「赤ちゃんポスト」都内に初設置、全国で2か所目 遺棄や虐待防ぐため…課題も
親が育てられない赤ちゃんを匿名で受け入れる「赤ちゃんポスト」が、東京都内の病院で始まりました。
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緑のランプのついたドアの先。中にあるのは、大きなかご。様々な理由から親が育てられない赤ちゃんを、病院に匿名で託すための場所です。
3月31日、東京・錦糸町駅の近くにある病院が発表したのは、いわゆる“赤ちゃんポスト”と、一部の病院職員にのみ身元を明かして出産する「内密出産」の開始。
賛育会病院 賀藤均院長
「昨今の予期せぬ妊娠や、孤立出産の悩みを抱える女性の増加や、虐待死などの痛ましい事件が後を絶ちません。赤ちゃんの遺棄や虐待を回避するための、緊急かつ最終的な手段であると認識しております」
匿名性を守りつつ、預けた人が最後に病院職員に相談できる機会を持てるように、病院の中に専用の部屋を用意。
医療機関運営の“赤ちゃんポスト”は、全国で2か所目です。
国内で初めて設置されたのは、熊本にある慈恵病院。2007年に始まり、179人が預けられました。1人で悩みを抱えた様々な母親が“赤ちゃんポスト”を頼ってきました。
「妊娠し同棲(どうせい)しようとした矢先に、婚約者が行方不明となった。1人では経済的に育てられない」
「同級生との間で妊娠したが、交際の支障になると考え妊娠を告げていない。1人で自宅出産」
そして、熊本にあるにもかかわらず、15パーセント以上が関東から来た人でした。東京に“赤ちゃんポスト”ができることは、救える命が増える一方で、“想定以上”の預け入れが生じるおそれも。
専門家は…。
千葉経済大学短期大学部 柏木恭典教授
「需要は大都市にある。これは1病院で抱えきれる規模のものなのかという心配」
賛育会病院は、“赤ちゃんポスト”のほかに、内密出産も受け入れますが、その費用50万円ほどは“原則”自己負担に。
これについて、すでに内密出産の取り組みを病院で行っている熊本の慈恵病院は…。
慈恵病院 蓮田健理事長
「内密出産を求める女性は、ほとんどお金がなくてきます。あまりにもこれは非現実的です」
課題も山積みですが…。
賛育会病院 中村基信常務理事
「様々な課題やリスクを伴うことではありますが、将来このような取り組みが必要のない社会になることを願って」
赤ちゃんポストや内密出産は、あくまでも“最後のとりで”。そこに向かわずに済むように、賛育会病院は妊娠をめぐる相談窓口を設けています。