【能登半島地震】進まない2次避難……3万人可能も「1000人」のみ 専門家「移動をためらわないで」 高齢者のリスク軽減対策は?
■222人死亡、北部で断水解消されず
徳島えりかアナウンサー
「人的被害について、今回の地震で石川県内で亡くなった方は14日から1人増えて222人、このうち14人は震災後に亡くなった災害関連死です。いまだ22人の安否が分かっていません」
「地域別では珠洲市で99人が亡くなり、このうち災害関連死は6人確認されています。輪島市で亡くなった方は88人、うち災害関連死は3人。県内の安否不明者の多くは輪島市で18人となっています」
「断水は、震災から2週間経った15日も広い範囲で続いています。午後2時時点で、石川県全体で約5万5510戸。輪島市や珠洲市、穴水町など北部ではほぼ全域で解消されていません。一方、かほく市の8戸の断水は14日に解消されました」
■積極的な 2 次避難へ「電話相談窓口」
徳島アナウンサー
「復旧が進まない中、多くの方が避難生活を続けています。輪島市では6355人、珠洲市では3170人。能登町、穴水町、七尾市でも2000人近くの方が避難しています。石川県の1.5次避難所や2次避難所も含め、県内の避難者は15日午後2時時点で1万8064人です」
「災害関連死を防ぐためにも、なるべく環境の整った施設で過ごしてほしいと、県などは積極的な2次避難を呼びかけています。14日に専用の電話相談窓口も開設されました。番号は0120-266-755です。午前9時~午後6時、土日祝日も対応しています」
■高齢化率5割前後…避難生活の注意点
藤井貴彦アナウンサー
「大きな被害を受けた地域に 65 歳以上の高齢の方がどれくらいいるのか、高齢化率(一昨年10月1日時点、石川県/内閣府高齢社会白書より)を見てみます」
「珠洲市など避難者が多い地域は、全国平均の29.0%を大幅に上回る50%前後となっています。こうした地域で避難生活を送る場合、どんな注意が必要でしょうか?」
高野龍昭・東洋大学福祉社会デザイン学部教授(高齢者介護など専門)
「石川県全体で見ても人口の高齢化率は 30.5%なので、能登半島の地域がいかに高齢化が進んだ地域かということです。その意味では今回は、国内でも特に高齢化率が高い地域を集中して襲った地震だということを、改めて認識しておく必要があると思います」
「例えば2016年の熊本地震では災害関連死は9割近くが高齢者でした。最も認識しておくべきなのは、その高齢者の方が多く避難している今回の地震に対して、我々がどういう支援をするか考えないといけない、という構造だと思います」
■躊躇か…環境の変化に弱いお年寄り
藤井アナウンサー
「こうした中、長引く避難生活の環境改善に向けて石川県が呼びかけているのが、ホテルや旅館などへの2次避難です。995施設で3万20人まで受け入れることができる一方、現状は15日時点で1083人となっています」
「躊躇(ちゅうちょ)されている方も多いのかもしれませんが、2 次避難の必要性はどのように考えますか?」
高野教授
「結論から言うと、躊躇されている方が多いと思いますが、とりわけ介護が必要な高齢者、認知症や持病のある高齢者は、できるだけ 2 次避難所に移動された方が望ましいと思っています」
■高野教授「周囲もリスク説明を」
藤井アナウンサー
「3万人を超える受け入れ可能数がある中で、1000人ほどの方しか避難していないという現状をどう見ますか?」
高野教授
「今申し上げたような高齢者の方にはぜひ2次避難所に移っていただきたいですが、おそらく今の1次避難所の生活がそれなりに成り立ち始めたから、移らなくてもこのままいけるのではないか、と判断されている方が多いと思います」
「ただ、やはりそのままの生活ではリスクがあるということを、しっかりと周りの方々も説明をしなければいけないのではないかと思っています」
「特に能登半島の地域ですと、生まれ育った集落から出たことのない生活をずっとしてきた方が多いでしょうから、なおさら躊躇するでしょうし、環境の変化が良くないのではないか、といったさまざまな意見があるので、二の足を踏む方が多いのだろうと思います」
■「リロケーション・ダメージ」とは?
藤井アナウンサー
「2次避難をする際のご高齢の方のリスクを軽減するための対策を、高野教授に挙げていただきました。昔のアルバムを見る、普段と同じ食器を使う、誰かと一緒に運動や会話をすることがあります」
「家がつぶれてしまってなかなか昔のアルバムを取り出せないという人もいらっしゃるかもしれませんが、もしお手元にある場合には見るのも良いのではないかということです。なぜこうしたことが大切なのでしょうか?」
高野教授
「もちろん、それまで受けていた医療や服薬、必要な介護を受け続けることが前提です。ぜひ、2次避難先ではそうしたことをまずもって考えていただきたい」
「ただそういったものが整ったとしても、高齢者は環境の変化にとても弱いため、環境が変わったことだけで人と会話しなくなる、体の動きが悪くなる、夜寝られなくなる、今まで判断できていたことができなくなる、ということが普通に起きます」
「これを『リロケーション・ダメージ』と言います。これを防ぐために、食事、水分、対人・社会関係、それまでの生活リズムを保つことが大事なのですが、その時にとても効果があると言われるのが、もともとなじみのある物を身近に置いておくことです」
「これで随分、判断能力の衰えや意欲の低下を防げるということが知られています。2次避難所といっても限られた環境だと思いますが、こういうひと工夫をして 2次避難をされることをお勧めしたいと思います」
■「関連死」防ぐためにできること
藤井アナウンサー
「これだけ呼び掛けているのはなぜかというと、災害関連死がこの後増えてしまう可能性があるからです。災害関連死で犠牲になる方を出さないようにするために、どんなことが必要でしょうか?」
高野教授
「熊本地震でも、地震で直接亡くなった方よりも、災害関連死の方がはるかに多いです。その意味では(今回の被災地域では高齢者が多いため)災害関連死を防ぐことが次の課題になります」
「今1次避難所で避難されている方はおそらく、命からがら、揺れや津波や火災の中、命が救われたと思います。絶対に防ぐことができる災害関連死で、その救われた命を失わせることがあってはなりません」
「命を失ってもらっては、我々のような高齢者支援にあたる人たちにとっては非常に心を痛めることになります。ぜひ、命と暮らしを守るために 2 次避難所への移動を躊躇しないでいただきたいと思っています」
藤井アナウンサー
「ご高齢の方だと、自分たちを運んでくれる車や人の手助けを『申し訳ないからいいんだよ』という方もいらっしゃると思いますが、こういう時は頼ってください、という気持ちですね」
高野教授
「そこはむしろ、わがままになっていただきたい。どうぞ支援を受けていただきたい」
「一方で2次避難先で新たな自分の役割、高齢者ならではの、もともと地域で担っていた役割を果たしつつ、しばらく2次避難所で暮らしていただく、これが健康とこの先の暮らしを継続するための大事なポイントだと思っています」
(1月15日『news every.』より)