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“政治とカネ”徹底調査 「政策活動費」にも課題…自民党幹部「選挙で表に出せないことに使う」 その実態は?【政治部長解説】

2024年3月14日 10:09
“政治とカネ”徹底調査 「政策活動費」にも課題…自民党幹部「選挙で表に出せないことに使う」 その実態は?【政治部長解説】
繰り返される「政治とカネ」の問題で、自民党が大きな危機にあります。裏金の温床となった政治資金パーティーはなぜ根付いたのか。野党も含めてあり方が問われている政策活動費は、見直しが進むのか。田中秀雄・日本テレビ政治部長が解説します。

■辰年に起きた、政界を揺るがす大事件

藤井貴彦アナウンサー
「繰り返される政治とカネの問題に、今改めて国民の厳しい目が向けられていますね」

田中秀雄・日本テレビ政治部長
「岸田内閣の支持率は最低水準のままで、自民党の党員もこの1年間で3万人以上も減ったということで、今まさに自民党は大きな危機にあると思います」

藤井アナウンサー
「今年は辰年ですが、これまでにも辰年には政界を揺るがすほどのカネにまつわる大事件が、繰り返し起きています。1976年はロッキード事件、1988年はリクルート事件、2000年はKSD事件がありました」

■深刻…専門家「組織ぐるみで違法行為」

藤井アナウンサー
「そして今年も、ということになってしまいましたが、今回(の自民党派閥の裏金事件)はさらに深刻だという指摘もあります。政治とカネの問題に詳しい東京大学の谷口将紀教授に聞きました」

「谷口教授は『リクルート事件以降、大半の事件は法律を守らない一部の不心得者を摘発する案件だったが、今回は性質が違う。派閥という自民党の権力中枢が、しかも組織ぐるみで違法行為、裏金を作っていた』と指摘しています」

田中部長
「政治資金のシステム、法律の抜け穴をついた大規模な違法行為だということです」

「さらに取材を進めたところ、複数の議員や専門家からは、『赤信号みんなで渡れば怖くない』といった悪質な発想や甘えがあった。法律をきちんと守るという意識が欠けていた、という厳しい指摘が聞かれました」

■政治資金パーティーが根付いた背景

藤井アナウンサー
「今回問題となった派閥の政治資金パーティーは、なぜこれほど根付いてしまったのでしょうか?」

田中部長
「そもそもは、過去に起きた数々の事件でお金に関する規制が厳しくなっていく中、広く薄く、つまり大勢の人から少しずつお金を集める狙いから広まっていきました。元自民党で派閥への所属経験もある鈴木宗男参議院議員や、自民党二階派の元秘書に取材しました」

鈴木議員
「(昔は)派閥の会長がそれなりの派閥への資金を集めて、仲間の人たちに配っていました。だんだんと資金集めが窮屈になってからパーティーというのが始まったと私は思いますね」

二階派の元秘書
「昔はパーティーをする事務所は恥ずかしかったんですよね。パーティーでお金集めするというのは。実力がないって思われていたんですよ。スポンサー企業とかがいて、そこから献金を受けているのが多かったですから」

■閣僚経験者「計画性があり悪質」

田中部長
「さらに、ある閣僚経験者は『若い議員がお金を集めるのは大変だが、派閥のパーティーだと言えば売りやすい。だから、派閥のパーティーは常態化してきた』と指摘しています」

「議員側の言い分としてはこうなのですが、一方でパーティーは会計処理が不明朗で裏金もつくりやすいという指摘は、以前からずっとありました」

「また別の閣僚経験者は『裏金問題は単なるうっかりミスとはわけが違う。計画性のある悪質なものだ』と述べ、きちんと公開すべきだとしています」

■裏金問題を端緒に…問われる政策活動費

藤井アナウンサー
「この裏金の温床となったのが政治資金パーティーだったということですが、今回の裏金問題をきっかけに、政策活動費のあり方も問われていますよね」

「政策活動費は党本部から何億円ものお金を受け取っても何に使ったのか明らかにしなくていい、使途公開の義務がないというものです」

田中部長
「自民党は2022年、1年間で党幹部15人に対し60回にわたって計14億円超を支払っています。最も多いのは茂木幹事長で、合わせて9億7150万円を受け取っています。2021年は当時の甘利幹事長は衆議院選挙の直前の約1か月で3億8000万円を受け取っていました」

■鈴木宗男議員に聞く…使い道は?

