「荷が重い」一転受諾なぜ? 橋本氏会長へ
東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森前会長の後任を、橋本聖子オリンピック・パラリンピック担当大臣が引き受けることを表明しました。1週間でのスピード人事でしたが、全て非公開のプロセスで橋本大臣に決まりました。背景に何があったのか、解説します。
■橋本聖子五輪相、組織委会長に選任へ
18日午後、橋本大臣が取材に応じました。
「組織委員会からご連絡いただきました。会長候補になったということでした。それを受けまして、今、菅総理に、国務大臣の辞職願を届けさせていただきました。会長に選任された後には、しっかりとその後の理事会、そして記者会見で私自身の思いをお話しさせていただきたい」
橋本大臣はこのように述べ、大臣を辞任して、会長を引き受けるという意思を示しました。
18日は午前中からいろいろな動きがありました。午前11時半からは都内で3回目の「候補者検討委員会」が行われ、午後0時半からは組織委員会の理事会が開かれました。ここで、検討委員会の御手洗委員長から橋本大臣に就任を要請し、受諾されたことが理事たちに報告されました。
そして、午後2時からの評議員会で、橋本大臣が大会組織委員会の理事に選任されました。組織委員会の会長になるには、まず理事になる必要があるからです。そして午後4時から、今日2回目となる理事会が開かれ、橋本大臣が正式に会長に選任されます。
■「荷が重い」慎重姿勢から一転受諾…なぜ?
橋本大臣が選ばれた理由を見ていきます。
組織委員会の幹部によりますと、「IOC(国際オリンピック委員会)からも女性の会長を求める声があったし、アスリートとしての経歴もトップクラスだ」という声が上がっていたそうです。さらに、IOCのバッハ会長との関係も良好だとされています。
橋本大臣はこれまで周囲に「荷が重い」などと話し、慎重な姿勢を見せていたようですが、一転して要請を受け入れた形となりました。なぜなのでしょうか。
ある自民党の閣僚経験者は、「官邸の意向もあったんだろうけど。『うん』と言わざるを得ない状況を作られたよね」「ほんと気の毒だよ。ただただ、かわいそう。五輪が中止になったら責任もとらされるし」と話しています。
■小池都知事とも“対等に渡り合える”
ただ、理由はそれだけではなさそうです。橋本大臣は森前会長の後ろ盾で政界に転身した、いわば“森チルドレン”です。森前会長は、橋本さんにはこれまでの人脈や影響力をスムーズに引き継いでくれるとの思惑もあるのかもしれません。
さらに、今後は東京都の小池都知事と交渉しなければならない場面も増えてきますが、橋本大臣なら小池知事とも対等に渡り合えるとして、政権にとっては一番、都合がいい人選だと見ることもできるのです。
■冬はスケート、夏は自転車…議員しながら五輪出場も
橋本大臣のオリンピック選手としての経歴についても、改めて振り返ってみます。冬はスピードスケート、夏は自転車競技選手として、あわせて7回も五輪出場経験があり、メダルも獲得しています。最後のオリンピック出場となったアトランタ大会では、選手と参議院議員を両立しながらの出場となりました。オリンピック選手としての経験値については、橋本大臣を上回る人はそうはいないのです。
■“オリンピックの申し子” 名前も『聖火』から
これだけではありません。実は、橋本大臣は、生まれたときから“オリンピックの申し子”ともいえる人生を歩んできたのです。
橋本大臣が生まれたのは1964年10月5日。前回の東京オリンピック開会式の5日前でした。開会式でともされた『聖火』を見て感動した父親から『聖子』と名付けられたそうです。
ちなみに橋本大臣は6人の子どもの母親で、2000年には当時の総理だった森前会長に子どもをだっこしてもらう場面もありました。橋本大臣の妊娠・出産は、国会議員に産休制度が導入されるきっかけにもなりました。
■過去にはセクハラ疑惑も
一方、過去には、アスリートに対するセクハラ疑惑も報じられています。2014年のソチオリンピックに出場したスケート選手に抱きついて、キスをしたとのことです。選手本人は『セクハラではなかった』と否定しているものの、こうした点が今後、資質として追及される可能性もあります。
■五輪担当相の後任には丸川珠代議員が内定
橋本大臣は18日午後、官邸に大臣の辞表を提出しました。大臣規範で、組織委員会の会長と五輪担当相の兼務が禁じられているのに加え、オリンピック憲章でも政治的中立が求められているからです。大臣の後任には、五輪担当相経験者の丸川珠代議員が内定しました。
■橋本氏、重い責務も負っての船出
森前会長の女性蔑視発言によって、日本は『男女平等意識が遅れた国』というイメージを世界に発信してしまいました。組織委員会の新たな会長はコロナ禍での大会運営という難しいかじ取りに加え、日本のイメージ回復という重い責務も負っての船出となります。
(2021年2月18日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)