人と人…陸前高田で進む“つながり復興”
まもなく東日本大震災から7年となる。諏訪中央病院の名誉院長・鎌田實さんは先週、岩手県陸前高田市を訪れた。陸前高田では、「人と人のつながり」を意識した復興が進んでいたという。
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津波で甚大な被害を受けた陸前高田では現在、大規模な“かさ上げ工事”が進められている。そのかさ上げされた土地に去年、大型の商業施設「アバッセたかた」がオープンした。
市街地の復興の拠点として期待されており、津波に流された店舗やスーパー、ドラッグストアだけでなく、市立図書館も入った、複合施設となっている。中には、フィットネスクラブもあり、そこでは、リハビリに特化したデイサービスも行われていた。
鎌田さん「こういうところができてうれしい?」
デイサービス利用者・村上喜美子さん(83)「うれしいですね」
デイサービスができる場所を作ったのは、閉じこもりがちなお年寄りに少しでも外に出て、交流をはかってほしいという思いからだという。
高田松原商業開発協同組合・伊東孝理事長(64)「商業の拠点、文化の拠点、コミュニティーの拠点という位置づけでここを中心に新しい市街地が徐々にでき上がってくる」
目指すのは、人のつながりを意識した復興。この日、市内の集会所では、地元のお年寄り向けのお芝居も披露されていた。
これは、高齢者が寝たきりになるキッカケのひとつ「転倒」を予防するための啓発活動。さらに筋力の低下を防ぐため、ゆっくり行うスクワットなど、家でも毎日できる運動を紹介していた。
お芝居を行っているのは、「陸前高田の在宅療養を支える会」。そのメンバーの1人が支援している家庭にうかがった。
吉田トクヘさん、85歳。92歳の義理のお姉さん・ヨシコさんの介護をしながら一緒に暮らしている。震災の後、しばらくは娘夫婦のいる静岡に避難していたという2人。家は津波で流されてしまったが、娘夫婦が2人のために家を建ててくれたという。
鎌田さん「なんでここに戻ってきたの」
トクヘさん「なんといってもふるさとが恋しくてね。『家を建てて帰りたいな』という気持ちで帰ってきました」
鎌田さん「介護するのは疲れないですか?」
トクヘさん「疲れるけれども、(義姉に)何の恩返しもできないからできるだけのことはやりたい。だって私、嫁に来たとき、この人に助けてもらってお手伝いしてもらったんだもの」
鎌田さん「ヨシコさん、幸せだね」
ヨシさん「(うなずく)」
1年以上前から介護を続けているトクヘさん。そのトクヘさんが倒れてしまわないようにとケアマネジャーやヘルパー、看護師らが交代で訪れ、2人の生活を支えている。
トクヘさん「『こういうふうになっているからどうしよう』といえば『じゃあ、こういうふうにした方がいいんじゃない』と。『手や足をこうやった方がいい』とか言葉をくれるからね。言われる言葉が支えになる」
鎌田さん「トクヘさんの気持ちを周りがわかっているから、応援も一生懸命になる“いい関係”」
トクヘさん「こうしてそばにいてくれるというのはうれしいです」
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トクヘさんも85歳、介護される側でもおかしくない。だが、お姉さんの面倒は私が見るんだという思いが強い。それがひとつの生きがいになっている気がした。
一番伝えたいことは「建物の復興だけでなく人と人の関係作りを」。陸前高田ではお年寄りを地域で見守る、地域包括ケアが進んできた。それは、人と人のつながりがあってのこと。
かさ上げ工事や建物の復興ももちろん大切だが、一番大事なのは、震災によって、引き裂かれてしまった人と人のつながりを取り戻すこと。
震災から7年になるが、人と人のつながりの修復はまだまだ進んでいないところも多いと思う。今後も、陸前高田をはじめとした被災地の復興を見守っていきたい。