【独自解説】肌の露出・欧米主義に厳しい北朝鮮で今“シースルー素材”が大流行⁉そこには“ファッションアイコン”の存在が…専門家指摘「ファッションリーダーという構図を作るための“サクラ”」
今、北朝鮮・平壌の上流層の子どもたちの間で流行しているという“シースルー素材”。2024年5月30日頃から公開され始めた写真や映像には、袖部分がシースルーになった服を着た女の子が続々登場、その流行ぶりが報じられました。そこには、カリスマ的“ファッションリーダー”の存在が?『朝日新聞』元ソウル支局長・牧野愛博氏の解説です。
北朝鮮といえば、過度の肌の露出や欧米スタイルを嫌い、一般市民の服装に保守的とされています。街では当局による取り締まりも行われていて、膝下丈のパンツにサンダルを履いていた女性に対し、「ふくらはぎがかなり露出した短いズボンを履き、サンダルを履いたまま街に出たことは問題。彼女が腐りきった西洋文化にどっぷりと染まっていることを如実に示している」として、顔や名前・住所を公開。また、2024年3月に海外の園芸番組を放送した際には、出演者の履いていたジーンズが“欧米帝国主義のシンボル”だとしてモザイク処理で隠していました。
そんな厳しい規制の中、流行が報じられたシースルー素材。そこには、金ファミリーの“ファッションリーダー化”の思惑が見え隠れすると指摘されています。
2024年5月14日、首都・平壌に新たに建設された住宅街の竣工式に参加したのは、金正恩総書記と“娘”ジュエ氏。その際、ジュエ氏が着ていたのは、紺色のブラウスに黒のパンツ。風に揺れる袖の部分は、肌が透けて見える“シースルー素材”でした。
米・政府系メディア『ラジオ自由アジア』は専門家の話として、「シースルーは韓国や西洋国家の成人女性が主に着る服」と報道。「北朝鮮では見かけない服装」としつつも、これが今、市民の間で広まり流行しているというのです。
これまでも度々話題になってきたジュエ氏のファッション。初めてその姿が公開された2022年11月には、ポニーテールに白いコートとかわいらしい服装でした。
しかし、その3か月後には、ジャケットにブラウスを合わせた正装で、『朝鮮人民軍』のパーティーに出席。高官らしき人たちが周りに立つ中、“特別待遇”を受けていました。
最高指導者・金総書記の娘として、あるときはフランスの高級ブランド『ディオール』のものとみられる約30万円のコートを着用。
また、あるときは、茶色いファーが付いた革のコートにサングラスの“親子ペアルック”姿で空軍を視察。
幼くして、その装いで“風格”を見せる一方、親しみやすいファッションも。2023年4月、視察の時に着ていたのは、両胸のポケットとプリーツが特徴的なデザインのブラウス。米・メディアによると、これはオンラインで販売されている中国製とみられ、値段も約2500円とリーズナブル。
『ハイブランド』から『ファストファッション』まで、様々な装いを見せるジュエ氏。『ラジオ自由アジア』によると、金一族であるジュエ氏は、当局が準備したものではなく自らが自由に選んだ服を着用しているということです。
当局の規制が厳しいだけに、驚きを与えたというジュエ氏の“シースルー・ルック”。北朝鮮に詳しい専門家は、「ジュエ氏のスタイルなどが北朝鮮住民に衝撃を与え、北朝鮮で服装が変化する流れになるかもしれない」としています。公に姿を見せてから、1年半あまり―既に北朝鮮の“ファッションアイコン”になるほど注目を浴びていると言うジュエ氏の影響力と、そのウラに隠された北朝鮮の思惑とは?
Q.これまでの北朝鮮なら、ジュエ氏が着ているからといって子どもたちは着てはいけないですよね?
(『朝日新聞』元ソウル支局長・牧野愛博氏)
「これはサクラです。普通の親は、自分の子どもが他の人より目立つことに非常に恐怖感を覚えますから、そういうことはさせません。『ジュエ氏がファッションリーダーだ』という構図を作るために、一部の人間に着せているんでしょう。シースルーは2023年ぐらいから欧米で流行っていますけど、ジュエ氏の母リ・ソルジュ氏が一度ノースリーブの服で出てきたことがあるので、『袖部分がシースルーのファッションぐらいなら良いだろう』ということでジュエ氏が着て、それを皆で広めようとしています」
また、2023年12月『労働新聞』に掲載された“サングラス姿”ですが、牧野氏によると「このサングラス姿こそ『反動思想文化排撃法』違反!一般国民なら厳罰」ということです。
Q.一般国民はサングラスをかけてはダメなのですか?
(牧野氏)
「全くダメということはなく、身体的な問題や特定の職務に就いているなど理由がある場合は良いですが、“若い女性がサングラスをかけて何も言われない”という国ではないです」
2024年6月、中央委員会総会で党の重要幹部の人事が発表され、北朝鮮国内の思想統制などを担当する『勤労団体部長』に女性が登用されました。党部長の女性登用は、金総書記の父・金正日氏の妹など非常に珍しい事例です。韓国の専門家は、「今後、ジュエ氏の立場強化に役立つための布石として、“女性も要職を就ける”という雰囲気を作っている」と分析しています。
Q.『ジュエ氏を要職に就けるために前例を作る』という意味なんでしょうか?
(牧野氏)
「そういうことなんでしょうけど、ものすごく焦りを感じます。ジュエ氏はまだ12歳前後なのに、こんなに早くから準備をすること自体が、焦っている証拠だと思います」
(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年7月4日放送)