マナー悪くて“子連れ入店お断り”に賛否
「子連れ入店お断り」―マナーの悪さを背景に、子供連れの客の入店を断ることにしたカフェのツイッターが話題となっている。小さな子供がいる親たちはどうみるのか、飲食店などでの対応はどうなっているのか、取材した。
■障子を破られ、連絡はなかった…
岡山・総社市にある古民家風カフェ「珈琲と人」が先月、ツイッターにある投稿をした。
「17時まで0歳児を除く、未就学時(児)連れのお客さまのご入店をお断りさせて頂きます」
店主にキッカケを聞いた。
「珈琲と人」の店主・松永伸幸さん「その日、こちらでお過ごしになられた子連れのお客様が、この裏側にあった障子を破られたわけなんです。ご連絡はいただけなかったです」
大きく破られた障子の切れ端が、植木鉢の後ろに隠すように置かれていたという。
松永さん「何かおっしゃっていただけたら、こちらも受け方がちょっと違っただろうなと。しっかり子供さんを見ておいてほしい。それができるのなら、今でもお迎えしたい気持ちはいっぱいです」
ネット上では大きな反響があり、「幼児連れ」ツイートの数は一時、1万8000を超えた。ネット上では「子供は騒ぐものだからねー」「しつけていない親が悪いでしょ」「出禁は当然」といった反応が見られた。
カフェには2週間後、保護者を名乗る人から「おわびをしに伺いたい」と連絡があり、現在はマナーを守れる子供連れは入店できるという。
■2度「子連れ入店お断り」にしたレストラン
大人も子供も気持ちよく過ごせる空間は作れるのか。
栃木・宇都宮市の住宅街にある隠れ家レストラン「フルーツダイニング パレット」。入り口の立て看板には「年齢制限を設けない」と書かれている。
店では過去に2度、「子供連れ入店お断り」にしていたという。
パレット・栁田和子副社長「どうしてもお子様が走り回ってしまう。大きい声を出してしまう」
一時、入店を許可したにもかかわらず、再びお断りにした理由は、大切なグラスを割ってしまった子連れ客の態度だった。
栁田さん「お母様は『子供は割るのは当たり前よ』みたいな感じで、もうこれはダメだと本当に思って」
しかし、常連客から「子供や孫を連れてきたい」と言われるようになり、3年ほど前、ある対策をした上で子連れでの入店を許可することにした。
栁田さん「張り紙を出した。お子様がもし泣いてしまったら、食事中でも外に行ってあやしてくださいと」
店の思いが客に伝わり、現在は以前のように騒ぐ子供はいないという。
■「子連れ客 入店お断り」街の人は…
飲食店の「子連れ客 入店お断り」について、街の人に聞いた。
賛成(5歳、1歳の母)「入ってから、ひやひやするよりも、最初から『入れません』って言われたほうが助かるかなと」
反対(2歳半の母)「ちょっと悲しいなっていうか。お店側からも断られると、どこ行けばいいんだろうっていうのが」
賛成(大学生の父母)「お母さんたち(同士)の会話に夢中になっていて、お子様が跳びはねてるっていうのが多い。そういうことは、私たちのときにはあまりしなかったかな」
反対(小2と年長の祖母)「あんまり拒否されると、お母さんたちの行動範囲が狭まってしまう。かわいそう。その方たち専用のコーナーを設けるとかしてあげたほうが」
子供連れのマナーについて、専門家に聞いた。
ジュニアマナーズ協会・田中ゆり子理事長「人に迷惑をかけると分かっていたら、一緒に連れて行かないことが大事。大人の世界に一緒に連れて行くというようなことで、連れて行く前にきちんとしつけておくということが必要なこと」
■新幹線に「ファミリー専用」
一方で、子供連れが乗ることも多い新幹線では、ある取り組みが行われている。
「JR東海」営業本部・森嶋健人主任「東海道新幹線、16両編成ですけど、その1両をファミリー車両として使用しています」
東海道新幹線では、夏休みや年末年始などは一部の列車に子供連れだけが乗る「ファミリー車両」を設けている(事前申し込みが必要)。さらに、荷物などが置けるよう、席が予約した数より1席多く用意されている。
森嶋さん「小さいお子様が泣いて騒いでしまって、お母様がすごく困っている様子だとか、そういったものをよく見ていたところから、お子様連れ専用車両を設定すれば、快適に新幹線をご利用いただけるかと」
子供連れを対象にしたサービスの利用や周囲への気配りを忘れないことで、子供も大人も快適に過ごせるかもしれない。
■肩身の狭い親のために…
周囲への親の気配りも大事だが、一方で、周囲を気にしすぎて肩身の狭い思いをしている親もいる。
そこで去年、女性向けウェブメディアがステッカーを作った。赤ちゃんの絵とともに「泣いてもいいよ!」と書かれている。「赤ちゃんの泣き声を気にしない」という人が、スマートフォンなどに貼って持ち歩くという。
電車内などで赤ちゃんが泣いてしまって困っている親に「私は泣き声を気にしないよ」と意思表示することで、少しでも楽な気持ちになってもらいたいという思いが込められている。
ステッカーは賛同する企業の店舗など全国70か所で無料配布されていて、子育て世代の女性など既に2万人以上が貼っているという。
少子化は日本が抱える最大の課題で、このまま行けば今世紀末には今の半分以下になると言われている。人口の減少は国力の低下につながるので、子育てをしている人を見たらサポートする気持ちが必要だろう。