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「すべての人がおしゃれを楽しめるように」 おしゃれな福祉下着を開発へ 車いすのネイリストの挑戦【わたしらしく生きるプロジェクト】

2025年3月14日 15:20
「すべての人がおしゃれを楽しめるように」 おしゃれな福祉下着を開発へ 車いすのネイリストの挑戦【わたしらしく生きるプロジェクト】

わたしらしく生きるプロジェクトは、障害者のための「おしゃれな下着」の開発に取り組む、車いすの女性の挑戦です。

ネイリストが挑む「おしゃれ」とは…?

広島市安佐南区のネイルサロンで指先を彩るのは、ネイリストの新藤杏菜さんです。下半身にまひがあり、車いすを使っています。

この日は、男性も来店しました。爪をきれいに磨きあげます。

■ネイリスト 新藤杏菜さん
「男性も女性も「今日これで頑張れるわ」って言って、帰ってもらったりとかするので、すごくそれがうれしいですね。」
■来店した男性は
「気持ちいいですね。テンション上がるというか。」

「すべての人がおしゃれを楽しめるように」。そんな思いで新藤さんは今、新たな挑戦をしています。それは、障害者向けのおしゃれな下着の開発です。

きっかけは、病気の発症だった

体に異変が起きたのは、2008年でした。免疫の異常が起きる膠原病の一種・全身性エリテマトーデスを発症します。突然の車いす生活。子どもたちは、保育園に通い始めたばかりでした。

■ネイリスト 新藤杏菜さん
「ちょっと前まで子どものオムツを替えていた自分が、今度は替えられているっていう衝撃。人間じゃなくなったような感じがしていて。」

新たにはじめたネイルの仕事。「必要とされている」と前を向くことができました。一方、排泄障害で「尿取りパッド」をつける自分を、受け入れることはできませんでした。

■ネイリスト 新藤杏菜さん
「尿取りパッドはつけているし。下着をはいても、はみ出た下着だし…すごく自信がなくなって、コンプレックスに思ってしまって。」

背中を押してくれた友人たち

長年、胸の内にしまっていた劣等感を、美容サロンを経営する友人にようやく打ち明けたのは、2年前のことでした。

■Ayuhaオーナー 山尾望翠さん
「『実はね』って言うので、『おしゃれな下着をつけたいけどなくて、それが作れたらいいな。実現できたらいいな』って聞いたときに、それは絶対に叶う夢だなと思って。」

友人の後押しがきっかけで、新藤さんはクラウドファンディングに挑戦します。すると、熱意が共感を呼び、1か月余りで目標金額を上回る支援を得ることができたのです。

さっそく、理想の下着づくりに乗り出しました。数十種類もの生地やレースを見比べ、デザインを考えました。

■ネイリスト 新藤杏菜さん
「左右非対称にレースをつけたくて。ここは透け感を出して、セクシーさを出したいなと。」

一般的な「福祉下着」は、色やデザインが限られているといいます。また、尿取りパッドがはみ出してしまうことも、新藤さんの大きな悩みでした。排泄障害の人が使いやすい機能性と、デザインの両方にこだわります。

■ネイリスト 新藤杏菜さん
「おしゃれが一緒になった福祉下着はないかなと思って。はきたいと思えるものが作りたくて。」

この日、新藤さんは友人の糸賀愛さんのもとに向かいました。糸賀さんは、事故で左足を切断しました。15年前、リハビリ病院で出会い、落ち込んでいた新藤さんを支えてくれました。

■友人・糸賀愛さん
「事故で傷が癒えなくて、なかなか下着自体をはけなかったんですよね。はけたとき、本当にうれしくて。」

糸賀さんは、新藤さんの下着に対する思いを、一番に理解しています。同じように悩みを抱える障害者や、高齢者に下着を届けたいという気持ちが、日に日に増していきました。

■ネイリスト 新藤杏菜さん
「陰ながらね、応援してくれているよね。」
■友人・糸賀愛さん
「障害者だからって、我慢せんといけんことはない。(おしゃれな下着が)ないなら作ってやるっていうから、作りんさいって。私は見守るだけじゃけど。」

「おしゃれ」の平等な選択肢は、すぐそこに

2月、下着の試作品ができあがりました。クラウドファンディングの支援者などに、新藤さんみずから進捗を報告します。

お披露目したのは黒のショーツで、尿取りパッドがはみ出さない丈と、上品にあしらったレースがこだわりです。

試作品を楽しみにしていた参加者たちに、話を聞きました。

■参加者たちは…
「福祉下着ってシンプルなイメージしかなかったので、思った以上にめっちゃおしゃれで、私もはこうかなってくらい。完成したら、真っ先におばあちゃんにプレゼントします。」
「(障害者は)選択肢が少ないのは、実際あると感じていて。声に出していくのが、すごく大事なのかな。」

一方、改善点も見つかりました。粘着テープの位置や柔らかさは、共同開発する繊維商社や、医師からの助言で、さらに追及していくことになりました。

■SAWAMURA 河上政慶さん
「ここ(ウエスト部分)にレースを這わせていく。ここ(股部分)にも、何かデザインを入れることもできる。もっと機能を持たせたデザインにしていけたらなと。」

■ネイリスト 新藤杏菜さん
「平等におしゃれの選択肢が、どこにでもあるようになったらいいなと。その第一歩になるように、取り組んでいけたらいいなと思っています。」

すべての人が、おしゃれを楽しむための新たな福祉下着。今後は、モニターの意見を募って改良し、6月ごろの完成を目指すということです。

【テレビ派 2025年3月13日放送】

最終更新日:2025年3月14日 17:36
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