10万人に6人未満「中皮腫」と闘う男性「治療を諦めない」仲間たちに伝えるメッセージ 福岡
全国でも患者数が非常に少ない「がん」と闘いながらも、同じ病気で苦しむ人たちを勇気づけようと活動する男性が福岡市にいます。男性は、仲間たちに伝えたいメッセージがあります。
福岡市博多区で12月、ある病気の理解を深めるセミナーが開かれました。
■仁科裕明さん(60)
「胸膜を全部とって、ろっ骨に食い込んでいたので3本切除して、横隔膜、心膜、右肺中葉をとって、ステージ3という診断がつきました。」
自らの闘病について語るのは、福岡市内に住む仁科裕明さん(60)です。仁科さんが患っているのは、人口10万人あたり6例未満という、まれな「がん」に分類される「悪性胸膜中皮腫」です。
■仁科さん
「(歩くのは)100メートルできついです。酸素を吸入していると、500メートルくらいOKかなという感じです。ゆっくり歩いてですよ。」
「悪性胸膜中皮腫」は、肺などの表面を覆う中皮から発生する「がん」です。胸の痛みや息切れなどの症状が出ます。2022年に診断され、今では酸素の吸入器具がないと外出は難しいといいます。
■仁科さん
「奈落の底に落ちた感じですね。(医師から)はっきり『治らない』と明言されまして、 手術をしても予後が良くないと。『無治療の場合は半年から1年の命だよ』と言われて非常にショックを受けました。」
中皮腫の原因として、医師から伝えられたのは。
■仁科さん
「アスベストがほぼ、要因であると。」
アスベストは、熱に強く耐久性も優れていながら安く手に入るため、かつては“奇跡の鉱物”と評された「石綿」です。住宅や公共施設などに幅広く使用されましたが、発がん性が明らかとなり、2006年には全面的に使用が禁止されました。
アスベスト疾患の治療に詳しい医師に聞きました。
■産業医科大学病院・田中文啓 病院長
「中皮腫は、心臓・ろっ骨の周り、そういう組織の中にどんどん食い込んでいく力が強いと言われていますので、心臓の一部とかに食い込むと手術する時に非常に難しくなる。」
仁科さんは2023年3月に胸膜などを切除する手術を受け、その後は抗がん剤治療を続けています。
■仁科さん
「抗がん剤治療をして1週間後くらいが一番きついですよ。ほとんどベッドで横になった状態になっちゃいます。」
いつ、どこでアスベストを吸い込んだのか。唯一心当たりがあるのはおよそ40年前、大学生の時に住宅メーカーの工場でアルバイトをしていたことです。
アスベストによる中皮腫の発症には、20年から40年ほど潜伏期間があるとされ、“静かな時限爆弾”とも呼ばれています。仁科さんがアルバイトをしていた当時、そうした危険があることはほとんど知られていませんでした。
■仁科さん
「非常に理不尽なものですね。自分に落ち度があってこの病気になっていると思っていないので。人災ですから、責任の所在ははっきりしてもらいたいですね。」
憤りや絶望感から、自暴自棄になったこともありました。そんな仁科さんが前を向くことができたのは、同じ境遇に置かれた人たちの存在でした。
仁科さんは、中皮腫の患者でつくる「中皮腫サポートキャラバン隊」に出会い、現在はその一員として、情報交換の場を設ける活動に取り組んでいます。
■仁科さん
「治療を諦めないという心と、主治医に質問できるところはしつこくする。納得のいかないところは、必ずセカンドオピニオンをして、納得のできる治療を受けることが非常に重要。」
体への負担を少なくする手術や免疫治療など、専門的な医療の情報を患者目線で共有することが、それぞれの生きる希望につながると、仁科さんは考えています。
■セミナーに参加した人
「元気になろうと思いました。」
「細かく教えてもらったので、諦めてはいけないなと思いました。」
■仁科さん
「患者さんの希望になるような活動を今後も続けていきたいと思います。この病気に何としても打ち勝って、楽しく生きていきたいなと思っています。」
※FBS福岡放送めんたいワイド2024年12月24日午後5時すぎ放送