世界遺産の寺に千社札…全国で被害後絶たず
世界遺産にも登録された京都の仁和寺に貼られた数枚の張り紙。私たちは20日、その迷惑行為の直後の現場を取材していた。実は今、全国の寺で文化財を傷つけかねない事態が起きている。
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訪れる人を魅了する“千年の都”京都。近年、外国人旅行者も多く訪れるというのが世界遺産「仁和寺」。しかし、この歴史ある寺で突如、警察官が出動する事態が発生。偶然別の取材をしていた私たちのカメラが事件の直後をとらえていた。
今から1100年以上もさかのぼる西暦888年に完成した「仁和寺」。国宝の「金堂」が有名だが、今回事件が起きたのは国の重要文化財「二王門」。
寺の職員「誰かが“千社札”を貼っているところを目撃して、(Q:どの札ですか?)あちらですね」
指し示したのは、まだ真新しい2枚の「千社札」。禁止しているのにもかかわらず、この門に合わせて5枚が勝手に貼られていたという。
事件が発覚したのは20日午前9時半頃。高さ4メートルあるという「二王門」の上の梁(はり)の部分に長い棒を使って紙を貼り付けている男を境内の食堂で働く女性が発見。近くには仲間とみられる女もいて、さらに男のそばには「千社札」が大量に入ったボストンバッグが置かれていたという。その場で女性がやめるように注意をしたところ、男は一緒にいた女と車で逃走したため、寺は警察に通報。「二王門」が国の重要文化財に指定されていることから、警察は文化財保護法違反の疑いで調べている。
そもそもこの「千社札」、参拝者が訪れた記念に貼る江戸時代から続く風習だとされている。しかし――
寺の職員「寺院さんによりますけど、結構やられているという被害は多くあると思います」
実は同様の問題が全国で起きている。長野県飯田市の元善光寺では30年ほど前から「千社札」を貼ることを禁止しているが。
元善光寺・住職「のりでベタベタ貼っていかれるので、ひどい方は板をクギで貼っていかれてしまうので、お堂や門が傷ついたりしますので」
「千社札」を貼る人は後を絶たず…。さらには、長野市にある善光寺「仁王門」でもはがれにくい合成糊や木の札を貼るといった本来の風習を乱す行為が目立つように。約20人がかりで「千社札」をはがす作業に追われた。
そして新たに被害が発覚した仁和寺では、札をはがしたところ、跡も残った。
寺の職員「お札を貼られるのは迷惑な行為ですし、できればやめていただければと思います」
警察は、千社札を貼っていた男は60代、女は30代から40代、日本人を含むアジア系の人物による犯行とみて、捜査を進めている。