摘発瞬間映像も…ベラルーシ、拘束された日本人男性に関する「特別番組」を放送 深まるナゾ
ベラルーシの国営テレビが拘束された日本人男性に関する特別番組を放送しました。番組では、スパイ活動が行われるなかで、別の日本人も関わっていると報じるなど、ナゾはさらに深まっています。
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ベラルーシ当局によって拘束された日本人男性。
拘束された日本人男性(国営テレビ『ベラルーシ1』より)
「私の名前は中西雅敏です」
疑われているのは、ベラルーシでの“スパイ活動”です。
国営テレビは5日、予告されていた特別番組「東京から来たサムライの失敗」を放送。新たな情報が報じられました。
番組は“衝撃的”な映像からスタート。止まっていたワゴン車に近づいた複数の男性。その手には1人の人物。両手両足を抱え、車両へと押し込んでいくのです。
(国営テレビ『ベラルーシ1』より)
「身体を拘束されている理由は、毒薬などを使うことを阻止するため。この拘束の仕方は秘密警察の伝統的な方法だ」
映像は、ベラルーシの情報機関KGBが中西雅敏さんとみられる人物を連行する様子とみられます。その後は、手錠を後ろ手にかけられている中西さんの姿。警棒を携えた当局職員とともに、施設の階段や廊下を歩く映像が放送されました。
ベラルーシのゴメリ国立大学で日本語教師として教壇に立っていたという中西さん。3年前にはベラルーシの国営メディアに登場。
中西雅敏さん(2021年、国営テレビ『ベラルーシ4』より)
「ベラルーシの人々が、日本のような遠い国の文化に興味を持ってくれることを、とてもうれしく思います」
しかし、今年7月、“スパイ”として拘束されることに…。
ウクライナ侵攻を続けるロシアの同盟国・ベラルーシ。今回の番組では、中西さんが日本の情報機関に協力し、ウクライナとの国境で情報収集を行っていたと説明。軍事施設などを含む9000枚以上の写真を撮影するなどしていたと報じています。
番組内で 中西さんは…
中西雅敏さん
「国家公安委員会へ写真を渡すつもりだった。ウクライナとの国境まで行き、橋などたくさん写真を撮りました」
──犯罪だと理解しているか
中西雅敏さん
「はい」
──同意するか?
中西雅敏さん
「はい」
──罪を犯した?
中西雅敏さん
「はい、犯罪だと理解しています」
調べに対し、罪を認める発言。ただ、一連の撮影は、当局の管理下で行われたとみられます。
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“サムライの失敗”と銘打たれた、今回の“スパイ報道”。しかし、放送を細かく見ると浮かび上がるのがいくつかの“疑問”。その1つが…
(国営テレビ『ベラルーシ1』より)
「(中西さんは)日本の情報機関の代表者から助言を受けていた」
番組が主張する中西さんが連絡を取り合っていた日本の情報機関関係者。“表の顔”は長野県の会社経営者という男性に、私たちは話を聞くことができました。
──警察・日本の情報機関に関係ありますか?
中西さんと連絡とる知人男性
「いや、全くないです。普通の会社の代表取締役」
──スパイの容疑
中西さんと連絡とる知人男性
「そんなことはまずなくて(中西さんは)日本語との交流を一生懸命やっていた」
男性は、中西さんの知人ではあるものの、報道は“でまかせ”と説明。
中西さんと連絡とる知人男性
「おかしな話。なんじゃこりゃですよ」
さらに放送では、男性とのやり取りも“証拠”として報じていますが、その内容こそ2つ目の疑問。まず日本語のメッセージを見ると…
中西さんが男性に送ったメッセージ
「中国のパワーはすごいものがありますね」「ベラルーシ進出はかなり厳しいのが実情です」
企業進出に関するやり取りと思えますが、番組では、同じメッセージをロシア語で…
(ロシア語訳)
「この前の攻撃はアメリカによる偽装のようだ」「尾行されている気がした。防犯カメラに監視されているかも」
かみ合わない翻訳─。番組ではそのほか、中西さんが国境への旅行を繰り返していた証拠として、大量の鉄道切符。無制限に使える口座を情報機関から用意されていた、などと説明しています。
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専門家は今回の報道について…
慶応義塾大学 廣瀬陽子教授
「中西さんを生きた状態で、交渉材料として利用したり、捕虜の材料として利用することがベラルーシとロシアにとっても有用であると思う。殺す可能性はまずないのでは」
林官房長官は、番組の放送後、「直ちにベラルーシ外務省に対して抗議した」と明らかにしました。政府はできる限りの支援を行っていくとしています。