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“安保”首相の言えないコト 政治部長解説

2015年7月21日 19:51
“安保”首相の言えないコト 政治部長解説

 安倍首相は21日、BS日テレの「深層NEWS」の収録で、先週、衆議院を通過した安全保障関連法案について語った。安倍首相の「説明」について、日本テレビ報道局・伊佐治政治部長が解説する。

■首相や政府が言いたくても言えないコト「中国の動き」「自衛隊のリスク」
 (Q:「中国の動き」「自衛隊のリスク」について、首相はどう触れていると感じましたか?)

 やはり野党の追及を警戒してか言い方は控えめでなかなか踏み込みません。そういう中で「戦争を防ぐ」とか「抑止力」とか安倍首相が訴えても私たちにはどうも現実感がわきません。

 一方で戦争の恐怖を現実味を持って受け止めている人たちがいます。それは北朝鮮にも中国にも近くて太平洋戦争で唯一、住民を巻き込んだ大規模な地上戦を経験し、今もアメリカ軍基地が集中している沖縄の人たちです。

 稲嶺・名護市長(今月6日)「もし有事となれば、今の沖縄が真っ先に狙われ、70年前の二の舞を踏む事になるのは火を見るより明らかであります」

 古謝・南城市長(今月6日)「2012年に北朝鮮が人工衛星と称するミサイルを発射するとの発表を受け、沖縄県において石垣市、宮古島市、那覇市、南城市においてPAC3が配備されました。もし万が一、沖縄に着弾した場合を考えると震撼(しんかん)する経験をしました」

 この稲嶺市長、古謝市長、実は法案には反対、賛成と立場は異なりますが、万一、北朝鮮とアメリカの間で武力衝突が起きた場合、沖縄にミサイルが飛んでくる怖さを実感しています。

 古謝市長は、安倍首相の言う抑止力が働いて戦争を未然に防ぐ事に期待して賛成、一方の稲嶺市長は軍事力を強化する事はかえって相手を刺激して戦争を誘発するとの反論が根強くあります。どちらが本当に平和につながるのか、さらに深めるべき重要な論点です。この問題は私たちが関心を持つためにも、政府には出来るだけ本音の答弁をしてほしいですね。

■首相や政府が言いたくても言えないコト「アメリカをつなぎとめたい」
 これも「アメリカ追随」との批判を恐れているから言いたくても言えない事なんですが、重要なポイントです。21日、安倍首相は北朝鮮のミサイル防衛に関連してアメリカがこの40年あまりの間に東アジアに配備する軍艦を半分に減らしている事に強い懸念を示しました。アメリカ軍が中東などの展開に比重を移したからですが、ある政府関係者は、安倍首相が安保法制にこだわる原点について、15年ほど前に、アメリカ政府の高官から「日米同盟において、日本も相応の貢献をしないと、アメリカの若者は日本のためには戦わない」と言われた事が原点だと話しています。アメリカが守ってくれるとばかり思っていたら、案外、条件付きという事が分かって焦りを強めたわけです。

 日米首脳会談今回の安保法制は、実は4月に合意された日本とアメリカの防衛協力の指針いわゆる新ガイドラインとセットになっています。その新ガイドラインでも、アメリカがちゃんと日本を守ってくれるか不安もあったんですが、尖閣諸島を念頭に、初めて「島しょ防衛」での協力がはっきりと書きこまれ、日本はひと安心しました。

 それは良い事なんですが、その代わりというか自衛隊の任務拡大、「グローバル」な地球規模の協力を約束する事になりました。そうなれば自衛隊員のリスクも高まると考えられるわけですね。これも参議院審議の焦点と言えます。