【解説】外国人観光客の受け入れ再開へ ガイドライン発表“課題”浮き彫り
10日から外国人観光客受け入れが再開されるのにあわせて、観光庁は7日、客にマスク着用の徹底などを求める旅行業者などに向けたガイドラインを発表しました。「ガイドラインどんなもの?」、「ピクトグラムも活用」、「旅行業者のホンネ」、以上の3つのポイントについて詳しく解説します。
10日から、外国人観光客の受け入れが再開されます。外国人観光客の受け入れは、約2年ぶりとなります。当面は、添乗員付きのパッケージツアーに限られます。
7日に発表されたガイドラインの内容は、次の通りです。
・旅行業者はツアーを販売する際、参加者がマスク着用・手指の消毒・“3密”を避けることを徹底する必要があることを伝える
・新型コロナに関する医療費を補償対象に含む民間医療保険に加入する
・こうしたことに同意を得た上、従わなければ参加を認めない可能性があることを伝える
・感染者が出ても、陽性者と濃厚接触者以外はツアーを継続できる
・添乗員はツアー客の行動履歴を保存する
実際、観光地のホテルからは「外国の人に注意し、マスク着用を促すのは難しいのではないか」と不安の声もあがっているということです。こうした中、観光庁はピクトグラムも活用し外国人にも伝わりやすい参考例を挙げました。
「正しくマスクを着用しましょう」
「3密を回避しましょう」
「非接触決済を利用しましょう」
「入場時に検温しましょう」
宿泊事業者には、こうした内容を目立つ場所に掲示することが求められています。
他にも『五・七・五』で、「新しい旅のエチケット」が作成されました。
「黙浴で、静かにゆったり、いい湯だな」
「旅の宿、楽しい一夜も、マスク忘れず」
こうした呼びかけは、外国人観光客にむけて多言語に翻訳されています。
こうしたガイドラインは、5月24日から行われた実証事業の結果を踏まえて作られました。実証事業では、アメリカ、オーストラリア、タイ、シンガポールの4か国から約50人が15のツアーに分かれ、合計12県を訪問しました。
参加者からはおおむね好評でしたが、課題も浮き彫りになりました。斉藤国交相は「マスクについては必要であると十分理解されていた反面、(マスクを)外してもよい場面がわかりづらかった」と述べました。
課題の1つは、マスクを外していい場面がわかりづらかったことです。実証事業では、マスクをつけたままお風呂に入ろうとした人もいたということです。
他にも、屋外でのアクティビティ、混雑していない観光地の散策など、マスクを外してもいい場面もあります。今後、マスク着用が不要な場面もわかりやすく例示して、呼びかけていくということです。
もう1つの課題は、陽性者が確認された場合、いかに円滑に対応できるかです。実証事業では、大分を訪れていたタイからのツアー客1人が新型コロナウイルス陽性となり、大分県内の療養施設で療養しました。
他の参加者3人はマスクを外して会食していたことから、旅行会社が濃厚接触者と判断し、宿泊したホテルとは別のホテルに移り、健康観察となりました。結局、ツアー自体は中止となりました。
モデルケースとなったこの事例を受けて、ガイドラインには「旅行業者が事前に確認しておくこと」が盛り込まれました。
・多言語対応の医療機関
・自治体の相談窓口
・濃厚接触者の待機場所
待機場所については、旅行会社が普段から取引関係のある宿泊事業者などに協力を求めておくことが望ましいとされています。
実証事業にも参加した大手旅行会社・JTBの担当者は「ガイドラインを熟読した上で、プロフェッショナルとして、今までの知見・経験を生かして、対応したい」と述べました。
福岡にある旅行会社は、「外国人観光客の受け入れ再開は歓迎」としています。ただ、旅行会社には、濃厚接触者の判断や、待機場所の確保も求められています。この旅行会社からは「丸投げは、正直不安。専用の宿泊待機場所を用意するなど、もっと国と自治体に動いてもらいたい」と不安の声も上がりました。
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いよいよ、外国人観光客の受け入れが10日に再開します。“ウィズコロナ”の生活で、私たちも徐々に日常を取り戻しつつあります。人の行き来が加速する中、改めて、観光客も、受け入れる側の私たちも、この2年間で学んだ感染対策の徹底が求められています。
(2022年6月7日午後4時半ごろ放送 news every.「知りたいッ!」より)