【解説】「政権運営」今後どうなる? 与党で過半数割れ
山崎誠アナウンサー
「改めて議席数から見ていきます。自民党は191議席と公示前の247議席からは大きく議席を減らしました。また与党・公明党も石井代表が落選するなど、議席を減らして24議席となりました。この結果、自民・公明の与党はあわせて215議席で過半数の233議席を確保することができませんでした。この結果というのはどういった形で受け止めているのでしょうか?」
井上幸昌日本テレビ政治部長
「裏金問題などを適切に対処できない自公政治に対して厳しいおきゅうが据えられたとみていいと思います。ただ、立憲民主党が大きく議席を増やしましたけれども、以前の民主党政権が誕生した時のような、有権者が『変革』を求めた結果ではないというふうにみています。既成政党への不信感も表れていまして、例えば刷新イメージをもたれた『国民民主』や『れいわ』の躍進に結びついています」
「この現象ですけれども、7月の都知事選で言えば石丸伸ニさんが躍進したのと同じような現象と言えると思います」
山崎アナウンサー
「これまでの政党に対する閉塞(へいそく)感、不信感から他に票が回ったという形になりますね」
山崎アナウンサー
「そうした状況を受けて自民党内の動きを見ていきたいと思います。過半数獲得を実現できなかった責任を誰が取るのか注目されていましたが、石破首相と森山幹事長は続投の意向を示しています。ただ、これに対してある閣僚経験者は、『首相も幹事長も辞めないじゃ済まない』と話しています。井上さん、この続投の意向についてはどうみますか?」
井上政治部長
「政権を投げ出して長い政治空白をつくることが今の日本にとっていいのかという問題もやはりあると思います。交代論が出ている幹事長ポストについてなんですけれども、党内からは『こんな大変な時にやりたくない』という声まで上がってしまっています」
森圭介キャスター
「今回、自公で過半数を割り込んでいて、自公で他と組むのかどうかわかりませんけれども、この少数与党で今後の政権運営はどういうふうになっていくんでしょうか?」
井上政治部長
「非常に不安定な状態になることは間違いないとみています。30年前(1994年4月~)の羽田内閣ですが、これまさに少数与党でした。内閣が発足する直前に連立を組んでいた社会党が離脱したため、少数与党となってしまいました。結果、わずか64日で総辞職に追い込まれました」
斎藤佑樹キャスター
「この少数での政権運営というのはどういうところがハードルになっていくんでしょうか?」
井上政治部長
「相当手間がかかるのは、都度、野党側との調整が必要となってきますので、政権の体力を消耗し続けるという問題があります。現在の日本の状況を見ると、喫緊の課題であるデフレですとか賃上げ、この政策の遂行なども他に調整コストがかかってしまいますので、停滞する恐れがあるんじゃないかと思います」
山崎アナウンサー
「いろいろ進めていこうにも、少数与党だとなかなか簡単にはいかないという状況になります」
山崎アナウンサー
「そして今後を見ていくと、大きな山場となるのが特別国会です。投票日から30日以内、11月26日までに召集されまして、首相指名選挙が行われます。過半数、決選投票の場合は多数の票を得ることができれば石破政権継続となりますが、立憲民主党も政権交代を目指しています。井上さん、この情勢はどうなんでしょうか?」
井上政治部長
「いかに過半数を取るか、与党側、野党側もそれぞれの多数派工作が水面下も含めて今後、本格化することは間違いないです」
山崎アナウンサー
「多数派工作ということですが、具体的に議席数で見ていきたいと思います。自民と公明を合わせて215議席。一方で野党側が連立を組む可能性としてあげるならば立憲、国民、維新、社民ということで、こちら議席数を合わせたとしても215議席ということで、どちらにせよ過半数の233には届かないという状況ですね」
井上政治部長
「自民党としてはですね、当初あてにしたのが非公認で当選した無所属で通った人たち。裏金議員や政策が近い無所属の議員もいるんですが、このあたりを取り込んで乗り切ろうともくろんでいました。ただ、それが想定を超えてしまうレベルで下げてしまったということがあります。そこで、ある自民党幹部が話しているのが、国民民主党です」
山崎アナウンサー
「国民民主党という話がありましたので見ていきたいと思います。自民と公明合わせて215議席ですが、そこに国民民主が加わった場合、28議席が足されますので合わせて243議席ということになります。過半数が233議席だったので、243議席で過半数には届くことになります。ただ、国民民主の玉木代表は、連立する考えはないとうことでした」
瀧口麻衣アナウンサー
「連立する気がないとすれば、自民党はどうしていくのでしょうか?」
井上政治部長
「これは現段階でいうと、ひたすらラブコールを送り続けるしかないんじゃないかなというのが現状です。例えば、玉木代表も言っていましたが、看板政策がいくつか国民民主にもあります。103万円の壁をなくすとか、そういった政策の実現をしますよと誘い水を向けながら距離感を近づけていくということが必要となってきます」
山崎アナウンサー
「政策が大きく異なった政党を近づけるのは難しいということで、少なからず共通項があるところを誘っていこうということですね」
山崎アナウンサー
「最後に投票率について見ていきたいと思います。1967年頃からのグラフの推移。この10年でまず見ていきたいと思います。2014年頃から見ていきますと、この10年で期日前投票が定着したこともありまして、徐々に上がってきていたんですが、総務省によると、今回の投票率は53.85%ということになりました。これまでの流れでいうと少し下がる形にはなりまして、戦後3番目の低さとなりました。井上さんはこの数字をどうみますか?」
井上政治部長
「裏金問題に端を発してですね、『政治』そのものに幻滅した人たちが投票に背を向けてしまったんじゃないかなというふうに見えます。各党がその有権者の関心をどう引こうと、何をしたかというと、財源の裏付けなんて気にしない大盤振る舞いだったり、聞き心地のよい政策を競う、実現性を感じられない選挙になってしまったという印象をもっています。その日本の政治は今、非常に危ない状況にあるなという印象をもっています」
森キャスター
「この投票率でいうと今回、総選挙の日程がかなり急に決まったということもあって、投票所への入場券の郵送が遅れてしまった。そういったことというのも要因の1つにあげられるんでしょうか?」
井上政治部長
「これが実際どこまで影響したかというのは分析してみないとわかりませんが、そういった声が上がっていたのも事実ですし、やはりそもそも各党の政策を見比べて検証する。そういった時間が足りなかったという指摘はまさにその通りだと思います」
森キャスター
「27日に与党の議員に話を聞きましたが、『日本は先進国の中で政治が安定していた』と。『それが今後、どういうふうになっていくのか』という話をしていましたけれども、この今の日本に、日本の政治に必要なことというのは何だと思いますか?」
井上政治部長
「直近の話でいうと、多数派を可能なかぎり早く形成して政治を安定させる必要があります。権力抗争を繰り返して長い政治空白をつくる状態は、今の日本に余裕はないと思います。なので、玉木代表もそうですけれども、政治の安定のために何が必要なのかということを与野党の議員全員で考えてほしいと思います」
(10月28日放送『news every.』より)