中東情勢に詳しい東京大学中東地域研究センターの鈴木啓之特任准教授に聞きました。ガザを抱えているがレバノンにも対処しないといけないことが、ネタニヤフ首相には負担になっていたのだろう、とみています」
「それだけにヒズボラに壊滅的なダメージを与えた今、ぐっと部隊を引いてガザに注力したいという考えがあるのではないか、と鈴木特任准教授は指摘しています」
藤井キャスター
「今後、ガザはどうなっていくのでしょうか?」
小栗委員長
「注目は、ネタニヤフ首相が停戦に応じる理由の1つに挙げていた『ハマスの孤立』です。これまでヒズボラは、ハマスと一緒にイスラエルに対抗してきましたが、今回の停戦でハマスが孤立することになり、交渉の場に引っ張り出しやすくなるとの見方があります」
「ただ、ネタニヤフ首相はハマスへの圧力を強める姿勢も示しています。かえってガザの戦闘が激化してしまうのではないか、という見方もあります」
「鈴木特任准教授は、今後どちらにも転ぶ可能性があり、軍事的な圧力をかけつつ人質解放の交渉をする、その両方を強化していくのではと指摘しています」
藤井キャスター
「今回は就任する前のトランプ氏の存在が停戦の道筋をつけたことになりますが、来年1月の実際の就任までに、次期大統領の抑止力が戦闘を止めることにつながるのか。少しずつ、世界の状況に変化が生まれ始めています」
(11月27日『news zero』より)