×

【解説】鳥インフルエンザ カンボジアで少女が死亡 “新型インフル”になる可能性は…

2023年2月27日 20:23

カンボジアで11歳の少女が鳥インフルエンザに感染し亡くなったことが分かりました。日本でも、人に感染する可能性はあるのでしょうか。

・感染者、約半数が死亡
・日本で殺処分1400万羽超え
・いつまで続く?

以上のポイントを中心に詳しく解説します。

■カンボジアで少女が死亡 「H5N1」感染者の約半数が…

鳥インフルエンザで死亡したのは、カンボジア・プレイベン州に住む11歳の少女です。

少女の自宅周辺では、保健省の職員により家屋や鶏小屋などを消毒したり、ゴミを燃やしたりと感染拡大を防ぐ措置がとられていました。

AP通信によると、少女は2月16日に体調を崩し、病院に搬送されました。症状は39℃の高熱のほか、せきや喉の痛みがあったといいます。そして、6日後の22日に死亡したということです。

WHOによると、少女の父親もその後に鳥インフルエンザの感染が確認されていますが、無症状だということです。また、感染経路などについては現在、調査中だといいます。

鳥インフルエンザに感染し死亡する事例は、これまでも報告されています。

今回、死亡した少女が感染していたのは「H5N1型」です。2003年以降、世界21か国で確認されています。感染者数は873人で、そのうち458人の死亡が報告されています。

人に感染すると重症化しやすく、死亡率も高いというところまでは分かっています。

■日本でも猛威 “人への感染がいつ出てもおかしくない状況”

一方で、日本ではこれまで発症した人は確認されていませんが、鳥インフルエンザ自体は現在、国内で猛威をふるっています。

今シーズンの国内での発生件数は去年9月に神奈川・伊勢原市で確認されて以来、35都道県での279事例にのぼっています。記録的なペースで拡大していて、過去最多の約1478万羽もの鳥が殺処分されました。そのため、卵が入手困難になったり、卵を使った商品の値段が上がったりとさまざまな影響も出ています。

そして、東京都内でも5年ぶりとなる発生が確認されています。

2月17日、東京・日野市の多摩動物公園で飼育されていたツクシガモが鳥インフルエンザだと確認されました。動物園は、カモがいた池で飼育していたすべての鳥の安楽死処置を行うとしています。その後、ツルの陽性も確認されており、27日時点で臨時休園となっていて再開の見通しはたっていません。

鳥インフルエンザに詳しい北海道大学大学院・獣医学研究院の迫田義博教授によると、これだけ発生数が多い今の日本でも、人への感染が起きてもおかしくないといいます。

鳥インフルエンザの感染経路を確認します。

最初に日本にウイルスを運んできたのは、北から飛来する渡り鳥とみられています。この渡り鳥からカラスやスズメなどの日本に生息する鳥やネズミなどの小動物に感染が広がります。これらの動物が養鶏場などに入り込むことで、飼育されている多数の鳥たちにも感染していくということです。

人への感染リスクは、養鶏場の関係者や、鳥を診断する獣医師、動物園で日頃から鳥を飼育している人、自宅の庭先で飼っている人などが比較的高いといいます。

国内でウイルスを持っている鳥が増えると、その分、こうした人たちの感染リスクも高まるので“人への感染がいつ出てもおかしくない状況”だといいます。

ただ、人への感染には鳥から鳥への感染に比べ、格段に多い量のウイルスを浴びるという条件が必要なため、きちんと注意していれば防ぐことができるということです。

鳥と日常的に接することのない人たちが恐れおののく必要はないと迫田教授は話しています。

普段、鳥に接触しない人たちも鶏肉や卵を食べることは多いと思いますが、これまで鶏肉や卵を食べたことで感染した事例はありません。日本では、感染した鳥は流通する前に処分されているのと、ウイルスは胃酸や熱に弱いので、万が一食べたとしても死滅すると言われています。

さらに、持続的な人から人への感染事例はありません。現状は、新型コロナウイルスのように人から人へ感染が広がっていくというフェーズではないと言えます。

■「新型インフルエンザ」になる可能性… 流行収束はいつ?

一方で、厚生労働省によると、鳥インフルエンザウイルスが人に感染することによって突然変異し、“新型インフルエンザウイルス”になる恐れがあるといいます。

このウイルスが人から人に感染しやすい性質を有しているとしたら、世界的に大流行する恐れがあります。この可能性も考慮して、今、鳥インフルエンザに対して徹底的な対策が行われているのです。

迫田教授によると、今回の鳥インフルエンザ流行について、渡り鳥が日本を離れ北の国々に帰っていく5月中旬ごろまで続くといいます。

その上で、例えば渡り鳥ではないカラスは、冬場は集団生活するので感染拡大の可能性が高いです。ただ、春になると子育てのため2羽ずつで生活するようになり、縄張りも明確に分かれていくようになるといいます。つまり、“密”が解消されていくということです。

こうした段階を経て、鳥インフルエンザの流行も収束に向かっていくだろうということです。

    ◇

エサの価格や光熱費などが上がり続ける中で、鳥インフルエンザの対策も万全にしなければならず、この冬の養鶏場の関係者の苦労ははかりしれません。1日も早く収束し、次のシーズンは今年のような経過をたどらないことを願うばかりです。

(2023年2月27日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)

  • 日テレNEWS NNN
  • 社会
  • 【解説】鳥インフルエンザ カンボジアで少女が死亡 “新型インフル”になる可能性は…