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【歯周病】気づかず進行…体内に影響も!? 歯科医が進める治療と予防策は『every.特集』

2023年11月11日 16:00
【歯周病】気づかず進行…体内に影響も!? 歯科医が進める治療と予防策は『every.特集』

東京都内の歯科医院では、コロナ禍で受診を控えていた人が再び訪れるようになっていた。歯を磨くたび血が出るようになったという若葉りなさん。歯茎が腫れ炎症を起こしていた。診断の結果、初期から中期の歯周病とのことだった。歯と歯茎のすき間、いわゆる歯周ポケットの深さを計り4ミリ以上の深さがあると歯周病と診断される。歯周病専門医の若林医師によると、コロナ禍で歯科にかかるのを控えた結果、気づかぬうちに歯周病が進行している人が増えているという。

実は、歯周病は虫歯とは全く違うもの。虫歯はミュータンス菌という細菌が歯の表面を溶かし穴を空けるなど痛みを伴う。一方、歯周病は歯周病菌が原因。この菌は空気を嫌うため、歯と歯茎の間に潜っていく。この時点で痛みはないが、やがて歯茎で炎症を起こし出血。さらに歯茎の中に歯石ができると菌が増殖する。放っておくと歯を支える骨を壊してしまい、歯を失うこともある怖い病気だ。

口の中の環境に詳しい東京歯科大学の上田貴之教授は「虫歯が減ってきたことで歯科医院に通わなくなった方が結構多く、歯周病で歯を失ってしまう。中年期高齢期は虫歯の予防も大切だが歯周病の予防にシフトしていかなければいけない」と話す。

では、歯周病になってしまったらどうすればよいのか。まずは、歯科医院で自分では取れない歯茎の中などの歯石をとりのぞくこと。次に、歯周病を意識して歯を磨くことが重要だという。

歯周病専門医の指導を受けた若葉さんに歯磨きのケアなどを見せてもらった。以前は力を入れて磨いていたが、現在は歯と歯茎の間を意識し、一本一本優しく磨くように。そして、デンタルフロスで隙間にたまった食べかすなどを取り除くようにしていた。「細かく力を入れずに磨く。先生に言われた通りやって3日後くらいに変わってきた」という。

口の中の環境をよくすることも予防につながる。まずはマウスウォッシュ。普通の歯磨きだけでは、とりにくい汚れを洗い流す。さらにもうひとつ。口の中に有効な菌を取りいれること。専門医の若林医師は「乳酸菌のロイテリ菌(タブレット)を歯磨きとか終わった後になめる。虫歯菌とか歯周病菌の働きを抑えて菌を減らす」と話す。若林医師が予防指導に使っているロイテリ菌は乳酸菌の一種。歯科医院のほか、ドラッグストアなどでも手に入る。1日に1回タブレットを口に含み、ゆっくり溶かしていくことで効果が得られるそう。

ただ、医師によると歯磨きなどの口くうケアも忘れずに行ってほしいといいます。進行すると歯を失う可能性もある歯周病。実は歯だけの問題では無いという。「脳梗塞、心筋梗塞とか糖尿病にもなりやすい。全身の疾患の引き金に歯周病はなっている」と話す若林医師。歯周病菌が歯茎に炎症を起こし、そこから血液に乗って体内を巡ることで、他の場所でも炎症を引き起こし、悪影響をおよぼす可能性があるという。

日本歯周病学会などによると、炎症でできた毒素が血糖値を安定させるインスリンの働きを邪魔して、
より糖尿病を悪化させることが多くの研究でわかってきた。さらに、糖尿病の悪化により免疫力が低下し歯周病も悪化しやすくなるという。

そこで、歯周病と糖尿病を一緒に予防しようという取り組みが7年ほど前からはじまっている。日本歯科衛生士会が設けているのが「糖尿病予防指導 認定歯科衛生士」そのうちの1人、八木下和恵さんは住友商事の歯科診療所で歯の健康指導とあわせ糖尿病予防の指導を社員全員に行っている。「キノコ類とか食物繊維の多いサツマイモなどなるべく30回かめるようなメニューを選び、よくかんで唾液を多く出すと食べかすが口に残りにくく歯はきれいに保たれる」という。また、よくかんでゆっくり食べると糖質の吸収がおだやかになり血糖値が上がりにくくなることで糖尿病の予防にもつながるそう。40代を超えたら虫歯予防だけではなく、歯周病を意識した「口くうケア」も大切。自分で行うセルフケアとともに歯石を取ることも欠かせないので、定期的に歯科検診を受けてほしいと医師たちは話している。

※詳しくは動画をご覧ください。(2023年11月10日放送「news every.」より)

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