報酬“約束”か?衆院選元候補者を逮捕 当時の運動員が口にした“後悔” 私たちが選挙運動で気を付けることは―
10月に投開票が行われた衆議院議員選挙で、運動員に報酬を支払う約束をしたとして、元候補の男が逮捕されました。
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今年10月、衆議院議員選挙期間中に日本テレビが撮影した映像には、東京26区から立候補して最下位で落選した、医師の田淵正文容疑者(66)が白衣姿で街頭で演説を行っている様子が捉えられていました。
そのすぐ隣には、有権者に手を振る女性が。頭には猫の耳がついたカチューシャをつけています。さらに、同じ場所には、セーラー服のような格好でビラ配りをする女性の姿もありました。
こうした運動員らへの対応をめぐって、公職選挙法違反の疑いで逮捕された田淵容疑者。警視庁によると、田淵容疑者と陣営スタッフの小林繁容疑者は、10月上旬ごろ、共謀して、運動員の男女4人に選挙運動の報酬を支払う約束をした疑いが持たれています。
2日、田淵容疑者が院長を務めるクリニックには…
記者
「選挙活動に使われたものでしょうか、クリニックの前には車がとまっています」
公職選挙法では、一部の例外を除き、運動員に報酬を支払うことを禁止していますが、実際に報酬を受け取る約束をしたという当時の運動員は…
報酬もらう約束をした田淵陣営のアルバイト
「時給1500円で証紙貼りの仕事だと聞きました。(関係者から)『時給1500円もらえるから結構いいバイトでしょ?』みたいに言われて」
この女性は当初、公職選挙法で報酬が認められている「証紙貼り」のアルバイトとして、田淵容疑者らから時給1500円を支払う約束をされたといいますが…
報酬もらう約束をした田淵陣営のアルバイト
「途中から(報酬が認められていない)候補者のチラシを配る仕事がメインになっていて、選挙カーの上に立ったりとか、駅周辺を練り歩いたりとか」
公職選挙法では、選挙に携わる人で、報酬を支払っていいのは「証紙貼りの仕事」や「選挙カーの運転」をする人など。
「街頭でのビラ配り」や「投票の呼びかけ」などを行う運動員は、原則ボランティアとなっていて、報酬を支払うことや、その約束をすることも禁止されています。
日本テレビが撮影した田淵容疑者の演説をサポートする人や、ビラ配りをする人もアルバイトだったのでしょうか。今回、私たちが話を聞いた女性が口にしたのは、“後悔”の言葉でした。
報酬もらう約束をした田淵陣営のアルバイト
「私含めて、それが違法行為だと認識していなかった。選挙違反をしたっていうこと。私もその違反者の1人なので、反省しなきゃいけないですし、すごく大変なことをしてしまったんだなと」
警視庁は約束を承諾した疑いがあるとして、この女性を含む複数の運動員から任意で話を聞くなどして捜査しています。
選挙運動の報酬を支払う約束をしたとして、候補者が逮捕となった今回の事件。専門家は、次のように話します。
公職選挙法に詳しい 元大阪地検検事・亀井正貴弁護士
「(選挙運動に対する報酬の)支払いはもとより、(報酬の支払いの)約束・申し込みも犯罪になる。お金をもらわなくても、選挙運動に対して、報酬をもらうかどうかの話をしたらアウト」
私たちが選挙運動に携わる際に気をつけることは…。
元大阪地検検事・亀井正貴弁護士
「何の行為によってアルバイト代をもらうのか、最初の段階で明確にするような(やりとりの)証拠を残しておくこと。お金をもらう場合には、非常に限定されたことしかできない。ちゃんと選対本部に確認し、慎重にそこを切り分けて判断する必要がある」
(12月2日放送『news zero』より)