貴公俊が付け人に暴行…なぜ起きた?
日馬富士の暴行事件では被害者側だった貴乃花親方の弟子・貴公俊が暴行問題を起こした。貴公俊はこの春場所から十両に昇進したばかりの貴乃花部屋所属の関取。貴公俊には双子の弟がいて、同じ十両の貴源治。今場所、貴公俊も十両に昇進したことで、史上初の「双子関取」が誕生して注目されていた。
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活躍が期待されていたが、貴公俊が暴行問題を起こしてしまった。十両昇進会見では貴乃花親方も「相撲未経験で入門して5年でよく(十両に)上がれた。見よう見まねでできる天性のものがある」と、期待を寄せていたが、貴公俊は18日の取組の後、付け人を殴るなどしてしまった。
Q:付け人とはどういう存在なんだろうか
付け人とは、関取の身の回りの世話をする力士のこと。その仕事は関取の汗を拭いたり、風呂で背中を流したり、下着を洗濯したり、まわしを締め込んだり。「水」と言われたら水を持ってくるなど本当に様々なことをやる。
中でも付け人の一番大事な仕事は、今回の事件のきっかけにもなった「関取に出番を知らせること」。貴公俊の付け人は、よりによって一番大事な仕事でミスしてしまい、貴公俊に殴られたというわけだ。
Q:どうしてそんな事態になってしまったのだろうか
力士は自分の出番を待っている間、支度部屋でウオーミングアップをして集中力を高めている。出番が近くなったら、花道の奥に立ち、その後、土俵下の控えに入ることになっているので、付け人はその時間を逆算して、「もうすぐ出番です」と関取に伝えて移動を促す。ところが、貴公俊の付け人は出番を伝えるのが遅れてしまったため、貴公俊はあわてて花道を走ってなんとか控えに間に合ったという。
東京相撲記者クラブ会友の銅谷志朗さんに聞くと、「貴公俊にとっては18日が大事な一番だったので、怒りが頂点に達したのではないか」と話していた。どういうことかというと、貴公俊は、18日の取組前は3勝4敗できていたが、勝てば4勝4敗、負ければ3勝5敗と負けが先行してしまう、本人にとってみれば意味合いの大きな取組だったため、付け人の不手際に激高したのではないかという。
気持ちは分かるが、とはいえ、暴力はいけない。背景には、貴乃花部屋の事情もあったのではないかといわれている。貴乃花部屋の関取は、貴景勝、貴源治、そして日馬富士から暴行を受けて今場所から復帰した貴ノ岩、貴公俊の4人がいる。一般的に付け人は関取1人につき最低2人は必要といわれているので、8人の付け人がいるのが理想だ。ところが、貴乃花部屋には付け人、つまり幕下以下の力士が6人しかいない。
Q:付け人が足りない場合はどうするのか
足りない場合は他の部屋から応援をもらうこともあるそうだが、貴乃花部屋の場合は、親方の方針でこれをしていなかった。とはいえ、実態をみてみると、18日は貴ノ岩の取組の2番後に貴公俊、その3番後に貴源治の取組が控えている。しかも東と西の支度部屋に分かれているので、出番をタイミングよく知らせなきゃいけない、付け人にとっては大忙しだったと思われる。
東京相撲記者クラブ会友・銅谷さんは「貴公俊は十両に上がったばかりで、本人も付け人もコミュニケーションがとれていなかったのかもしれない」とも話していた。
Q:貴乃花親方もショックだっただろう
暴力根絶を訴えていただけに、対応を苦慮している様子がうかがえる。19日朝は、こう話していた。
貴乃花親方「(Q:貴公俊について)地道に稽古をする子ですので、こういうことは驚いてますけども、改めて厳しく指導していこうと思います。(Q:自分の部屋で暴行が…)もうとても深刻です。つらいというより深刻です」
暴力は絶対ダメだと呼びかける中での出来事で、相撲界で暴力を根絶することがいかに難しいかを物語っているといえる。