2024年、7年ぶりにアジアゾウがやってきた福岡市動物園。受け入れに奔走した飼育員の男性は、幼い頃からゾウに魅せられた一人です。ゾウと写真におさまれば…思い出から生まれる物語があります。

1月9日、バスから次々と降りてきたのは、福岡県みやま市からやってきたおよそ35人の中学1年生です。普段は見られない動物の魅力を学ぶため、授業の一環で福岡市動物園を訪れました。

■生徒たち
「おる、おる！」
「おった！」
「初めて見た！初めて見た！」

生徒たちが夢中になって見つめていたのはアジアゾウです。

■初めてゾウを見た中学1年生
「意外とゆっくりだし、私たちに寄って来てくれたのもうれしかったし、かわいいなと。」

生徒の半数以上は、ゾウを見るのはこの日が初めてです。迫力がありながらも愛らしい姿に笑顔があふれます。

2024年7月30日、4000キロほど離れたミャンマーから福岡市動物園まで、遠路はるばる28時間かけて、7年ぶりにアジアゾウ4頭がやってきました。

その受け入れに奔走したのは、2024年春に新たに編成された「ゾウ班」のリーダー、飼育員の白濱祥平さん（32）です。

■福岡市動物園 ゾウ班 リーダー・白濱祥平さん（32）
「ゾウさんが7年ぶりに来て、こういった姿を見せられることができて、動物園としてもとてもうれしく思います。」

愛媛県の動物園でも2年半ほどゾウを担当した経験がある白濱さん。ゾウへの熱い思いを買われ、リーダーに選ばれました。

その原点を表す一枚の写真。笑顔で映っているのは、3歳の白濱さんです。後ろには、福岡市動物園の人気者だったアジアゾウの「はな子」、そして「おふく」の姿がありました。

■白濱さん
「大学の時にも一度、動物園に来た時があるんですけど、その時にも、はな子はまだ生きていたので。長く生きる動物なので、心にも残るのかなというのはあります。」

「はな子」は40年以上、福岡市動物園のシンボルとして愛され続けましたが、2017年に天国へ。それ以来およそ7年間、福岡市動物園にはゾウがいない状態が続いていました。

待望のゾウの到着から4か月、ついに全面公開を迎えました。

■子どもたち
「ゾウさーん！」
「ゾウさん、こっちだよー！」

4頭の名前は公募で決まりました。おだやかな14歳のオスは「あお」。子ども思いの22歳の母親ゾウは「ゆずは」。好奇心旺盛な3歳の子ゾウは「わかば」。公開前に12歳で急死したメスのゾウにも、「すい」という名前が付けられました。

この間、飼育員としてゾウたちを間近で見てきた白濱さんならではの話に、多くの人が耳を傾けます。

■白濱さん
「お母さんの『ゆずは』は鼻先で物をつかむのがとても得意なのですが、『わかば』はまだそれができなくて、巻きつけて食べています。」

母親ゾウの「ゆずは」は、鼻先で上手にエサをつかんで食べることができます。これに対して、子ゾウの「わかば」はまだ鼻先をうまく使えず、鼻で集めたエサを巻きつけて口に運ぶのだそうです。

■白濱さん
「ゾウたちのいとおしい姿とか見られて、きょう本当、全面公開をやっと迎えることができて、お客さんがとても笑顔で写真をいっぱい撮ったりとかして、本当にうれしいですね。」

全面公開の日、白濱さんを支えてきた「ゾウ班」のベテラン飼育員、福原晋弥さんは、あることを思い出していました。

■ゾウ班のベテラン・福原晋弥さん（50）
「どんどん記念写真撮ってほしいですね。ちょうど白濵が小さい頃、ゾウさんと写真撮っていたじゃないですか。またああいう物語がどこかで始まるといいなと思いますよね。自分が小さい時のゾウは、大きくなってもおとなのゾウとして残ってくれているというのが、僕は動物園にいるゾウの魅力だと思うので、うちの動物園、この子たちもそういうゾウになってもらえたらと。」

福原さんが思い描く物語はすでに始まっているかもしれません。

■中学3年・吉冨元気さん
「ちょっと怖いです。子ゾウはかわいいです。」

ゾウの到着を待ちわびていた中学3年の吉冨元気さん（15）です。元気さんも幼い頃、福岡市動物園でゾウと一緒に写真を撮った思い出があります。将来の夢はゾウの飼育員。この日も同じ場所で写真を撮り、思いを新たにしました。

■元気さん
「こんな至近距離でゾウを見ることができてうれしい。飼育員になる夢は、きょうでちょっと強くなりました。」

ゾウと写真におさまれば、たくさんの笑顔が生まれます。いつまでも心に残ってほしい。そう願う飼育員たちは、きょうもゾウたちを見守っています。

FBSでは、アジアゾウ全面公開までの舞台裏を追ったドキュメンタリー番組を制作しました。目撃者f「ゾウと写真におさまれば」は、2月2日（日）の深夜25時25分放送です。