天皇陛下の退位時期 2案検討のワケは?
天皇陛下が退位の意向をにじませたお気持ちを表明してから1年以上がたった。退位の日程には2019年の3月31日と4月30日の2案が浮上している。この2案の背景と、日程決定後の準備について伝える。
まずは、去年8月に退位の意向をにじませた天皇陛下のお気持ち表明の映像の一部を改めて。
「次第に進む身体の衰えを考慮する時、これまでのように全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています」
■退位日程案(1)
退位の意向をにじませた天皇陛下のお気持ち表明からもう1年以上がすぎ、退位の日がいったいいつになるのか、具体的になってきた。
2つの案が検討されていて、まずは再来年、2019年の3月31日に退位、翌4月1日に新しい天皇が即位し、改元するという案。年度の変わり目で、区切りという意味ではいいと考えられる。
しかし、直前の3月は国会で予算案の審議が大詰めを迎えているところ。さらに4月には、4年に1度の「統一地方選挙」もあって、政治的には非常に慌ただしいタイミングとなっている。
そのため、政府関係者は、キリはいいけれど、デメリットは大きいとしている。
■退位日程案(2)
そんななかで浮上しているのが2つ目の案で、4月30日に退位、翌5月1日に即位・改元というもの。5月1日に元号が変わることになり、ちょうどゴールデンウイークにあたるし、1つ目の案と比べると区切りが悪いという意見も当然、出る。
ある政府関係者は、「いろんな意見があるし、基本的に100点満点の日なんてない」と話している。
■皇室会議とは
この2つの案について話し合われるのが皇室会議。
メンバーは10人で、首相をはじめ、衆議院・参議院の議長、宮内庁長官らが出席する。皇族からは常陸宮さまと常陸宮妃華子さまの2人が出席されるが、もともとは常陸宮さまではなく、秋篠宮さまがメンバーだった。しかし、今回は出席されないことになった。
というのも、秋篠宮さまは、陛下の退位に伴って皇位継承順位第一位の『皇嗣(こうし)』の立場となり、例えば皇族費も3倍に増える。こうしたことなどから、ご自身の立場に関わる問題でもあるとして会議には加わらず、常陸宮さまが出席されることになった。
■これまで開かれてきた皇室会議
前回の皇室会議は24年前の1993年に開かれた。この時は、皇太子さまと雅子さまのご婚約について話し合われた。
皇室会議はこれまで7回開かれているが、皇族の結婚以外のテーマで開かれるのは、1947年に11の宮家の皇籍離脱を決めて以来のこと。
■具体的な準備例(1):元号
天皇陛下の退位は、明治以降、初めてのことなので、決めなければならないことが山積みとなっている。
例えば新しい元号。現在の「平成」という元号は、昭和天皇が亡くなる前から“非公式”に検討され、新天皇の即位にあわせて発表された。それが今回は「退位」の日取りがあらかじめ決まっているわけだ。
新元号の候補はすでに複数存在していて、有識者懇談会や閣議を経て正式に決まる。改元の半年以上前に発表する方向で調整が続いているという。つまり、来年の夏から秋にかけて発表されるかもしれない。
■具体的な準備例(2):儀式
そして、皇位継承の儀式についても決めていかなければならない。
こちらの映像は28年前、昭和から平成に変わった1989年1月7日に行われた「剣璽等承継(けんじとうしょうけい)の儀」という国事行為。これは、新しい天皇が皇位を継承されたあかしとして代々受け継がれてきた、いわゆる「三種の神器」や、天皇と日本国の印鑑にあたる「御璽(ぎょじ)」「国璽(こくじ)」を受け継ぐ儀式だ。
このように、即位の儀式は過去に行われているが、退位についての儀式は明治以降、行われていないので、決められたものはなく、今後、儀式の形式や規模など、政府は新たな準備組織を設置して、決めていくことになる。