NHK受信料は違憲?合憲?最高裁の争点は
テレビの誕生から半世紀以上が過ぎた今、NHKの受信料をめぐる裁判はついに最高裁まで――家にテレビがあるとNHKと受信契約を結ばなければならないのか?25日、最高裁で注目の裁判が開かれた。今回の裁判、何が争点となっているのだろうか?
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街の人にNHKの受信料について聞いてみると――
20代女性「受信料はあまり払いたくはない」
50代女性「(受信料)高い」
■「放送法」は憲法違反?
今回、最高裁の判断が示されるということで、注目されているが、そもそもこの裁判はNHKの側が受信料を支払わない男性に対し、支払いを求めて訴えていたもので、1審、2審は、男性に対し、受信料約20万円を支払うよう命じていた。この判決に対し、男性側は上告し、今度は最高裁が、そもそも受信料支払いの根拠になっている「放送法」が憲法違反なのかどうかも審理している。
この「放送法」、「家にテレビを設置したら、NHKと受信契約を結ばなければならない」と定めている。つまりテレビを設置したらNHKを見ようが見まいがNHKと契約することが「義務」とされている。
一方、憲法では、「契約の自由」が保障されている。簡単に言うと、契約の相手や内容は個人が自由に決められるという国民の権利だ。そのため、男性側はこの放送法の規定が憲法に違反していると主張している。「義務」か「自由」か、難しいところだ。
■最高裁の「大法廷」とは
今、審理されている最高裁判所の「大法廷」というのは最高裁判所の長官を含めた裁判官全員、15人が出席するもので、法律が憲法に違反していないかなど、重要な論点がある場合に開かれるものだ。そのため、その判断は公共放送のあり方そのものにも大きな影響を与えるとも言われていて、注目されている。
■「受信料」どう思いますか?
難しい話ではあるが、NHKの受信料そのものはよく話題にも上る身近なもの。そこで、街の人の意見も聞いてみた――
20代学生「結構見てるので、まあ(受信料は)妥当かなと。見ないとなってまた(受信料が)関わってくると面倒くさい」
50代男性会社員「(NHKは)CMとか収入源がない以上(受信料は)仕方ないのかな」
20代会社員「あんまり見てないのに(受信料)払わなきゃいけないのかなって。(NHK)見ないのでチャンネル消してもらっていいです」
――皆さん、ちょっと納得いっていないような感じもあった。払いたくないという声は少なからずあるわけだが、一方で国はこう言っている。
国の意見書より(公共放送について)「(テレビを設置すると)災害や有事の際に生命・身体・財産といったものを自ら守るのに必要な情報にアクセスできる」
そのため、受信料を徴収するのは不合理なことではないとしている。
■支払い求め…NHKは裁判300件
しかし、NHKによると、契約の対象となっている世帯の約2割が受信料を払っていないという。NHKは一件一件訪問して払ってくださいとお願いしているが、2006年には初めて「支払い督促」という法的手段に訴えた。さらに2010年には「財産の差し押さえ」という強制手段に踏み切った。こうした中で、これまでにNHKは、受信料の支払いを求める裁判を約300件起こしているという。それだけ、今の制度に納得していない人がいるということだろうか。
■議論が足りない?
マスメディアに詳しい上智大学の音好宏教授は、「これまで、公共的なサービスとしての公共放送のあり方があいまいなまま十分に議論されてこなかったことが背景にあるのではないか」と指摘している。
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■判断は年内にも
たしかに放送法ができた1950年当時と今を比べてみれば、携帯電話やインターネットが普及してテレビを見る環境そのものが様変わりしているのも事実だ。最高裁の判断は年内にも出るというから、これをきっかけに議論が深まっていくことが期待される。