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天皇陛下が追悼式のお言葉に込めた思い

2021年3月22日 13:51
天皇陛下が追悼式のお言葉に込めた思い

今月11日、発生から10年を迎えた東日本大震災の追悼式に天皇皇后両陛下が初めて出席し天皇陛下がお言葉を述べられました。長年、皇室取材に携わってきた日本テレビ客員解説委員の井上茂男さんに、お言葉に込められた陛下の思いを読み解いてもらいました。


【天皇陛下のおことば】
東日本大震災から10年が経ちました。ここに皆さんと共に、震災によって亡くなられた方々とその御遺族に対し、深く哀悼の意を表します。我が国の歴史を振り返ると、巨大な自然災害は何度も発生しています。過去の災害に遭遇した人々が、その都度、後世の私たちに残した貴重な記録も各地に残されています。この度の大震災の大きな犠牲の下に学んだ教訓も、今後決して忘れることなく次の世代に語り継いでいくこと、そして災害の経験と教訓を忘れず、常に災害に備えておくことは極めて大切なことだと考えます。


――井上さん天皇陛下のお言葉どのように聞かれましたか。

A4用紙3枚、6分強の長いお言葉でした。10周年という節目に、天皇としての思いをきちんと伝えたいという強い気持ちを感じました。「国民」という言葉が1回も出てきません。「私たち皆」という言い方で市井の人たちと同じ立ち位置にいようとされる姿勢も伝わってきました。後段、歴史を振り返って教訓を次代に語り継ぐ大切さにも触れられていました。ライフワークの「水問題」の研究で得られた知見がにじみ出ていると思いました。陛下のお言葉の新しい形が見えてきたように思います。


――震災から10年経ちましたけれども、改めて陛下が追悼式で「語り継ぐ大切さ」とおっしゃったことが、私たち国民一人一人が考えるきっかけになりましたね。

そう思います。


――井上さん今後の皇室の活動で注目点は何でしょうか。

東日本大震災の被災3県へのオンライン訪問です。3月4日にまず岩手県を訪ね、両陛下はお二人一緒に画面越しに6人の被災者と話をされました。オンラインでも目を見て話しかけ、交流が双方向でできることが分かりました。

こちらは一昨年12月に福島県の大雨被害の被災地を見舞われた時の映像です。両陛下が声をかけられる時はお二人一緒です。上皇ご夫妻は、一人でも多くの人と接しようと、二手に分かれて回られる形でした。皇后さまのご体調への気遣いもあるでしょうが、接した人たちから聞かれる「両陛下に話を聞いていただいた」という喜び、そういう声を踏まえて、天皇と皇后が一緒であることをお二人は大事にされていると思います。こうした喜びはオンラインのお見舞いでも変わらないと思います。今後コロナ禍の皇室のご活動は、リアルの訪問が難しい中でオンラインが欠かせない手法として増えてくると思います。


――令和になりまして両陛下も新しい形での心の触れ合いということを実践されているわけですね。

国民とともにありたい、国民の中に入っていこうというお気持ちはあるのに、それがコロナでなかなか許されない。それに代わるツールがオンラインだと思います。

【井上茂男(いのうえ・しげお)】
日本テレビ客員解説委員。皇室ジャーナリスト。元読売新聞編集委員。1957年生まれ。読売新聞社で宮内庁担当として天皇皇后両陛下のご結婚を取材。警視庁キャップ、社会部デスクなどを経て、編集委員として雅子さまの病気や愛子さまの成長を取材した。著書に『皇室ダイアリー』(中央公論新社)、『番記者が見た新天皇の素顔』(中公新書ラクレ)。