【解説】異例の総裁選 1派閥から2人の名前も…“候補者11人”を独自分析
自民党総裁選挙をめぐる動きが活発化しています。19日時点で11人の名前が候補者としてあがっています。それぞれどのような強み・弱みがあるのか、日本テレビ政治部官邸キャップの平本典昭記者が解説します。
鈴江奈々キャスター
「自民党総裁選挙をめぐる動きが活発化しています。9月12日に告示、つまり選挙戦が始まって、27日に投開票という日程で最終調整されていることがわかりました。これでいくと過去、最も長い15日間の選挙期間となります。この日程、自民党は20日の選挙管理委員会で正式に決定する見通しです」
「一方、野党第一党の立憲民主党も9月7日に告示して、23日投開票の予定で代表選挙を行うことを、すでに決定しています。9月は国政政党の第一党と第二党がともに党首を選ぶ選挙を行う、非常に重要な月になります」
「自民党総裁選に意欲を示していたり、出るべきだと推薦する声が出ている議員は、19日に立候補表明した小林鷹之議員(49)の他にも10人います。そのうち上川陽子氏(71)は19日、立候補に必要な推薦人20人の確保にむけて、自ら電話をかけて支援を呼びかけていることを明らかにし、『手応えを感じている』と強調しました」
鈴江キャスター
「政治部官邸キャップの平本典昭記者に19日も3つの疑問について聞きたいと思います。まず1つめ、『なぜ? 候補者11人が乱戦状態』、2つめ『11人を独自分析 実力を比較』、3つめ『どうなる? 今後の総裁選 展開は』です」
「まず、名前があがっているのが11人です。これだけたくさんの人たちが名乗りをあげたというのには、どういったことが背景にあるのでしょうか?」
政治部官邸キャップ 平本典昭記者
「これには2つ理由があると思います。1つは『派閥の解消』です。かつて、総裁選に出ようとしたけど出られなかった経験をもつ議員が、取材にこんなエピソードを明かしてくれました。総裁選に出るためには20人の推薦人が必要です。この議員は、『ある議員が一度、推薦人になるよと言ってくれたのに、ある日突然、派閥からダメだと言われ断られた』というエピソードがあるそうです。これまではこういった『派閥の締め付け』があり、議員1人ひとりが動きづらかったけれども、今回は自由に動けるということで、結果として、立候補に必要な推薦人集めがしやすくなり、出やすくなる環境になったといえるワケです」
「11人もの名前があがっていますが、今回、1つの派閥から2人の候補の名前が同時にあがっているのも「異例」と言えます。岸田派からは林芳正氏(63)と上川氏の名前があがっています。茂木派からは茂木敏充氏(68)と加藤勝信氏(68)の名前があがっています。こうした、派閥で基本的には1人にしぼっていたものがなくなったというのも今回、非常に特徴的だというふうにみています」
鈴江キャスター
「岸田派や茂木派など、すでに解散表明している派閥にはしばりがなくなって、総裁選への足並みをそろえるという動きはなくなってきていると理解していいでしょうか?」
平本キャップ
「派閥を解消したところもそうなんですが、麻生派は派閥が存続していますが、麻生派の中でも割れる動きもありまして、大きく見て、派閥が解消された動きが、19日時点では全面的に出ているのが特徴的だと思います。ただ、今後また派閥の動きが強くなるのかどうかというのが非常に注目点だとみています」
鈴江キャスター
「そして、乱立にはもう1つ理由があるんですよね?」
平本キャップ
「これは先週の突然の『岸田首相の不出馬表明』です。今回11人のうち、5人が現職閣僚、1人が現職の党幹部です。閣僚や党幹部というのは、基本的には首相を支える立場なので、岸田首相が出馬すると出馬しづらい環境ですが、それがなくなったことで出やすい環境になった点も乱立になった理由といえます」
鈴江キャスター
「2つめのポイント『11人を独自分析 実力を比較』です。11人も候補者がいると、それぞれどういったストロングポイント、ウイークポイントがあるのか、そのあたりのカラーを知りたいと思います。いかがでしょうか?」
平本キャップ
「それを知る手がかりとして、日本テレビ政治部で候補者の実力を独自分析をしてみました。5点満点で評価しました。19日に出馬表明した小林鷹之氏(49)は、刷新感という点では5点とかなり高いポイントですが、経験は1点。対照的に近く出馬表明する方向の石破茂氏(67)は、幹事長、閣僚も務めたので経験は5点ですが、自民党議員の中では『石破さんだけは支持できない』という声が結構多く、議員支持の面では2点となっています」
鈴江キャスター
「すでに出馬の意向を固めている河野氏だったり、刷新という意味では、最年少の小泉進次郎氏(43)さんはどう分析していますか?」
平本キャップ
「河野氏ですが、バランスがとれているのが特徴です。外務大臣、デジタル大臣などの閣僚経験。麻生派の支持も見込めて議員の支持も一定程度、獲得しています。ただ、派閥の支援を受けている点は今回の総裁選では、今後マイナスに働く可能性もあります」
「小泉氏ですが、やはり小林氏と同じ刷新感は高いポイントになっています。さらに知名度も高い特徴があります。ただ、閣僚経験は環境大臣だけですので、経験不足が弱点といえるのがチャートから見て取れます」
鈴江キャスター
「政治部の取材から独自のチャートで評価している11人ですが、3つめ、今後の総裁選の展開はどうなっていくとみていますか?」
平本キャップ
「19日時点で、名前があがっている11人全員が出る事態にはならないとみています。ポイントとなるのは、11人のうち何人が推薦人20人を確保できるかです。今の最新情報を集約すると、メドが立っている見通しなのが石破氏、河野氏、小林氏、林氏、小泉氏。メドが立っていないのが、斎藤健氏(65)、上川氏。他の候補で未定が茂木氏、加藤氏、高市早苗氏(63)、野田聖子氏(63)とみています。ある閣僚経験者は、『総裁選レースはまだまだこれからだ。最終的には5、6人程度になるのでは』と話しています」
「実は、告示まで長いレースということで、まだ24日もあります。確かに小林氏の出馬表明でレースは加速しそうですが、あるベテラン議員は『総裁選はまだ始まっていない。候補者が出そろって初めてスタートだ』と指摘する声もあります。だれが最終的に出られるのか。裏を返せば、だれが出馬断念に追い込まれてしまうのか、これが次のポイントになりそうです」