「駅の天井もいつ落ちてくるか…」 能登半島地震で大きな被害受けた「のと鉄道」 鉄道会社社員「もう僕ら生きてるだけで…」今、伝えたい思いとは…【藤田アナの鉄道NEWS】
かつてCS日テレプラスの番組『鉄道発見伝 鉄兄ちゃん藤田大介アナが行く!』で「のと鉄道」に乗車した事がありました。その際、観光列車をはじめ自然豊かな能登の空気を存分に楽しませて下さった「のと鉄道旅行センター」所長の山崎研一さんに問い合わせをしたところ、今回、取材に答えてくださるとの連絡があり、当時の状況を電話でうかがいました。いま、鉄道会社社員が伝えたい思いとは…(取材:藤田大介/日本テレビアナウンス部)
※なお取材は、先方にとって安全が確保された場所で、電源やWi-Fi環境が整った場所で行いました。
■大きな被害を受けた穴水駅
ーー地震の瞬間、山崎さんは旅行のガイド中で、のと鉄道の穴水駅に、お客さんを連れていたところでした。
のと鉄道旅行センター 所長・山崎研一さん
「僕、その地震の瞬間に穴水駅にいたんですけど、あまりにも揺れがひどすぎて…つかまるところないから、動くホワイトボードにつかまってて、そこの角に何回も足をガンガンガンガンやられながら、なんとか何とか耐えてるときに、多分100キロぐらいある金庫が僕の後ろパターンと倒れたり、キャビネットが倒れてきたり、後ろで冷蔵庫が倒れたりっていう状況で『うわ、終わった』『屋根落ちてくるんじゃないかな、これ』と考えてしまうくらいの状況でした」
ーー怪我はありませんでしたか?
「ケガなどはなかったんですが、ただ夜とか、次の日の朝ホーム見たら、もう…隆起している、一部落ちてる、線路も切れてるし、これ駄目かもなっていう。穴水駅もだんだんだんだん崩れてきてるんですよ。 駅の天井もいつ落ちてくるか、入り口のところも、完全に、バタンっていくんじゃないかみたいな兆候も一部出てきてるんですよ。 今は直そうにも、何をやってもしょうがないよねという状況なんです」
■道の駅、酷い現状
ーー被災から4日、社員たちが苦しんだのは、地震により傷んだ建物だけではありませんでした。 断水となった穴水町、 特に社員たちの頭を悩ませたのが駅に併設された公衆トイレの問題だったといいます。
「 うちが経営している道の駅も機能してない、駅もやってない。バスもやってないけどトイレだけ使おう、でもトイレって結局水流れないんですよね。だからもう便器から溢れ出たりとか…確かに我慢するなとは言えないんですけど、だから僕らもお腹痛くても絶対にしなかったんですよ。 山盛りになったトイレットペーパーや新聞入れられたり、食い散らかしたゴミとかトイレのところにぼんと捨てている人もいたし、床にされてたりとか…。本当に酷いなぁって」
「結局流すにしても、今新しい方法をやり始めたんですけど、川の水をくんできて、それで流すということをやり始めたんですよ。 それで少しでも人が使えるようになれば…っていう」
■家が倒壊した社員、輪島の現状
ーー駅で働く社員たちもまた被災者です。輪島に住む山崎さんの部下の男性に対してはどのような対応を。
「家まで帰れない社員は途中で車乗り捨てて歩いて帰ったんですよ。 そうしたら、自分のうちが潰れてるだけならいいんだけど、もう集落全部がもう倒壊してたっていう 。輪島の方ですね。町野ってところなんですけど」
「自分のうちも、もう崩れちゃって片付けたいんだけど、でも避難所にいる人たちの中で、比較的若くて男ってなれば、男手がないから、俺が今世話役やってるから、当分動けないんだよねって言っていたので、私は『もう会社出てこなくていいから、何かあったら俺が全部今責任とるから』って、だから他の子たちにも言ってるんですけど、今会社に出てきて、例えば途中で事故られても困るし」
「自分らの命を守らないと、だから待機してる部下たちにも『みんな出てるのに、私だけ行かなくていいんですか』って言うから、『いや、いいから。もし来る途中で事故にあったり、怪我をされたりとかした方が会社としても損失だし、いざなったときにみんなの命を守ることが出来ないから』『だから今は自宅に待機していた方がいいよ』っていう話をしました」
■輪島地区の被害
ーー能登半島のガイドとして働く山崎さん。ツアー先で訪れるという輪島の方から連絡をもらったといいます。
「本当にもう朝市の通りがもう全焼しちゃってるんですよ。僕らも2か月ぐらい前にモニターツアーで行ったばっかりだったんですよ」
