国会の証人喚問で佐川氏が証言 新事実は?
27日は森友学園の決裁文書改ざんをめぐり、国会で佐川前理財局長の証人喚問が行われた。証人喚問のポイントを解説する。
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27日の佐川氏、胸には「証人」とわかるよう区別するための緑のリボンが付いていた。そして佐川氏の斜め後ろに座っている男性にも胸に薄黄色のリボンが付けられている。これは「補佐人」の印だ。補佐人は、証人に付き添う弁護士のことで、東京地検特捜部出身の熊田彰英弁護士だ。証人喚問ではウソをつくと罪に問われるので、証人が判断に迷ったらすぐに補佐してもらえるようになっている。
きょうの焦点は
「改ざんは誰が指示?」
「なぜ改ざんした?」
「佐川氏はどう関与?」
「官邸や昭恵夫人の影響は?」
だが、「なぜ改ざんした?」について、佐川氏はこう答えた。
佐川氏「私が捜査の対象であり、刑事訴追を受けるおそれがあるので、答弁を差し控えさせていただきたい」
自分がどう関わって、どこまで把握していたのか、についても一切話さなかった。全体として肝心の点は証言を避けた。こうした中で、「官邸や昭恵夫人の指示や影響はあったのか」という点だが、佐川氏は、「理財局の外に報告や相談をするとか、まして総理官邸に報告をするとか、そういうことはない」「指示もない」と答えた。
さらに、野党の議員が「『指示』ではないが、『協議』や『相談』はあったのか」と聞くと、「指示も、協議も、相談もない」と言った。政治家から何か言われていたわけではない、財務省理財局の中で完結する案件だった、と繰り返し強調していた。佐川氏は答弁を避け続けた中でここだけは言い切っていた。政府、財務省もこれまで改ざんは「理財局の中でやったことだ」と答弁していたので、そこは一致したわけだ。
ただ、野党側は「『昭恵夫人の関与はなかった』となぜ断言できるのか」、と追及した。というのも、森友学園が国有地を借りることをめぐり、昭恵夫人付きの職員が財務省の担当室長とやりとりをしていたからだ。この点について佐川氏は、「室長からの報告で昭恵夫人の話は一切出てこなかった」と説明した。
Q:ではなぜ文書から昭恵夫人の名前を削除したのか、という疑問は残る。
「安倍首相の国会答弁」が改ざんに影響したのか、もポイントだった。改ざんの時期について、財務省は「去年2月下旬から4月」と説明している。その前の去年2月17日、安倍首相はこんな発言をしていた。
安倍首相「私や妻が関係していたら総理も国会議員もやめる」
―この首相の答弁が改ざんに影響したんじゃないか、という指摘もある。つまり、決裁文書に首相の名前があったから削除したんじゃないのか、という疑惑だが、佐川氏は、「総理の答弁の前後で私の答弁を変えた意識はございません」と答弁した。答弁したものの、改ざんに影響していない、とは言っていない。
Q:そうは言っても、現場レベルでどう受け止められていたのかはわからない
その通りだ。まとめてみると、
「改ざんは誰が指示?」→証言せず
「なぜ改ざんした?」 →証言せず
「佐川氏はどう関与?」→証言せず
「官邸や昭恵夫人の影響は?」→「ない」
このように、野党がどう質問しても答弁では明らかにしなかったが、官邸や昭恵夫人が関与していないという部分だけは明言した。官邸と佐川氏が27日の証言内容について事前に打ち合わせたのかどうかは全くわからないが、結果として佐川氏は官邸の描いたシナリオを補強する証言をしたとも言える。
財務省のある幹部は27日午後、「財務省1人が悪者、確定だよ」と話している。27日の証人喚問では、知りたいことが明らかにならず、消化不良に終わった感が否めない。安倍首相も「うみを出し切ることが重要だ」と述べている。政府はさらなる説明が必要だと言える。