田中部長
「裏金とは違って政策活動費は違法ではありません。一方で、こうした巨額のお金の使い道を明らかにしなくていいことから、ブラックボックス化しているとの指摘も出ています」

藤井アナウンサー
「この巨額の政策活動費を何に使っているのかは気になりますよね」

田中部長
「その点についても、かつて自民党で選挙対策を担った鈴木宗男議員に聞きました」

鈴木議員
「(以前党から)億のお金を、選挙の時に党から言われてそれぞれ応援に回ったもんですよ」

「地方に行く場合、地方にもきちっとした経費、会合を持つわけですから、その経費は持って行くし、あるいは選挙の時ならば陣中見舞いとして、それぞれ自民党が事務所を張っているわけですから、その経費は党本部としての陣中見舞いとして持っていきますね」

■立候補をやめさせる際に「補てん」か

藤井アナウンサー
「つまり選挙応援、陣中見舞いなどにも使われていたということなんですね」

田中部長
「そうです。ただ、ある自民党幹部は『選挙で表に出せないことに使っている。例えば、ある候補者に立候補をやめさせる場合、それまでに使った数千万円なりの金を補てんしてやらなきゃいけない』と明かします」

「さらに、『こうした金の使い方は自民党だけではなく野党にもある。ここは手をつけちゃいけない世界なんだ』とも言います」

藤井アナウンサー
「『手をつけちゃいけない世界』が政治家の皆さんの前に広がっているというのはちょっと信じがたいですし、これがまさにブラックボックスということなんですね」

■野党の幹部も「政策活動費」受け取り

田中部長
「そうですね。だからこそ、国民には『公表できないような不適切なことに使われているのでは』といった指摘や疑念を持たれても仕方がないと思います」

藤井アナウンサー
「ただ、政策活動費は与党だけではなく、野党にもありますね」

田中部長
「例えば2022年、立憲民主党の泉代表は5000万円、日本維新の会の藤田幹事長は5057万円、国民民主党の榛葉幹事長は6600万円などとなっています」

■各党の政策活動費へのスタンスは?

藤井アナウンサー
「こうした政策活動費について、公明党は『使途公開を義務づけるべきだ』というスタンスで、立憲民主党や日本維新の会、国民民主党、共産党は『そもそも政策活動費を禁止すべきだ』としています。自民党はどうでしょうか」

■岸田首相は見直しに慎重…ナゼ?

藤井アナウンサー
「岸田首相(自民党総裁)は見直しに慎重だということです。もし政策活動費の使い道を公開すると、自民党と関係のある個人のプライバシーや企業の営業秘密が明らかになる、自民党の戦略が他の政治勢力や諸外国にもれる、といった恐れがあると説明しています」

「各党の意見がまとまらない中で、政策活動費の見直しは今後実現するのでしょうか?」

田中部長
「政策活動費の使途公開を義務づけるには政治資金規正法の改正が必要ですが、現時点で合意の見通しは立っていません。機密に関するものなど一部に例外を設けるにしても、これだけの大きな問題が発覚したので、使い道の公開について検討すべきだと思います」

■政治資金は原則非課税…高い倫理観を

田中部長
「もう1つ指摘しておきたいのは、政治団体が寄付やパーティーで集めた政治資金は、原則非課税だという点です。政治活動の公益性ということで、こうしたいわば特権が認められているわけですが、逆にだからこそ、政治家にはより一層高い倫理観が求められます」

「今回、改めて多くの議員や秘書たちに取材をしましたが、『政治家は自分にとって痛いところはみんなよく分かっている。だから、一番困るところはいつまでも改正されない』という話がとても印象に残りました。政治家を縛る法律を作れるのは政治家だけです」

「岸田首相は、6月までの今の国会で『政治家本人も責任を負う政治資金規正法の改正を実現したい』と話しています。ぜひ、与野党で国民が納得するような結論を導き出してほしいと思います」

(3月13日『news every.』より)