「あそこには駅長さんのお店があって、駅長さんの置物があったんですけどそれが僕に似てるとかいって、僕も調子に乗って一緒に真似して遊んでたりとか、お客さんからも『お前昨日輪島で見たぞ』と笑いながら言ってくださって、『あれ僕じゃないですよ〜』とかって笑いながら返していたんですが、そういう思い出の場所も消えてしまいました」
「遊覧船やってる仲間は、陸に船を揚げてたけど『津波でもっていかれた』と言っていますし…もう本当に何をどうしたらいいのかがわかんないって感じなんです」
「宿泊業やってる友達とか仲間なんかは『もううちの施設終わったわ』っていうラインも来るんですよ。もうみんな心の中で絶対もう復活無理だよなと思ってるんですけど、でもみんなで力を合わせて、やらんか、やらんかっていう、今そういう状況なんです」
「僕、鉄道会社の社員ではあるんですけど、やっぱり能登全体の観光地開発みたいなのを一緒にやってきた人間なんで、だからそれがあって、観光地にお客さんが来れば、のと鉄道も使ってくれるよねっていう形でやってきましたが、そのうちの鉄道会社も、今となっては本当にどうなるかわかんない」
「終わりが見えないんですよ」
ーー能登半島のさらに北にむかうため、穴水町を通って、被災地に向かう緊急車両も日に日に増えてきたと言います。
「この間(穴水駅に)他県の救急や消防の一団が来たんですよ。他県の関西とか奈良とか、関東も含めてそこら中の警察とかいろんな人たちが入ってくる、自衛隊もそうなんですけど」
「もう今鉄道も動いていないし、バスも動いてないし、店もやってないんだから、もう避難だとか何とかとか休憩やってくる人たちよりも、ここから先の地域や、穴水の人たちを助けてもらうためにも、場所を提供しないといけないと思って、『とにかくもう入れるだけ入ってください』と駅を使ってもらいました。救急隊員から様々な話を聞かせてもらいました」
「『本当にありがとうございます』と、本当に泣きそうになりながら話をしていたら『僕らは仕事ですから』って普通におっしゃられるんですけど、人を救助してる、それは仕事って言えばそれまでなんですけど、その人たちも今度いつ崩れてくるかわかんないような、その前線に行って…いつまたでかいの来るかわかんないんですよ。その車列を見てたらもう本当に涙出てきて…」
「自分らはもう終わったと思ってるのに、これだけの人たちが能登の人たちのために来てくれると思ったら、すごいなんか…すみません、本当なんか涙出てくるんですよね」
「だから、もうだから、うちらがやらなければどうするんだっていう…だからもう絶対無理なのわかってるんですけど、俺らがやらな、しょうがねえじゃんっていう…だから今ね、みんな駄目なのわかってるんすけど『もうみんなでやらんか』って『ゼロからやり直さなんか』っていう…」
「今、本当になにかって、最近涙が出てくるんすよね」
「いつもだったら『大丈夫ですか』って言われたら、大丈夫じゃなくても『大丈夫』って言えるところなんですけれど、本当に今回の件はもう心折れちゃいました。そんな状況っすね」
■鉄道会社からの支援
ーー他県の鉄道会社からも、すぐに心配の声が寄せられたと言います。 特に鳥取県を走る若桜鉄道からは…
「特に若桜鉄道の谷口さんからも『必要な道具があればお貸ししますよ』ってすぐ連絡入ってきて、本当にありがたいなーって。実は谷口さんと繋がったのが『鉄道発見伝』に同じ回で取り上げていただいた形からの繋がりだったんで、本当にありがたいなと感じました」
「ただ、もう本当に…鉄道の復興もできればいいなとは思うんですけど、思った以上(の被害)なんです。被害状況も僕らが目に見えるあたりしかわからないんです。これから全部見回して、うちは上下分離方式でやってるんで、持ち主の、会社さんがまずやるかやらないかという話になってくると思うし、それで仮にやるって言っても、今度そこに自治体がGOを出すか出さないか、という話にもなって出てくると思います。うちだけが被害だったら、何とかなるんじゃないって言えると思うんですけど、あまりにも周りの被害が大きすぎて、それ復興してたら、うちら鉄道会社くらいまでお金回ってくるのかなって…」
「ただ、うちだけじゃなくて、もうみんなが仕事を失うかもしれない、もうみんなが住むところを無くすかもしれないみたいな状況なんです。まだ命があって、とりあえず雨露しのげる家がまだ残ってるだけ良かったのかなって…だから、本当にそれだけです」
「もう僕ら生きてるだけで。『うん、助かったよな』っていう、それをもうお互いに言い合っているんです。だから待機してる人間にも言うのは、もうとにかく、もう会社なんかどうでもいいから、うん。もうあの自分の命と家族の命を守れと、それだけを伝えました」
(取材:藤田大介/日本テレビアナウンス部)