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81歳ママが作る愛され名物「どてスパ」に別れ 老舗喫茶店が50年の歴史に幕 愛知・名古屋市

2024年7月2日 19:13
81歳ママが作る愛され名物「どてスパ」に別れ 老舗喫茶店が50年の歴史に幕 愛知・名古屋市
愛され名物「どてスパ」

地元で愛された老舗の喫茶店が閉店することになり、ここでしか味わえない名物メニューとも、別れのときがやってきました。あの味が、もう食べられないなんて…。

常連にあの有名人も! 老舗喫茶店の愛され名物「どてスパ」

名古屋市名東区にある「喫茶 亀」。約50年もの間、地元の人たちから親しまれてきた老舗喫茶店です。お店を切り盛りするのは柴田良子(よしこ)さん、81歳。喫茶店としてはユニークな「亀」という名前は、「鶴は千年、亀は万年」と昔からめでたいものの象徴であることや、ご主人の父親が「亀之介」、そして子ども達にも覚えやすいという理由で名付けたそうです。

午前8時に始まるモーニングの時間は、高齢者の常連客で静かな時が流れます。ところが、午前11時からのランチタイムに突入すると店内は大賑わい。パラパラのチャーハンに、熱々鉄板のハンバーグなど、次々と注文が入りますが、とにかく全てがボリューム満点です!

男性客に大人気なのは、味噌かつやから揚げなど、毎日いろいろなバリエーションが楽しめる日替わりのランチ。一方、女性客に人気のメニューは、名古屋めしの定番「鉄板スパゲティ」。玉ねぎ、ピーマン、ウインナーなどを炒めてケチャップをからめたら、熱々の鉄板に移し卵を流し込んで、できあがり! シンプルだからこそクセになる味で、リピーターも続出!

実は、アコーディオンをポピュラーミュージックの世界で開花させたcobaさんも、この「鉄板スパゲティ」のファン。近所に住んでいたため、中学・高校生時代は頻繁にお店に通うほどハマっていたそうです。店内にはcobaさんのサイン色紙が飾られています。

常連客の心をつかんで離さない、数々の絶品メニューがある「喫茶 亀」。その中でも特に人気なのが、名古屋名物の「鉄板スパゲティ」と「どて煮」の2つがコラボした「どてスパ」。野菜やめんを炒めたら、鉄板に移して卵をぐるりと流し入れ、仕上げに自家製の「どて煮」をたっぷりかければ出来上がり! ここだけの逸品です。

「どて煮」といえば“ホルモン”や“牛すじ肉”で作るのが定番ですが、こちらでは“牛すね肉”を使っています。煮込めば煮込むほど柔らかくなるのが特徴なんだとか。大根やコンニャクなどの具材に、唐辛子を丸ごと一本投入! しょうゆなど調味料に赤味噌を加えたら、頃合いを見計らって茹でた牛すね肉を入れ、弱火でコトコト3時間ほど煮込めば完成です!

夫婦が二人三脚で歩み続けた約50年 閉店を決意した理由は…?

ご主人と結婚した58年前。良子さんは、ひょんなことから住宅展示場の喫茶店で働くことに。そこでやりがいを感じ、ご主人の後押しもあって32歳で「喫茶 亀」を開業しました。

ウマくて大盛、しかも安いと評判になり、お店は大盛況。大忙しの良子さんを見かねて、ご主人は仕事を辞めてマスターになり、以来、二人三脚でやって来ました。お店自慢のどて煮は、ご主人の一成(かずなり)さんが他のお店を食べ歩き、試行錯誤して作り上げました。お客さんだけではなく、良子さんにも思い出深い一品です。

どんなに忙しくてもしんどいと思わなかったと、良子さんは当時を振り返ります。

ところが、今年5月末で約50年の歴史に幕を下ろすことになったのです。

店主・柴田良子さん:
「最後まで一緒にやろうねって言ってたんだけどね。本当にそれだけは悔いが残ってしまう」

二人三脚で営んできた喫茶店。4月にご主人を亡くし、さらに建物や調理器具などもかなり老朽化していたことから、良子さんは潮時と考えたのです。

閉店を決意した良子さんは、50年の思いを綴った手書きのメッセージを、店の扉に貼り出しました。

さみしいけど…ありがとう 最終日も後を絶たない常連客

最後の日。午前6時をすぎると、いつも通り良子さんがコーヒーを入れはじめました。そこへ朝一番でやってきたのは、40年来の常連客。すると何かを取り出し、脚立を使って飾りつけを始めます。

壁に飾られたのは「50年間ありがとうございました」というメッセージ。良子さんの労をねぎらう感謝の気持ちです。

開店早々、どうしても「どてスパ」を食べたいと、わざわざ有休を取ってやってきた常連の夫婦が来店しました。モーニングタイムですが、余裕があるときはリクエストに応えるのが良子さんのモットー。最後の「どてスパ」を堪能した後は、ちゃっかり「どて煮」もテイクアウト。

午前11時、カウンターの上には良子さん自慢の料理がすらりと勢ぞろい。感謝の気持ちを込めて、この日は食べ放題。コーヒーがついて、なんと破格の800円です! もちろんお店の看板メニュー「どてスパ」もあります。

正午を回ると店内には長蛇の列が! 常連客は口々に「もう最後やね、これは」「どてスパ食えんくなるで」といい、最後の「どてスパ」を思う存分楽しんでいました。

親子二代で「どてスパ」好きという常連客も、「本当に寂しいです。(良子さんは)すごい気さくで、よくしてくださっています、いつも」と話し、思い出の味をかみしめます。

大学生時代に毎日通っていたという男性は、この日のために休みを取って、富山県からわざわざやって来たといいます。「名古屋のおふくろの味と言ったら、ここですね」と話し、「どてスパ」を食べ納め。お店の人がパックを取り出して、おかずを詰めて手渡します。名古屋のおふくろの味を持って、この後、車で約4時間かけて富山県へと帰っていきました。

午後4時でランチバイキングが終了した後は、ご近所の常連客が集まり「お別れの会」を開催。

そして、ついに約50年の思い出が詰まったお店に別れを告げるときが訪れました…。

店主・柴田良子さん:
「もうほっとしました。やり切ったって感じ。感無量です。お客さんのおかげって言った方がいいかもしれないね。そう、お客さんのおかげかもしれない」

「喫茶 亀」は閉店しましたが、ずっと愛されてきた看板メニュー「どてスパ」の味は、いつまでもみなさんの心に残り続けるでしょう。

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