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【議論】持続可能な登山道へ 富山で初のシンポジウム

2025年2月21日 20:26
【議論】持続可能な登山道へ 富山で初のシンポジウム

維持や管理が危ぶまれている登山道についてです。

先週黒部市で、登山道の維持について話し合うシンポジウムが県内で初めて開かれました。

参加者からは地域の資源として登山道を守るとともに地域全体で活用に向けた取り組みを進めるよう求める声が相次ぎました。

シンポジウムの背景

シンポジウムを企画したのは、環境省や自治体、山小屋関係者などで作る協議会。

去年から登山道維持のため協力金制度を始めた団体です。

山小屋の主や自然環境の研究者などが2日間にわたって県内外の様々な事例を紹介しました。

シンポジウムの最後に行われたパネルディスカッションのテーマは「登山道を理想に近づけるための計画づくり」。

環境省が国立公園を管理する現状について研究者は・・・。

「やはり一番大事な視点は国の公園ではあるけれどもこれはその前にですね、地域の財産だと私は思うんですよ。本来ならばそこの主人公は地域の方々じゃないかなと私は思うんです。そうであるとするならばやはり、そういう方々に入っていただいて北アルプスの登山道をどうするかというビジョン作りも積極的に進めていただく必要があるんじゃないかと思っているんですね」

中部山岳国立公園内にある富山県内の登山道は、およそ300キロあり、これまで行政や山小屋などが維持・管理してきました。

しかし、コロナ禍で山小屋の経営環境が悪化したことをきっかけに費用負担や人材不足などが大きな課題として認識されるようになりました。

そこで、去年夏から協議会が試験的に始めたのが登山者に協力金を求める制度です。

これまでに600万円以上が集まりましたが、今後、どんな計画を立て、どのように使っていくか問われています。

「山岳管理ができていない状態、課題がたくさんある状態というのは私にとっては非常に宝の山です。それを解決すれば、どんどん人もめぐる、お金もめぐる、そういう場所になると思っています。日本はかなり産業が傾いている中で国立公園だけは伸び代がものすごいあるんじゃないかなと思っているんです」

登山道を取り巻く現状

一方、登山道を利用する側の登山者については・・・。

「登山者の相当な割合の人たちというのは『え?登山道って何か問題があるの?』深くえぐれていようが、侵食していようが別に歩ければいいわけですよ。だから『問題があるの?』『誰が管理しているの?』『そんなの知らないよ』というそういうレベルの人がほとんどなんですよね」

「いつも課題だなと思うのは利用側と保全側に分かれちゃっている所が結構課題だなと思っていて利用する人というのがどういう風に、今度、保全のステークホルダー(利害関係者)になっていく可能性があるのかというあたりは話を詰めてみてもいいなとか思ったり」

「利用者が保全を担いうる最大の根拠がどのナショナルパークもやっぱり経済効果を保全の予算に充てているということだと。利用があって経済があってそれが保全に回るという形をね使いたいし」

会場には、登山道を維持していこうと今月、設立したばかりの民間組織、「薬師トレイルクラブ」の代表、福山寛大さんの姿がありました。

「正直にいうと解決するにはシンプルに考えるべきだと思うので、まずは民間がモデルとなって、そこに行政がついてきてもらうような形というのも一つの手かなっていうのは感じました」

富山市内の登山用品店に務める福山さん。

去年10月に行われた登山道修復の講習会に参加して維持していくことの大切さに気付いたということです。

「やはり発足1年目ですので、技術の吸収っていうものを大事にしていきたいと思います」

シンポジウムの開催を取りまとめた環境省は。

「中長期の目線を見た上で国立公園の登山道の利用と保全をどういうふうに計画として落としていくのか、優先順位づけとかをしていくのかというような、まずは考え方の整理をし、また、そこに関わってくださる人を選んで議論に参加していただくような検討をまずは始めていかなければならないなという所があると思います」

上野キャスター)一筋縄ではいかない大きな課題であり、現状はピンチですが、課題を解決できれば大きなチャンスでもありますね。

数家解説委員)富山県が誇る北アルプスの豊かな山岳環境をどう活かしていくのか、多くの人に関心を持ってもらいたいと思います。

最終更新日:2025年2月21日 20:26
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