なぜいま?岸田首相のウクライナ電撃訪問 極秘計画の裏側とギリギリの判断の背景【記者解説】
今回の岸田首相のウクライナ訪問の狙いはどこにあったのか?その裏側を日本テレビの平本典昭・官邸キャップが解説します。
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岸田首相として、一番、頭にあったのはG7議長国として肝いりの広島サミット前にゼレンスキー大統領と会談しリーダーシップをアピールすることでした。
このタイミングでのウクライナ訪問については、実は複数の政府与党関係者が「インド訪問のあとに岸田首相はウクライナにいくと思う」と話していました。一方で、行く直前まで多くの政府関係者「訪問はない」と話すなど、情報管理を徹底していました。
それだけ実現が難しいもので、政権側が慎重には慎重に検討を進めていたと言えます。
そもそも、複数の政府関係者が「岸田首相はウクライナ訪問の実現に強いこだわりをもっている」と話していました。
5月に地元広島でG7サミットでロシアによるウクライナ侵攻に対抗する姿勢を議長国としてリーダーシップを発揮するためにある外務省関係者は「ウクライナ訪問は欠かせない」と話していました。
■なぜ、実現に至らなかったのか?
1つ目の壁は安全保障上の理由です。
19日(日)の時点である政府関係者は「一番の問題は警備上の問題だ」と話していました。日本政府はアメリカのバイデン大統領のウクライナ訪問を参考に、岸田首相の訪問日程について検討を重ねたとみられます。
バイデン大統領はウクライナ移動時などは米軍のサポートを受けていましたが、岸田首相の安全面の確保をどうするかが課題でした。ある政府高官も、「アメリカは軍事力がある。ヨーロッパ各国はNATOに加盟してるから安全だ」と日本が安全を確保しながらいく難しさを話していました。
2つ目の壁は国会日程です。
外務省関係者は、「4月以降はウクライナの戦闘が激化する可能性があり、日程的に厳しい」と話すなど、3月中の訪問の検討に入ったとみられます。
その中で3月に祝日があるのが21日だけで、22日も岸田首相出席の国会日程がないなどの理由から、このタイミングでの訪問になったとみられます。
■会談のポイントはどこか?
訪問が決まってから、ある外務省関係者に話を聞きました。
「ウクライナ訪問実現までに大きな壁があったがここからが一番大事なところ。実際にゼレンスキー大統領と中身のある会談ができるかがポイントとなる」と話していました。
会談ではG7サミットへの協力を求めるほか、広島に岸田首相がゼレンスキー大統領を招待するかもポイントとなります。
また、会談の裏には岸田総理の「焦り」もあったと思われます。というのは、G7各国の中で、いまの時点でウクライナ訪問をしていないのは日本だけで、自民党内からは「議長国がウクライナにいけないのは国際社会で恥さらしだ」という厳しい意見もあがっていました。
また、ウクライナ訪問自体に冷めた見方もあります。ある自民党幹部は、「外交上はいかないほうがいい。あまりロシアと敵対しすぎないほうがいいと思う」と話していました。
これから岸田首相はキーウに入り、ゼレンスキー大統領と会談します。岸田首相がのぞむサミットにむけた具体的な協力を引き出せるかが外交手腕が最も問われることになります。